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噂の真実

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第一章

                噂の真実
 八条止についての噂は実に様々だ。
「千人斬りどころじゃないそうだな」
「一万人達成したんだろ」
「世界中に愛人さんいるっていうな」
「子供は何百人だろ」
「もう毎日遊んでるらしいな」
 こうした話が彼の出身校八条学園でもその学園だけでなく世界的な企業グループである八条グループを経営している八条家彼の家の周りでもだった。
 何かと言われていた、それでだった。
 彼の息子である八条義和も聞かれる時があった、彼は外見はごく普通で八条荘という寮の管理人をしていること以外は普通の人間である。彼は聞かれるといつもこう言った。
「僕もよく知らないんだ」
「息子さんのお前でもか」
「それでもか」
「知らないんだな」
「ちゃんと育ててくれて仕送りもしてくれるけれど」
 それでもというのだ。
「親父がどういったことをしているかまでは」
「知らないか」
「そうなんだな」
「親父さんの噂は」
「事実かどうか」
「何か色々言われてるけれどね」
 義和もこのことは知っていた。
「けれどね」
「それでもか」
「その噂のどれが本当かはか」
「知らないんだなお前も」
「息子さんでも」
「僕もそうした話聞かないし親父も言わないしね」
 本人もというのだ。
「というか噂を聞いて笑ってる節あるしね」
「自分の噂にか」
「そうしていてか」
「お前も知らないか」
「そうなのか」
「うん、息子だけれど」
 それでもというのだ。
「僕も詳しいことは知らないよ」
「そうなんだな」
「何千人と付き合ったとか聞いてるけれどな」
「世界中で遊んでるとか」
「それで毎日酒池肉林とか」
「そう聞いてるけれどな」
「酒池肉林は事実だね」 
 わかっているのはこれ位だとだ、義和は答えた。だが彼もわかっているのはこれ位でそうしてだった。
 噂を確認する趣味はないのでそのままだったが。
 ある日だ、彼は叔父父である止から見て二番目の兄にあたる人物に一族が信者である天理教の教会の祭典月並祭というそれに出た後でこう言われた。
「止はイタリアに行ったままか」
「はい、暫く帰っていません」
「月並祭には出る奴だがな」
「一族の他の人達と一緒で」
「あれで信心はしてるからな」
 天理教のそれはあるというのだ。
「そうしてるけれどな」
「そうなんですよね、親父は」 
 義和もそれはと答えた。
「あれで、です」
「信心してるな」
「そうですね」
「イタリアから帰ったらだな」
「暫く先ですが」
「その時にな、ただな」
「ただ?」
「最近うちの会社でもあいつのことが言われてるんだ」
 自分が勤務している会社でというのだ、彼は勤務している会社では重役である。八条家は経営者の一族なので要職に就いているのだ。
「本当はどうかってな」
「噂ですね」
「あいつは昔から桁外れの女好きだからな」
「色々噂ありますよね」
「あれは実は本当のこともあるんだ」
 叔父は義和に小声で話した。
「これまで何千人と付き合ったとかな」
「あのお話本当だったんですね」
「ドン=ジョバンニみたいなな」
 モーツァルトの歌劇の主人公の様にというのだ。 
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