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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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ラブ&ピース

 
前書き
私の住んでる近くに、サブタイトルと同じ名前の石鹸の国があるけど、全くの無関係だよ。 

 
『太陽の石』も手に入れた…
オルテガさんのヤンチャ情報もゲットした…
もうラダトームには用が無いのだが、何故だか私達は未だにこの地に滞在している。

ラダトームの宿屋でチェックアウトもせずに、無駄に時間を過ごしている。
隣の部屋からは、お兄ちゃんとアルルさんの甘ったるい喘ぎ声が聞こえてくる。
『どうしようか?』と、彼氏(ウルフ)に目で相談したら、『我々も頑張ろう!』って結論に達したので、急いでパンツを脱ぎ捨てた。

きっとお父さん達も同じ事してるだろうし、時間を有意義に使わなきゃ損である!
だって、まだ昼にもなってないのに、真面目カップルが率先してヤりだしちゃったら、それに従うしかないでしょ!?

あいつら急にイチャイチャ始めやがって、先を急ごうとする我々を無視して、宿屋へしけ込むんだから…
あのお父さんが唖然としてたわよ。






さて…ほぼ一日を愛を育む最終行為に費やし、翌朝は()よら出立です。
分かっている事ですが、勇者カップルがイチャイチャ鬱陶しい。
手を繋いで移動するどころか、アルルさんの腰を抱き寄せて、常に密着状態で動くお兄ちゃん…
もっと若い内から、そう言うのに馴れていれば此処まで溺れなかったのだろうに…

お父さんはお父さんで、何時もの様に大声で歌いながら、真っ暗なフィールドを歩いて行く。
松明の明かりは灯す範囲が狭くて、敵の接近が分からない。
でも敵からは松明の明かりが目印になり襲いやすいのだ。
だから、せめて歌うのを止めてもらいたいのだけど…止める訳ないのよね…だって、私のパパだもの。

「本当に暗いわね…これじゃ敵の接近に気付かない恐れがあるわ…」
イチャラブしてても真面目成分は失われてはおらず、勇者カップルが危機感を露わに語り出した…チラッと歌う男を睨んで。

「危険だね…松明を増やした方が良くない?」
「うん…でも、照らせる範囲が限られているから、あまり意味があるとは…」
「そうか…やっぱり警戒しながら進むしかないんだね」

「じゃぁさ…進む先にメラを飛ばして、燃やしていけば明るく安全に行けんじゃね?」
面白そうな方法だけど、危険じゃないのかしら?
「また馬鹿な事を…この先に何があるか分からないのに、めったやたらにメラを使ったら、大惨事になるかもしれないじゃないですか!」
やっぱり息子に怒られた…

「そうですよ!それに、そんな無意味に魔法を使って、いざ戦闘になったら魔法力が尽きました…って事になったら大変でしょ!」
「ちょっと言ってみただけなんだから、そんなに怒らなくてもいいだろ!」
うん。状況打破の提案をした者に対して酷いと思う。
ダメ出しするにしても提案の良い点を褒め、それで却下するのがリーダーの資質だと思う。
あんな言い方じゃ、その内誰も提案しなくなる。

「でも…魔法で何とかするって考えは良いと思います!」
しょうがないから、大人な私が話し合いの動かし方を見せますよ。
「ま、魔法って…メラは危ないわよ!下手すると森林火災とかの原因になるかもしれないし…」
本当…頭が固いわね。

「ちっちっちっ…私が言ってるのは魔法でって事よ!何もメラ限定じゃ無いわ!」
右手人差し指を立て、左右に振りながら更に否定する私。
「つまりどういう意味なの!?勿体ぶってないで、早く説明してよね!」
私の言い方の所為か…それとも態度の所為なのか…苛つきながらアルルさんが結論を急ぎます。

