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おっちょこちょいのかよちゃん

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191 生物を操る者

 
前書き
《前回》
 平和を司る世界の領土を奪還する為に動き出している濃藤すみ子達は赤軍所属の男・日高敏彦に岡本公三と対峙する。日高の火炎瓶の攻撃、岡本の聖母マリア召喚に対して迎撃するすみ子やエレーヌ、ジャンヌ達であったが、岡本の威圧の能力(ちから)で劣勢に。そこに一人の少女が現れ・・・!? 

 
 すみ子達に近寄った少女は無表情で素っ気なさを感じだった。
「私がやるわ」
 少女はスケッチブックのような物を取り出した。
「貴女は・・・!?」
「いいからどいて」
 少女が前に出た。
「水の生き物」
 少女がそう呟くと、イルカやクジラ、サメにタコ、イカなど水生生物が数多く現れた。そしてジャンヌは秤が水平に変わる事を確認する。
「秤が水平になった。巻き返すぞ!」
「はい!」
 エレーヌがまた一踊りして少女が出した生物の行動を強めた。岡本や日高が武装の能力(ちから)を発動して防御する。しかし、機械に不具合が生じていた。イルカやクジラの体当たりで機械が破損する。そして聖母マリアはタコやイカの墨攻撃、サメの噛み砕き攻撃によって勢いが失われていった。
「まさか、またマリア様が!?」
「大天使ミシェルの能力(ちから)だ」
 ジャンヌは右手に剣、左手に秤とまさに大天使ミシェル(別名ミカエル)の構図でいた。この能力(ちから)で神の能力(ちから)が働いていたのだった。
「覚悟!」
 ジャンヌが聖母マリアの首を斬る。
「お、おおお・・・!!」
 マリアはうめき声をあげながら消えて行った。
「ちい、これでも喰らいやがれ!」
 日高が瓶を投げた。小麦粉が入っていた。だが、同時に爆発が起きた。
「な、爆発だ!!」
 すみ子が銃を発砲した。周囲に結界を張り、すみ子や少女達への爆撃を防いだ。
「すみ子、助かったぜ!」
 山口が礼をした。
「許さんでやんす!」
 ヤス太郎はパチンコを放った。火薬玉だった。
「もう一度召喚だ!」
 岡本は聖母マリアを再び召喚した。ヤス太郎の火薬玉を無効化させると共に、マリアが結界を発動させ、岡本と日高の姿が消えていく。
「取り逃がしたか・・・」
 その時、爆発が起きる。
「な、何だ!?」
「日高敏彦とかいう男が火炎瓶や粉塵爆発の瓶を置いて行ったのだ!逃げるぞ!」
 そしてあの少女はまたスケッチブックを出す。
「鳥」
 鷹や鷲などの鳥が次々と現れた。少女は勿論、すみ子やエレーヌ達も用意された鳥に乗って難を逃れた。
「お前は一人でいるのか?」
 山口は少女に聞く。
「うん」
「一人で大丈夫なのかよ?良かったら俺達と行動しねえか?」
「別にいい。ここなら安全だから降ろすよ」
 少女は川村の提案をあっさり断り、鳥達を別の地に降ろした。
「ありがとう」
「うん、あとはいいね」
 少女は鳥に乗ったままどこかへと行った。
「そういえばあの子の名前聞かなかったな」
「うん、また会えるよ・・・」
「そうですね、ところでで体制を立て直さなければなりません」
「ああ、この方角だとまた赤軍の連中と鉢合せは免れん。もう少し西の方角へ廻れば攻め込みやすいが、一つの山がある。その山を越える事ができればいいが」
 ジャンヌは提案した。
「なら、その山を越えていこうぜ」
「ああ、だが、雷鳴が常に鳴り響く山だ。雷の山と呼ばれている。嘗ては『デンキ』なるものを集めやすい所であったが、戦争を正義とする世界の一つになってしまっている。そこも取り返す必要があるぞ」
「了解でやんす!」
「ですが、濃藤すみ子ちゃんをもう少し休ませてあげてください。それから本部にこの事を連絡をお願い致します」
「俺がやるよ」
 川村が通信機を取り出した。
「こちら領土攻撃班、川村!今赤軍の人間二名と対峙した。ここからは危険な為俺達は『雷の山』を通る道を進みたいと思う」
『了解した。あそこは危険な地なので不意に雷撃を喰らわないように注意してくれ』
 イマヌエルが応答した。
「了解」
 すみ子達は雷の山の方角へと向かった。

 少女は鳥に乗って少し東の方へと向かう。
「おお、戻ってきたか」
「全く、一人で移動されては困るでごわすよ」
 二人の男が出迎えた。一人は髭を生やした男、もう一人は肥満体型の男だった。
「ごめん、利通、隆盛」
「ところで、助けに行った者共は無事だったのか?」
「うん」
 少女はそっけなく答えた。
(本当に役に立つね・・・)
 少女は今までこの世界に来るまでにこのスケッチブックを活かす事があまりなかったのでその反動からか、有効に使える事に心の中で嬉しく思っていた。
「次、どこに行く?」
「ああ、かなりの強者(つわもの)がおる地帯はあそこだ」
「うん、行こう」
 少女はチーターを召喚して乗り、チーターを疾走させた。

