リリカルなのは~優しき狂王~
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第十五話~アグスタ~
前書き
前半の重要な部分に差し掛かりました。
堅い話が続くかもしれませんがよろしくお願いします。m(_ _)m
移動中ヘリ内
ライがナイトメアの解析作業を行ってから数日後、機動六課の前線メンバーと医療班のシャマルを含めた数人とライは現在ヴァイスの操るヘリの内部にいた。その目的はある場所の警備任務である。
ある場所の名前は「ホテル・アグスタ」。その場所ではこれからオークションが行われる。そのオークションに出品される品がロストロギアと誤認したガジェットが襲撃する可能性があるためである。
本来ならこの場に民間協力者であるライはいないはずであった。しかし先日の調査でナイトメアフレームとガジェットの制作者と所有者が同一人物の可能性が出てきたため、特例で今回の任務に同行することとなった。
はやて「ほな、説明するな。」
はやてはそう言うと今回の任務説明と犯人と思われる「ジェイル・スカリエッティ」の説明を始める。
説明をしている最中にキャロがシャマルの足元に置かれた四つのケースに気付いた。説明が途中だったため、そちらに集中していたがはやてが最後に質問の有無を確認したため彼女は思い切って尋ねた。
キャロ「あの……先程から気になっていたんですが、そのケースは一体?」
その質問に答えたのははやてではなくシャマルであった。
シャマル「これ?これは隊長さんとライ君のお仕事着♪」
ケースの一つを持ち上げ楽しそうに答えるシャマル。それを見て何人かは首を傾げていたがライだけは一人ため息をついていた。
ホテル・アグスタ
アグスタに到着した機動六課一行プラス1は到着と同時にそれぞれの指定されていた持ち場についていく。そしてライ、なのは、フェイト、はやての四人も仕事着に着替え持ち場に向かっていた。四人の担当はホテル内の警備である。
ライ「はやて」
はやて「何?」
ライ「僕もティアナ達と正面の方に行きたいのだけど。」
はやて「だめ。」
ライの要求を即刻却下するはやて。ライがこう言うのには理由がある。彼が今現在着ているのはアッシュフォード学園の制服ではなく、ブリタニアのナイトオブラウンズが着ていたような騎士の服なのだ。ライの容姿と雰囲気、佇まいからその服装はとても似合っている。三人の隊長達は今こそ冷静にしているがライの着替えた格好を見た瞬間、顔を朱に染め見蕩れていたほどだ。
そして残りの三人もそれぞれが美人且つとても似合っているドレスを着ている。
その為オークションに参加する観客の大半の視線を引き付けてしまうのだ。主に女性陣はライに男性陣はなのは、フェイト、はやての三人に。その好奇の視線にうんざり気味だったためライははやてに尋ねたのだ。
はやての返答に若干渋い顔をしつつもライはオークションの受付をし始める。
はやて「それにここに来る前に“建前”の説明はしたやろ?」
ライ「……」
ライが受付を済ませ、四人が周りに人がいないフロアに来てからはやてがそう切り出した。
はやての言う“建前”とはライの立場と機動六課の関わりであった。
ライが機動六課に民間協力者として参加するにあたり、管理局の上層部より警告を受けたのだ。「ライ・ランペルージが機動六課に協力する場合、隊員のいずれかを異動させるか、隊長格のリミッターを強化し部隊の保有ランクを調整せよ」と。
これはライの保有魔力が平均よりも少し高めのAランクであること。そして模擬戦での計測から陸戦AA-であったためである。民間からの協力者とはいえ、一部隊の保有できる戦力が規定されているためにライの戦力は軽視できるものではなかったのだ。
この警告に対してはやては妥協案としてライの交戦規定を設定したのだ。それは大きく分けて二つ。「戦闘にナイトメアフレームが介入した場合」、「ロストロギア・レリックの関係する事件または戦闘が起こった場合」である。そのおかげで六課に出された警告の条件を満たさずとも現状を維持できていた。
