ドリトル先生とめでたい幽霊
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第二幕その十二
「だから作品にもね」
「出ていますね」
「そのことが。それも濃くね」
ただ出ているだけでなくというのです。
「そうだったんだ」
「そこも重要ですね」
「大阪という町を知って理解する」
先生は穏やかですが確かな声で言いました。
「そのこともね」
「織田作之助さんを理解することですね」
「そうだよ、それとこの人は西鶴さんの影響もね」
「あの古典の」
「最初は読んでいなかったけれど」
それがというのです。
「作風が似ているとも一脈通じているとも言われてね」
「それで、ですか」
「読む様になってね」
「影響もですか」
「受ける様になったんだ、実は近現代の文学は古典の影響も受けているんだ」
日本のそれはというのです。
「実はね」
「そうだったんですね」
「芥川龍之介は今昔物語を題材にした作品が多いし」
この文豪のお話もしました。
「太宰治は御伽草紙、三島由紀夫は能を言われているね」
「三島由紀夫もですか」
「そして谷崎潤一郎も源氏物語を訳しているよ」
この人もというのです。
「そして井伏鱒二や石川淳、円地文子もね」
「古典から影響を受けていますか」
「作家と古典という本があって」
「その本で、ですか」
「書かれていたんだ」
こうトミーにお話しました。
「そうしたこともね」
「近現代の作家さんと古典ですか」
「関係ない様でね」
「関係があるんですね」
「古典は重要な教養で」
そしてというのです。
「そして非常にいい執筆の資料、素材だからね」
「作品の元にもなる」
「だからね」
「多くの作家さんが読んでいるんですね」
「そうだよ、夏目漱石なんかもね」
この人もというのです。
「イギリス留学の経験だけじゃなくて」
「古典の素養もあったんですか」
「漢詩にも造詣があったし多くの俳句も残しているよ」
「俳人でもあったんですね」
「そうだよ、あの人もかなりの教養人だったんだ」
文豪であっただけでなくというのです。
「そして森鴎外もね」
「あの人はドイツ留学をしていましたね」
「それと共にね」
「やっぱり相当な教養があったんですね」
「古典のね、だから江戸時代の文章で書いた作品もあるよ」
「江戸時代のですか」
「候文のね、そもそも舞姫の頃は古典的な文体だったしね」
今度は文体のお話もしました。
「それを変えていっているし教養もね」
「凄かったんですね」
「そうだよ、だから作家さんと古典の関係もね」
こちらもというのです。
「学ぶと面白いよ」
「そうですか」
「これは他の国でも同じだよ」
「イギリスでもですね」
「勿論、アーサー王やシェークスピアもだね」
「言われてみますと」
まさにとです、トミーも頷きました。
「そうですね」
「古典には無限の叡智があってね」
「それを学ぶことは現代作家にも有益ですね」
「とてもね、そして織田作之助さんもね」
この人もというのです。
「井原西鶴さんの影響があると言われて」
「それで読みはじめて」
「次第にね」
「影響を受けたんですね」
「最初は読んでいなかったみたいだけれど」
それでもというのです。
「読む様になってね」
「影響を受けたんですね」
「そうだよ、今回の論文ではそのこともね」
織田作之助と井原西鶴の関係もというのです、先生はトミーに穏やかでかつ知性を感じさせる笑顔でお話しました。
「書いていくよ」
「そうしていきますね」
「そうだよ、じゃあこの後も」
「本を読まれて」
「論文を書いていくよ」
笑顔で言う先生でした、先生と織田作之助の関りはさらに深まっていくのでした。
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