ドリトル先生とめでたい幽霊
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第四幕その五
「産まれてからね」
「その外見だからだね」
「それでスポーツは全然駄目だから」
「だからっていうんだね」
「恋愛とは無縁だって」
「本当にそうだよ」
本当に言うことは変わらない先生でした。
「僕はね、だからね」
「それでだね」
「先生はあくまでだね」
「自分は恋愛とは無縁」
「そう言ってだね」
「お付き合いもしないんだ」
「いやいや、僕が誰かと交際するなんて」
それこそというのです。
「全くないよ」
「それはないから」
「先生紳士だし公平だしね」
「穏やかで親切で」
「しかも教養豊かでね」
「ちゃんとした収入も立場もあるから」
そうした人だからというのです。
「先生ならね」
「絶対に誰かいるよ」
「というかもういるかも」
「ちょっと周り見たら?」
「すぐ傍にとか」
「それはないよ、せめて僕がね」
今も作品を読みつつ言います。
「織田作さんか作品の登場人物の要素が少しでもあればね」
「何があっても奥さんと結婚しようとしたり」
「不倫をしてでも一緒にいたいとか」
「そうした気持ちが少しでもあったら」
「それならなんだ」
「これまで何かあったかも知れないけれど」
それでもというのです。
「僕はこの通りだからね」
「それでだね」
「先生としては」
「こと恋愛については無縁で」
「求めないんだ」
「そうだよ、全くね」
まさにというのです。
「今で充分過ぎる程幸せだしね」
「それでなんだ」
「どうにもだね」
「恋愛まではいい」
「結婚にしても」
「そうなんだね」
「そうだよ、だからね」
本当に今で満足する位幸せだからというのです。
「僕はいいよ」
「成程ね」
「もっと求めてもいいんじゃない?」
「僕達はそう思うよ」
「先生についてはね」
「恋愛も」
「ははは、皆のエールだけ受け取っておくよ」
やっぱり自分に恋愛は無縁だと信じて疑いません。
「有り難くね」
「そこで有り難くじゃないよ」
「ちゃんと周り見てね」
「そうしたら気付くよ」
「普通だとね」
「そうかな」
先生は今も皆の言葉を自分のことを気にかけてくれるが為のエールだと思っています、その気持ちを受け取っておくのでした。
ですがその後で、でした。
三時のティータイム、ミルクティーとクラッカーに苺それにバウンドケーキを研究室で楽しんでいますと。
日笠さんがビスケットを持って来て先生に尋ねてきました。
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