今回ライが事前にアグスタの護衛に同行できたのはアグスタでのオークションが一般人も参加できるものであるからだ。
ライがこの話を聞いた時の感想はただ一つ。
ライ「くだらない。」
というものである。
管理局の問題の最大にして最も簡単な理由は「人手不足」である。その名目で『一つの部隊の保有戦力を設定し、各部隊に満遍なく人手を配置する。』という規則が生まれている。理にかなっているように聞こえる規則であるがライにとっては真逆であった。
部隊の戦力にばらつきがあったとしてもその分、担当範囲の調整や勤務時間の変更などを行う方が今よりも犯罪の件数は減ると考えている。なのは達のような優秀な隊長陣の活動を規則の存在で縮小させるのは本末転倒なのである。
そしてライはそれについてもう一つの仮説を立てている。それは反抗勢力の分散である。管理局の現体制に疑問を持つ者や反感を抱くものも少なからず存在する。むしろそう言う存在のいない組織の方がおかしい。その対策として力を持ち過ぎた部隊の反乱を防ぐ保身のための措置であると考えたのだ。反乱を起こしたとしても一つの部隊の保有できる戦力が決まっている以上、それを上回る戦力を送り鎮圧できる。また各地で情報のやり取りをしようとしても管理局の本来の仕事をしなければならいのだ。下手に仕事の方に影響が出れば自分から何かをしているとアピールするようなものなのだから。
管理局の裏側について思考の海に沈んでいたライは自分の愛機から発せられた音で現実に引き戻された。
シャマル『ガジェット反応多数こちらに接近中。それにその後方にナイトメアフレームの反応もあります!』
アグスタ・ホテル正面
シャマルからの報告の少し前、スバルとティアナの二人は念話を使い会話していた。
スバル『それにしても今日は八神部隊長の守護騎士団が全員集合するのか。』
ティアナ「そういえば、隊長たちのこと詳しかったわね、あんた。」
スバル『父さんとギン姉から聞いた話がほとんどだよ。何でも八神部隊長とリィーン曹長と副隊長達、あとシャマル先生とザフィーラがそろえば無敵の戦力だとか…』
ティアナ「……」
スバルの返事に少し考え込むティアナ。返事をせずにいたせいで沈黙が続き、スバルが尋ねる。
スバル『ティア?なんか気になるの?』
ティアナ「別に…」
一瞬ハッとしたがすぐにいつもの雰囲気で返答する。
スバル『そう?じゃあ、また後で。』
ティアナ「ええ…」
彼女は念話を切ると再び思考に浸る。それは機動六課についての考察である。しかしそれはライのように組織としての考察ではなく隊員個人のものであった。
ティアナ(六課の戦力は無敵を通り越して異常だ。隊長、副隊長の強さはもちろん、エリオやキャロのような秘蔵っ子。才能の塊のようなスバル。それ以外のスタッフも一流ぞろい。そして事件に巻き込まれてここに来たライ。だけど、その能力は副隊長達に引けを取らない技術と経験を持っている。しかも彼は魔法の知識と経験を持っていないのに…。やっぱり、この部隊での凡人は私だけか…。…それでも私は立ち止まるわけにはいかない。)
それから少しした後にシャマルからの通信が届いた。
ホテル・アグスタ近郊の森
ライたちがシャマルからの通信を受けているとき、アグスタ付近の森にゼストとルーテシアは訪れていた。
ゼスト「あそこか…」
ルーテシア「……うん。」
二人はそう言いながらホテルに視線を向けている。
ゼスト「ここには、お前の探し物は無いはずだ。」
ルーテシア「……」
ゼスト「…何か気になるのか?」
ルーテシア「うん…。」
インゼクト「……」
ルーテシアの方に視線を移しながらそう尋ねると彼女は首肯しながら答える。そのとき、ルーテシアの使役する召喚虫、インゼクトが姿を現しルーテシアの指にとまる。インゼクトは言葉を伝えるように足を動かす。そして言葉を受け取った彼女はゼストに告げた。
ルーテシア「ドクターの玩具が近づいて来てるって。」
ホテル・アグスタ近郊
