私はいじわる 小悪魔が住みついた
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3-⑹
3月になって直ぐの月曜日、登校班に昂君の姿が無かった。熱でもでてお休みか何かなって思って居たら、授業が始まる前に先生から、昂君が自転車の事故で脚の骨を折って入院したってことを聞かされたのだ。
私は、心配してもしょうがないと思ってはいたけど、気になって、その日は授業中もそぞろだった。家に帰っても、お母さんはお仕事で居ないし、お兄ちゃんもクラブ活動で帰りが遅いので、独りで悶々としていた。思いついて、昂君の家に行ってみたけど、留守みたいで誰も出てこなかったのだ。
そのうち、お母さんが帰ってきて
「昂君が怪我して入院してんだってー お母さん ウチ どんな様子なのか心配で・・」
「えー どうしたのー」
「うん なんか、自転車で転んだのかなー 脚の骨 折ったんだってー お母さん 昂君チに聞いてみてよー さっき、行ってみたんだけど、誰も居なくって」
「うん 電話してみるね」と、昂君のお母さんに電話してくれたけど
「ダメ 電源切っているみたいよ 慎也なら、なんか知ってるかもね 翠ちやんに聞いて もうすぐ帰って来るから」
そして、お兄ちゃんが帰ってきたとき、直ぐに駆け寄って
「昂君のこと何か聞いたぁー」と、お兄ちゃんの腕を掴んで聞いてみた。
「あぁー 聞いたよ 元気でピンピンしてるってよー」
「だって 入院してるんでしょ 脚折れてるんでしょ?」
「うん だけど 本人は、ずーとゲームできるから喜んでるみたいだって」
「そんなこと言ったってー ねぇー お母さーん 病院連れてってよー」
「だって 面会時間過ぎてるかもよ」
「うー まだ 間に合うよ お兄ちゃん 調べてよー」
結局、まだ 時間程あるってことで、お母さんを引っ張り出した。途中、チョコレートを買って行った。恥ずかしかったので、バレンタインに渡せなかったから、丁度良かったのだ。
病室は4人の部屋で2つは空いていた。昂君は窓際だったので、外をぼーっと見ていた。もう、付き添いは誰も居ないみたいだった。
昂君は右足をギブスで固定していて、右手にも包帯を巻いていた。
「昂 なによー その恰好 大変じゃぁない」
「大きい声 出すなよー 病院だぞー」
「だってさー そんな恰好になっちゃってー 今日 ずーと 心配してたんだからね」
「大騒ぎすんなよー 大した事ないさー 元気だよ」
「だってさー」と、言いながらチョコレートを渡して
「これっ 前に渡せなかったから・・」
「なんだ 前って」
「うーん 前よ 昂君 色んな子に貰ってたから それも、よそのクラスの子ばっか 蘭ちゃんなんかも」
「あー バレンタインかー どってことないよ」
「なによー どってことないって うちのクラスの女の子はみんなウチと昂君のこと知っているから、遠慮してたのにー ウチだって・・」
「なんだ その ウチと昂君のことってー」
「あのさー 昂はウチのこと・・」言いかけた時、昂君のお母さんが顔を出してきた。
「あらー 織本さん 来て下さったんですか 有難うございます 心配かけてしまってー ちょっと、晩ご飯の用意で、家に帰っていたんだけど、様子見に戻ってきたんですけどね さっきも、鹿島さんとこの蘭ちゃんがお花持って来てくれていたんですよ」
えー なによー それって そういえば、ベッドのサイドテーブルにお菓子の箱と、そして花瓶に入った大きな花があるわー 蘭ちゃんがお見舞いに来たの― なんで、あの子は入院してるの知っているのー 私 混乱していた。
面会時間の終わりの時が来て、昂君のお母さんとうちのお母さんが待合所で話をしていたんだけど
「昂がね 交差点を自転車で渡ろうとした時、横断歩道を渡ってたおばぁさんがよろけたんだって それでそれを咄嗟に避けた時、左折してきたトラックにぶつかったんだって それで転んでしまって・・ そのトラックって鹿島さんとこの会社の車だったのよー」
「そうなのー 昂君も可哀そうにねー」
「そう でも幸い キブス固定だけで済みそう だけど あの子 おばぁさんに怪我無くて良かったってね 優しいのよー でも、そのおばぁさんは、何にも無かったかのように行ってしまったんだって」
「そうなのー で 相手は?」
「うん 鹿島さんとこの社長さんがお見舞いに来てくれて その後も、蘭ちゃんがね」
「そうなんだー でも ちゃんと、はっきりさせないとね 相手は車なんだから そのー 保障のこと」
「うん それは、警察と保険会社が、これからね でも、同じ、学校でしょ 蘭ちゃんと 変なことにならないようにね」
「そうよねー 変にこじれなければいいのにねー 難しいね」
帰り道、私はお母さんに
「昂君 病院 長いんでしょ ウチ 学校の事 伝えるんで、毎日、お見舞いに来ていいかなぁー」と、
「うん 別に 良いけど 自分の勉強もしっかりするのよ」と、言われてしまった。
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