イベリス
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第四十話 〆切りその四
「だからね」
「それでなのね」
「そう、寝ることもね」
こちらもというのだ。
「忘れないでね」
「やっぱり何時間か寝ないと駄目ね」
「お母さん一日最低でも五時間は寝てるわよ」
「五時間なのね」
「咲も最低でもね」
「それ位は寝ることね」
「一日四時間で徹夜もざらとか」
そうしたというのだ。
「手塚治虫さんみたいにやってたら」
「長生き出来ないわね」
「だからあの人六十を少し超えて亡くなって」
そうなってというのだ。
「藤子不二雄先生のF先生も石ノ森章太郎先生もよ」
「それ位でなのね」
「お亡くなりになってるのね」
「そうよ、若くしてね」
今は六十だと若いという感覚から言うのだった。
「そうなったのよ」
「それだけ寝不足は身体に悪いのね」
「ましてあの人達みたいに徹夜がざらなんてね」
「普通に駄目ね」
「駄目過ぎるわ」
「だから私もなのね」
「寝なさい、お父さんだってちゃんと寝てるし」
「そうなのね、そういえばお父さん少し落ち着いた?」
咲は埼玉への転勤を嫌がっていた父のことを思い出した。
「最近は」
「もう腹を括ったわよ」
「埼玉に行くって」
「所沢の方にね」
「完全にライオンズね」
「全く興味がないって言うのは変わらないけれどね」
「所沢も東京からすぐなのに」
咲は自分の感覚から述べた。
「もうそれこそね」
「電車ですぐよね」
「その電車も多いし」
一時間辺りのそれもというのだ。
「流石に山手線程じゃないけれど」
「山手線は日本一多いからね」
「別格ね」
「だからあそこと比べると間違いだけれど」
「所沢までも多いことは多いわね」
「そうよ、楽に行けてね」
そうしてというのだ。
「楽に帰ることもね」
「出来るわ」
「そうよね」
「埼玉は都会よ」
間違いなくというのだ。
「政令指定都市もある」
「所沢も凄いわよね」
「そんな嫌だとか言われる様な」
「そんなところじゃないわね」
「というか元々東京と同じ国でしょ」
埼玉はというのだ。
「武蔵じゃない」
「あっ、そうだったわね」
咲も言われて頷いた。
「東京と埼玉はね」
「そう、今でこそ別々だけれど」
「東京と埼玉は同じ国だったわね」
「それであれこれ言うことはね」
「おかしいわね」
「チャキチャキの江戸っ子なんてね」
母なこの言葉も話に出した。
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