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イベリス

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第四十二話 完成その二

「だからね」
「勉強してね」
「そうするわね」
「有名な大学に行けとは言わないから」
「早稲田とか慶応とか」
「そうしたことはね」 
 全くというのだ。
「言わないわ」
「有名な大学とはなのね」
「一切ね」
「自分が行きたい大学ね」
「それも進路に役に立つ」
「資格とか貰って」
「そうした大学に行けばいいし」
 それにというのだ。
「その為の勉強でね」
「いいのね」
「いい大学に入っていい企業に入って出世する」
 母はこうした言葉も出した。
「それで人生薔薇色なんてね」
「言えないわよね」
「そう言える人は何も知らない人よ」
 それこそというのだ。
「いい大学だってずっとそうとは限らないし」
「会社だってね」
「潰れたりするでしょ」
「ええ、変な社長さんが出たり世の中が変わったり」
「大学や会社なんて評判が落ちたらね」
 そうなればというのだ。
「すぐにランクが落ちるわよ」
「大学もそうなのね」
「そうよ、そんなのずっとじゃないから」
「いい大学に入れとかはなのね」
「言わないわ、大事なのはどういった風に生活してくかで」
 このことでというのだ。
「大学に行くのもね」
「そのことからなのね」
「考えてね」 
「進学するといいのね」
「まあ今時こう言う人ってね」
「いい大学入っていい会社入って出世するとか」
「世間知らずというか馬鹿とね」
 全否定を込めての言葉だった。
「言うべきよ」
「そうなのね」
「まあ昭和四十年代の漫画にそんなこと言う教育ママもいたわね」
 藤子不二雄先生の漫画によく出ていたであろうか、ただ実際はそうした教育ママの年齢を考えるとあの戦争を経験したので学校の勉強が出来ても戦争等で世の中どうなるかわからないとわかっている人が大抵だったであろう。
「昔はね」
「そんな人今はね」
「いないでしょ」
「私も見たことないわ」
「お母さんもお父さんもそうした考えじゃないから」
 それでというのだ。
「そうは言わないから」
「勉強は資格とかの為ね」
「将来の為にね、努力しなかったらね」
 それこそというのだ。
「人間何にもならないしね」
「それが現実よね」
「そうよ、勉強もね」
「努力のうちの一つね」
「努力もしないで何かになれることはね」
 それこそというのだ。
「ないわ」
「そうよね、やっぱり」
 咲もそれはと頷いた。
「努力してこそね」
「何かになれるのよ」
「漫画だって努力したから描けるのね」
「咲も描けたのよ」
 それが出来たというのだ。 
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