ドリトル先生とめでたい幽霊
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第四幕その一
第四幕 大阪の恋愛
先生はこの時大学の図書館で織田作之助全集、定本とされているそれを読んでいました。そうして一緒にいる動物の皆に言いました。
「読みやすくてわかりやすくて親しみやすいよ」
「それも楽しんで読めて」
「堅苦しくもない」
「それが織田作さんだね」
「その人の作品だね」
「うん、上本町で恋愛のお話をしたけれど」
串カツとビールを楽しんでいる時のお話をするのでした。
「この人の作品はその要素もあったりするからね」
「大阪の市井の人達の」
「主題ではない場合もあるけれど」
「それでもその要素もあって」
「親しめるんだね」
「恋愛っていうのは時として地獄を見るもとにもなるよ」
こうもです、先生は言いました。
「けれどね」
「それでもだね」
「人には確かにその感情が存在していて」
「そして人の一部になっている」
「それは大阪の人達も同じだね」
「織田作さんの恋愛は一言で言うと奇麗じゃないよ」
そうしたものだというのです。
「人には美醜があってこの人は俗世を書いていたしね」
「そういえば奇麗かっていうと」
「雅とか壮麗かっていうと」
「確かに違うね」
「武張ってもないし」
「大阪の普通の人達だね」
「彷徨って働いて出会いを経験して落ち着いて」
そうしてというのです。
「暮らしている人達でね」
「その中で人を好きにもなって」
「普通に生きる中で色々ある」
「そうした中に恋愛もある」
「そうした風なんだね」
「それで付き合ったり夫婦になったりするんだ」
そうなるというのです。
「競馬という作品では主人公は死んだ奥さんのことがずっと忘れられないんだ」
「奥さんを愛していたから」
「それでなんだ」
「ずっと忘れられないのね」
「そうした人なんだね」
「仕事を失って再就職したり会社のお金を使い込んだり」
競馬の主人公のお話もします。
「やっぱりね」
「お話聞いてるとだらしない人だね」
「特に会社のお金使い込むとか」
「駄目じゃない」
「その中で奥さんの病気の回復を必死に願掛けしたり物凄く愛していたりね」
そうした面もあるというのです。
「人間臭い主人公なんだ、そしてその中で奥さんが亡くなって奥さんが結婚する前に付き合っていた人のことも知ったり」
「ううん、ドラマだね」
「それも結構泥臭い」
「思った以上にね」
「人間の美醜を描いた作品ね」
「この人の恋愛はこうなんだ、人間的でね」
それでというのです。
「皆が言う通り泥臭くて」
「それで美しくもあり醜い」
「それで特別なものでもないんだ」
「その辺りにある様な」
「市井のお話なんだね」
「そうだよ、その人にとっては死ぬ様なお話でも」
それでもというのです。
「恋愛は実はそんなものだね」
「うん、端から見るとね」
「実は何でもないことだよね」
「恋愛って実は主観だよね」
「他の人には極論すればどうでもいいね」
「そうしたこともね」
恋愛についてのそうしたこともというのです。
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