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イベリス

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第四十話 〆切りその九

「パリーグに興味ある?」
「・・・・・・・・・」
 返事はなかった、蹲るだけだった。咲はその彼女の仕草を見て言った。
「多分だけれど」
「モコヤクルトファンみたいね」
「そうみたいね」
「これはね」
 母は笑って言った。
「モコもね」
「ヤクルトファンね」
「そうした意味でうちの家族の一員ね」
「一家全員ヤクルトファンだからね」
「モコもそうだってことね」
「そうみたいね、けれどこれでね」
 咲は母にあらためて話した。
「うちはパリーグとはね」
「縁がないってことね」
「そのこともわかったわね」
「そうね、一家でそうしたこともあるのね」
「犬も含めてね」
「そういうことね」
「正直強いかっていうと」
 母は少し苦笑いになって述べた。
「それはね」
「言えないわね」
「阪神は別格として」
 毎年日本一となり十連覇も達成したこのチームはというのだ。
「クライマックスもね」
「出られるかどうかわからないね」
「そうしたチームだからね」
「そうよね、けれどね」
 それでもというのだ。
「いいチームでしょ」
「そのことは間違いないわね」
「それも地元のチームだし」
「東京のね」
「だからね」 
 地元のチームであることもあってというのだ、このことが重要であることは言うまでもない。
「お母さんもお父さんも応援してるし」
「娘の私もよね」
「そういうことよ」
「そうよね」
「間違っても巨人はないから」
 この忌まわしきチームはというのだ。
「だからね」
「そうなるわね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「モコがファンでも野球場には連れていけないわね」
 母はこのことを残念だと述べた。
「ちょっとね」
「それは仕方ないわね」
「ええ、犬はね」
「そうした場所には連れて行けないわね」
「どうしてもね」
「それは無理よね」
「ええ、けれどテレビやインターネットでは観られるから」
 そちらは大丈夫だというのだ。
「しかも実際にでしょ」
「テレビとかネットで観てるしね」
「家族が観てるとね」
 そのヤクルトの試合をというのだ。
「モコも観てるから」
「ヤクルトファンになったのね」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「これからもそうしたところでね」
「モコに観せてあげればいいわね」
「そうなるわ」
「そうよね」
 咲もそれはと頷いた。 
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