シャマルの通信を聞いたライは観客の警護を隊長の三人に任せナイトメアフレームの迎撃のために移動していた。
ライ「敵の展開状況を知りたい。周辺の地形データと敵の現在地のデータをください。」
シャマル『今からそちらにデータを送るわ。』
そう言われると目の前にディスプレイが開かれ敵の反応と自分たちの配備状況が表示される。
ライ(…この展開の仕方……敵はホテルに一直線に向かっているだけか。だけど…)
地図と敵配置を読み取り、迅速に指示を飛ばす。戦闘には既にナイトメアが存在するため、ある程度の指揮権を持つことができるのだ。
ライ「シャマルさん、敵の展開が薄めのエリアに念のために人員を増やしておいてください。それと先行していないフォワード陣だけでは防衛ラインの守りが薄い。副隊長のどちらか一人を戻してください。」
シャマル『分かったわ。今ホテルの周辺には副隊長の二人がいないから早く合流を……』
ライ「いえ、僕はナイトメアの方の掃討に向かいます。」
シャマル『でもあなた一人じゃ…』
ライ「全滅させることはできなくても足止めはできる。だから、ガジェットの掃討が終わればこちらに増援をお願いします。」
シャマル『でも敵は4機いるのよ!』
ナイトメアの性能はガジェットよりも上である。その為たった一人でそれを抑えるといった彼に噛み付くように返答するシャマル。しかしライは冷静にそれに対して返答する。
ライ「無人機なら有人機と比べて動きが判りやすい。それに下手に人数がいても混乱するだけです。だから大丈夫です。」
シャマル『…分かったわ。でも無理はしないで。』
そう言ってくれるシャマルに感謝しつつライはナイトメアの反応がある方に向かう速度を上げた。
ゼストとルーテシアの二人がガジェットについてどうするか考えている中、通信が入る。
ドクター『ごきげんよう、2人とも』
ゼスト「…なんのようだ。」
ドクター『つれないね~。私はルーテシアとの約束のために連絡したというのに。』
ゼストの憮然とした態度にやれやれといった表情をする。ゼストはそんな彼のセリフの一つに疑問を覚えた。
ゼスト「約束?」
ルーテシア「ドクター、彼はここにいるの?」
ゼストの疑問は急に割り込んできたルーテシアの言葉で氷解した。そして彼女がここまで感情を表すようになったことに嬉しさを覚える。しかしそれをスカリエッティに相談していることに不安を抱いてもいた。
ドクター『ああ。先ほど管理局側の増援として現れたよ。』
ルーテシア「!」
ドクター『ショックかい?ルーテシア。』
ルーテシア「少し…」
動揺は一瞬、すぐにいつものように無表情になる。しかしその声はいつもより力がなかった。
ドクター『ルーテシア、僕も彼ともう一度会いたくてね。彼を捉えるために、先ほど新型のナイトメアを一機そちらに送った。君がもう一度彼に会いたいなら、その機体を君の好きにしていいよ。』
ルーテシア「……ありがとう、ドクター。」
ドクター『いえいえ。僕も彼に会いたいからね。代わりと言ってはなんだが一つ頼み事をしたいのだが。』
ルーテシア「いいよ。」
スカリエッティからの依頼を聞くと行動に移すルーテシアであった。
シャマル『ホテルの正面にガジェットの増援を確認。転移魔法です!』
デバイスから全体通信で新たな報告が流れる。一瞬思考しライは新たな指示を飛ばす。
ライ「リイン」
リインフォース『はい?』
ライ「君は転移魔法の使用者の確認を。でも確保ではなく、あくまで偵察に専念して。」
リインフォース『了解です!』
リインフォースとの通信を切り今度は全体通信で報告をする。
ライ「こちらゲスト1、ライ・ランペルージ。ナイトメアの侵攻阻止に入る!」
通信を切り自分の新しい力を掲げ、愛機の名を呼ぶ。
ライ「蒼月!セットアップ!」
蒼月「イエス マイ ロード」
そしてライのこの世界での初めての戦闘が始まった。
後書き
やっとライのデバイスの名前を出せました。
次回は若干ライ無双になるかもしれません。
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