「んも~…アルルお義姉ちゃんはお忘れですかぁ?つい最近、光る魔法を目撃した事を!」
「それはレミラーマの事か?」
流石はお父さんです。

「そう!そうよ、それそれ!!だって結構光輝いてたでしょ!?アレを上手く改造できれば、松明無しでも良い感じになるんじゃない?」
私は指パッチンをしてお父さんを褒める。
うん。お父さんとの会話はスムーズで楽しい。

「う~ん…レミラーマか…改造して光だけを発する様に…う~ん…」
魔法の改造提案を聞き、本気で考え始めるお父さん。
私は無茶な事を言ってはいない。
だって実際にDQ1には『レミーラ』って言う周囲を照らす魔法が存在するんだから。

だが、そんな事を知らないお兄ちゃん達は『また馬鹿な事を…』等と言いながら、呆れた表情で前進を開始する。
癪に障るから、お父さんにソッと耳打ちをする…
「お父さん…『レミーラ』って魔法が、本当にドラクエには存在しますのよ。だから『レミラーマ』の改造は絶対に出来ます!」

この瞬間から、私とお父さん…そしてお母さんとウルフ…更には、お父さんに引っ付いているアホの子の5名での、魔法改造チームが始動する。
お父さんの口癖…『やる前から諦めるのは馬鹿者!』を実践してやる。




私達が真剣に討議と実験を行っている間、お兄ちゃん達はもっと真剣に戦闘しております。
本来なら私もウルフも戦闘に参加しているのですが今回はガン無視で、時折此方を見てお兄ちゃんが舌打ち致します。
魔法担当の2人が居ないのは相当にキツイらしく、ハツキさんまでもが舌打ちをしました。

きっと直接文句を言わないのは、お父さんが本気で取り組んでいるからだと思います。
成功すれば万々歳、失敗してもその間歌わなくなるので大助かり。
それに文句を言ったら言ったで、その倍以上の反撃を被るだろうし、ムカツクだろうけど放っておくしかないのだと感じてるのでしょう。


周囲が常に真っ暗なので、時間の経過が分からないのですが、ラダトームを出てかなりの時間が経ってるのは確か!
今更ながら疲れた様で、野営の準備を始める一行。

その際、パーティーリーダーの愚痴が聞こえてきます。
「戦闘に参加しない奴は、それ以外の事に全力を出しなさいよ!口ばっかりで使えないわねぇ…」
相変わらず小うるせぇー女だ!

「まぁまぁ…父さんは、ああ見えても独自にバギを改造させた人だ。もしかしたら成功させるかもしれないよ…それに考え続けてくれれば、常時歌う事が少なくなる!放っておこうよ」
流石お父さんの息子歴が長いだけはある…プラス思考が重要よ!



「よし、これなら大丈夫だろう!」
粗雑な食事を素早く終わらせ、魔法改造に没頭していたが、遂にお父さんが声を上げた。
皆が(魔法改造チーム以外)眠る体勢に入っている中、周囲の見張りと銘打って少し離れてイチャつくバカップルも、お父さんの声に驚き近付いてくる。

「まさかリュカさん…レミラーマを改造できたの!?」
我がチームの活動に、最も舌打ちをしていたアルルさんが、期待を込めた表情で尋ねてくる…現金な女だ!

「モチ!イケメンに不可能は無いのだ!」
「相変わらず理屈の分からない事を…」
おいおい…私達のパパに向かって何て言いぐさだ。

「で…本当に周囲を照らす事が出来るんですか?」
一向に進まない話を進める事が出来るのは、マイパパに流されない愛人ハツキさんだけ!
『さっさとその魔法を見せろ!』と言わんばかりに、魔法の使用を促す。

「うん。最初は、レミラーマで発生する光を保たせるのに苦労したけど、魔法力自体を輝かせる事で、何とか解決でけた!」
私もウルフも…勿論お母さんも、改造に知恵やアイデアを出し苦労した。
でも一番努力したのはお父さんで、何度も魔法を唱えて実験したのだ。