 こちら紂王の屋敷。妲己は朝帰りの疲れから疲弊して眠っていた。その地に紂王が入って来る。
「妲己・・・。随分と疲れているのだな。寝ているそなたも美しい・・・」
 紂王は添い寝したい気分ではあったが、接吻に留めた。
(はて、効いた話では、あの『藤木茂』という少年を奪い返さんとする輩が近づいているらしいが、果たして如何なものだろうか・・・。折角この世界に送り込まれて住み慣れたこの館も捨てがたいが、やはり別の地に移動して逃げた方が良いか・・・。あの少年や愛しい妲己の為にも・・・)
 しかし、紂王はある事が頭に浮かんだ。
(だがあの少年はまだ己の嫁を決めていない・・・)
 紂王は頭を悩ませていた。少年は今、遊女達と遊んでいた。

 かよ子達は羽根を飛ばすのに疲れていた。
「疲れた・・・」
「山田かよ子、少し休むが良い。そろそろ昼飯どきだ」
 次郎長が案じた。
「うん・・・」
 その時、通信機から声が聞こえて来た。
『皆さん、お疲れ様です。そろそろ昼食時となりましたのでお送り致します』
 皆の前に昼食が送られてきた。献立は天ぷら蕎麦だった。
「天蕎麦か、久々だな」
「おお、うめえ!」
 次郎長の子分達が食事時を楽しんだ。
「ああ、美味しいねえ~」
「うん、ももこちゃんといると美味しく感じるよ・・・」
 皆は美味しく食べていた。
「それにしても藤木君のいる所はまだなのかな?」
「だいぶ近づいているとは思うが、奴らも帰すとは思わん。着いた時も全力で戦う事を忘れるな」
「うん・・・!!」
 かよ子は改めて緊張感を覚えた。そして自分の好きな男子も頭に浮かぶ。
(藤木君を取り返したら、今度は杉山君を連れ返す!!)
 かよ子は連れ戻さなければならぬ人物が二人いる事を思い出した。
(あのレーニンって男のところにいる・・・。夢の中にも出てきて・・・。でも、手強そう・・・!!)
「そうだ、藤木って今どこにいるのか分かるかブー?」
「そうだな、本部守備班を担うお主らの友である長山治に聞いてみたら如何であろうか?あるいはフローレンスやイマヌエルなど本部に問い合わせるとかな」
「うん、ブー」
「俺は長山に連絡を取ってみるぜ」
 ブー太郎は食後に通信機を取り出して本部に質問する。
「こちら藤木救出班の富田太郎だブー!オイラ隊は今藤木がいる所に近づいているのかブー?」
『はい、こちらフローレンス。今順調に近づけています。そのまま進めば大丈夫です』
「了解だブー。ありがとうブー」
『但し、向こうも警備や対策を練っています可能性も無ではありませんのでお気をつけてください』
 一方、大野は長山に連絡を取る。
「こちら藤木救出班。大野だ。長山、聞こえるか?」
『大野君、どうしたんだい?』
「今、藤木が今何をしているか、お前の眼鏡で確かめて欲しいんだが」
『解った、今、確認するよ。ちょっと待っててくれよ』
 長山は暫く黙った。皆は息を呑んで長山の報告を待つ。
『見えたよ。藤木君は今、女の子達と遊んでいる所だよ』
「つまり、今動いてねえって事だな?」
『うん、そうなるね』
「サンキュー、長山!」
 大野は礼をして通信を終えた。
「このまま突っ切るブー!」
「ああ、それから藤木は動いてねえみたいだ」
「解った。羽根を飛ばすよ!」
 かよ子は羽根を再び動かした。
(藤木君、浮かれてるのもそこまでだよ・・・。笹山さんが待ってるし、それを解らせないと!)
 かよ子達は藤木を奪還するためにまた動き出す。

 紂王の屋敷ではある男から連絡が来る。
『紂王』
「その声はレーニンか」
『左様。貴様の屋敷にいる少年についてだが、それを取り返さんとする者達が近づいて来ておる。警護しつつ迎撃か逃亡の準備を始めた方が良い』
「ただ、妲己から明日は雪の降る地へと遊びに行く予定を立てているのだが」
『そうか、終われぬように気を付けよ。ならば、そちらに援軍を寄こそうではないか』
「ああ、頼む」
 紂王は懸念していた。
(この地を捨てざるを得ぬかもしれぬ・・・、か) 
 

 
後書き
次回は・・・
「少年の記憶の中」
 紂王の屋敷にいる少年は未だに自分の嫁とする女性を決められずにいた。そんな少年の元に赤軍の和光晴生が訪れる。彼は少年に協力しようとして彼の記憶を探ろうとする。そしてかよ子達の元に次に現れた敵は・・・!? 
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