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夜に出る理由

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第一章

                夜に出る理由
 松本紀香は松本由香の姉であり大学生である、長身の美人で色気もある。一七〇の背に見事な胸とウエストと尻に見事な形の脚に。
 長いセットした黒髪に勝気な感じの二重の長い睫毛の艶やかな目と形のいい眉に紅の大き目な唇と形のいい鼻を持っている。
 家の近所でも通っている八条大学でも美人として評判だが。
「お姉ちゃん最近毎晩何処行ってるの?」
「そのうちわかるわよ」 
 中学生の妹にこう返すだけだった。妹の背は一五〇位であるが外見は姉によく似ている。姉を中学生にして小柄にした感じだ。
「だから今は内緒よ」
「内緒って」
 由香は毎晩家を出る姉に首を傾げさせた、毎日十二時過ぎに家を出てだ。
 一時間程で帰って来る、そんな姉をおかしく思うが由香は姉に何も言わず両親も毎日すぐに帰るのでコンビニに行っているのだろうと言うだけだった。
「この辺りは治安もいいしな」
「別に女の子一人歩いてもいいだろ」
「それに紀香は古武術の免許皆伝だぞ」
「ちゃんとスタンガンや警棒を持ってるし大丈夫よ」
「それでも気になるわよ」
 治安がよくて姉が幾ら強くともとだ、由香は両親に言った。
「毎晩何処に行ってるのよ」
「しかしすぐに帰って来るしな」
「そんな悪いこともしてないでしょ」
「近所の神社かお寺にお参りしてるんじゃないか?」
「何か願掛けがあってね」
「願掛けって」
 両親のその言葉にまさかと思ってだった。
 そしてだ、そのうえでだった。
 由香は学校帰りに家の近所のお寺に行ってみた。両親の言葉が気になってそれで姉が実際に行っているのかと思ってだ。
 それで何かそうした根拠を探したが。
 何と寺の裏に藁人形を見た、あまりにも有名な呪いの藁人形が寺の裏の木に五寸釘で突き刺さっていたのだ。
 由香はそれを見て仰天して家に飛んで帰ってたまたま今日は講義が休校で家に早く帰っていた姉本人に言った。
「お姉ちゃん呪いの藁人形なんて打ったら駄目よ!」
「あんた何言ってるのよ」
 紀香は丁度リビングでストレッチをしていたがその中で妹に返した。
「人を呪えば穴二つよ」
「わかってるならしないでよ!」
「だからしてないわよ、というか何でそんなこと言うのよ」
「今日お寺で見付けたのよ」
「お寺?近所の阪神寺?」
「そう、あそこでね」
「あそこにそんなのあったの」
 紀香は今知ったという顔で言った。
「そうだったの」
「あれお姉ちゃんが打ったんでしょ、だからね」
 妹は姉にさらに言った。
「毎晩出ていたんでしょ」
「そんな筈ないでしょ、確かに嫌いな人はいるけれど私は呪うの嫌いよ」
「じゃあ何で毎晩出てるのよ」
「そのうちわかるって言ったでしょ」
「わからないから聞いてるのよ」
「どうしても聞きたいの?」
「今すぐね」
 由香は即座に答えた、両親は今は仕事で家におらず姉と二人きりである。ちなみに由香も所属しているバレーボール部の部活は今日は休みである。
「絶対にね」
「仕方ないわね、今シーズンオフだから」
「シーズンオフ?」
「プロ野球のね」
「ああ、今キャンプ中ね」
 由香は姉の言葉に言われてみればと頷いた。
「そうだったわね」
「だから開幕までに阪神が今年優勝する様にね」
 こう妹に言った、ストレッチは中断してその場に胡座をかいて言う。 
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