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八条学園騒動記

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第六百四十八話 牛を観つつその十

「口にします」
「そうなのね」
「乳製品は食べないとね」
 ナンはこう言った。
「本当に」
「身体にいいですね」
「貴重な食べものよ」
 ナンはこうセーラに語った。
「モンゴルではね」
「お国ではですか」
「ええ、モンゴルって遊牧民でしょ」
「それで羊のお肉にですね」
「馬乳とね」
 それにというのだ。
「乳製品がね」
「お食事ですね」
「それで乳製品がないと」
 そうであると、というのだ。
「食べものがないとかね」
「そうした状況に陥りますね」
「ええ、昔はね」
 かつてのモンゴルではというのだ。
「草原での暮らしは厳しかったから」
「少しのことで極限状態に陥るので」
「乳製品を食べないなんて」
 それこそというのだ。
「考えられないわ」
「そしてヴィーガンもですね」
「死ぬわよ」
 返事は一言だった。
「モンゴルでヴィーガンなんて」
「左様ですね」
「お野菜もないしね」
 ナンはさらに言った。
「果物もね」
「ありませんね」
「田畑も果樹園もないのよ」
 草原にはというのだ。
「だったらね」
「ヴィーガンではですね」
「食べものがなくてね」
 それ自体がというのだ。
「それでよ」
「餓え死にしますか」
「今でもね、交易で手に入るけれど」
「基本的にですね」
「そういうものがないから」
 遊牧生活ではというのだ。
「草原と羊、それにね」
「馬ですね」
「農業なんてないから」
「それも全く」
「街や村やその周りにはあるけれど」
 それでもというのだ。
「私みたいに昔ながらの暮らしをしているモンゴル人にはね」
「無縁のものですね」
「全くね」
「だからこそですね」
「ヴィーガンなんてね」
 それこそというのだ。
「モンゴル、遊牧民だとね」
「考えられないですね」
「本当に昔のね」
 ナンはさらに言った。
「チンギス=ハーン様の時代だと」
「モンゴル帝国の頃ですね」
「あの頃にヴィーガンなんて」 
 そんなことを言っていると、というのだ。
「生きていけないわよ」
「お肉も乳製品も口にしないとなると」
「何食べるのよ」
 それこそというのだ。 
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