「レミーラ!」
もっと色々能書きを垂れたいのだろうが、めんどくさくもなったのだろう。
ハツキさんに促されるまま『レミーラ』を唱える。

直径15センチ程の光の玉が、お父さんの頭上で光り輝き、そのままフワフワと6.7メートル程浮かび上がる。
言っておくが、すんごく眩しい!
この魔法はダイレクトに魔法力の強さを反映する魔法だ。

魔法力が弱ければ光の強さも弱く、逆に強い魔法力の人…例えばお父さんのレミーラは、
遮蔽物のない平原を300メートルくらいの範囲で明るくする。
「お、思ってたより明るいですね…」
アンタのパパは、それだけ凄いって事だよティミー君!

「うん。魔法力の強弱で明るさも変化するし、発光は魔法力が続く限り持続するよ。こうしている間も僕の魔法力は、この光に吸われているんだ」
「え!?じゃぁ結構魔法力が必要なんですか?」

「いや、小一時間この状態で発光させ続けても、バギ1発分も消費しないよ。それに同時に他の魔法も使用できるんだ!この光は、最初に呪文を唱えるだけで、後は放っておいて大丈夫なんだ。術者の僕が移動すると、その後を追尾するし…術者の魔法力が尽きるか、術者自ら止めるまで延々と光り続ける!」

ホント…この人の才能には感服します。
“魔法を改造する”言葉で言えば簡単だが、実際に行うのは至難なのだ。
魔法の特性を理解して、理論的に改造を施す…
最高に自慢の父親です!

「へー…随分と便利な魔法ね。ところで…さっき『レミーラ』って唱えてたわよね!何で?」
あまりの眩しさに下を向きながら喋るアルルさん。
余計な事を気にしなくて良いのに…
私は転生者である事を広めたくないんだけど…

「うん。マリーが命名した!『レミラーマじゃ紛らわしいわよね!考えるのもめんどくさいしレミーラで良いわよね!』って………そんな事よりカンダタとモニカも、この魔法を憶えろよ!元盗賊や元海賊だったら憶えられるんじゃねーの?お前等、戦闘で魔法を使わないんだから、いざという時に魔法力が尽きても問題ないだろ!?」

流石お父さん。
上手く適当な事を言って誤魔化した上、話題をすり替えちゃったわ。
もう皆さんの意識はカンダタ・モニカさんに向かってます!

「え!?…でも、俺…魔法なんて使えないし…」
「良いじゃないかカンダタ、やってみようよ!出来るかどうかは分からないんだしさ…」
「そうだぞカンダタ。行動する前に諦めるのは愚か者だ!やるだけやって、頑張るだけ頑張って、それでも出来なかったら諦めれば良いじゃないか!僕が教えるから、一緒に頑張ってみようよ」

珍しくカンダタに優しくするお父さん。
もう皆さん、完全に『レミーラ』の由来は頭から無くなってますね。
つくづくお父さんって凄いと思います!



さて…
話題を変える為にカンダタへ魔法習得を進めたのかと思ってましたが、どうやら本気だった様で、根気強く馬鹿(カンダタ)に魔法を教えているお父さん。

「このくらいも出来ないのかい!?アンタの頭はどうなってるんだい!?」
先に習得出来た彼女(モニカ)さんに罵声を浴びせられながら、半泣きで頑張るカンダタ…
恋人同士なのだから、もっと優しい言葉をかければ良いのに…

むしろお父さんが、
「気にするなよカンダタ。誰にだって得手不得手があるんだ…継続は力なりって言葉もあるし、諦めなければ何れ物に出来るよ!」
と優しく励ましてますわ。

結局カンダタは『レミーラ』習得に20日かかりました。
思わずウルフに言いましたよ…
「私だったら、こんなに物覚えの悪い生徒には、3日で愛想を尽かすのに…お父さんてば我慢強いのね…学校の先生に向いてるかも」
前世は学校の先生だったのかな?



 
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