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入内雀

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第三章

 雀達は清涼殿にまで入った、そこでだった。
 食卓の上の飯に群がりついばみだした、これには誰もが不吉なものを感じた。
「何と、清涼殿の飯をついばむとは」
「これはよからぬこと」
「不吉だ」
「只の雀ではないぞ」
「一体何だ」
「これは何事だ」
「これは陰陽師に調べてもらおう」
 こうした話になり宮中にいる陰陽師がすぐに調べた、そして。
 陰陽師は帝にこう述べた。
「これは先の陸奥守殿の祟りかと」
「左近中将だった」
「はい、あの方のです」  
 実方のというのだ。
「祟りです」
「そうであるのか」
「陸奥に送られたことを怨まれて」
 その為にというのだ。
「ご自身に責があるとわかっておられても」
「怨みは抱いてか」
「そのうえで亡くなられ」
 そうしてというのだ。
「祟りを為されています」
「わかった、では中将の魂を弔い」
 帝は陰陽師の話を聞いてすぐにこう言われた。
「そしてな」
「そうしてですね」
「官位も授ける、そうしてな」
「祟りを鎮められますね」
「その様にしよう、殿の飯が奪われるなぞ不吉の極み」
 それ故にとだ、帝は言われた。
「その様にしよう」
「さすれば」
 陰陽師もそれがいいと頷いた、こうしてだった。
 実方の魂は弔われ官位も与えられ祟りは鎮められた、以後宮中にこうしたことが起こることはなくなった。
 だが北陸では時折雀が多く出て虫ではなく米を食った、それで都からそちらに来た者がこの話をした。
「そうしたことがありまして」
「ではあの雀達は中将様の祟りですか」
「内に入って祟られた」
「それでしょうか」
「そうやも知れないですな」
 こうその地の者に話した、そしてだった。
 以後北陸ではこうした雀達を入内雀と呼んだ、虫ではなく穀物を食べる害ある雀は実方の祟りであるとして。それは今も同じである。


入内雀   完


                 2021・9・13 
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