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息子に言われて

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第二章

 一年後結婚する前の体型に戻っていた、それで夫は喜んだ。
「よかったね、努力の介があったね」
「そうね、もうこれでね」 
 妻はその夫に笑顔で応えた。
「達哉にも言われないわ」
「そうだね、痩せたからね」
「豚とかお相撲さんとか」
 そうしたことをというのだ。
「言われないわ」
「しっかり痩せたからね」
「もうないわ」
「そうだね、絶対に言われないよ」
「これからも努力してこの体型維持するわ」
 こう言うのだった、だが。
 達哉は自分の家に友達が来た時に彼等に話した。
「お母さん昔は豚だったんだよ」
「達哉君のお母さん豚だったんだ」
「そうだったんだ」
「そうだよ、物凄く太っていてね」
 それでというのだ。
「豚とかお相撲さんみたいだったんだよ」
「今は痩せているけれど」
「それでもなんだ」
「そうなんだ、けれど今は違うんだ」
 法子本人を指差しつつ無邪気に話す。
「豚でもお相撲さんでもないよ」
「よかったね」
「豚さんから普通になって」
 彼の友達もそれはと無邪気に応える、だが。
 法子はその話を元信に彼が仕事から帰ってから話した。
「子供って遠慮ないわね」
「本当に何でも言うね」
「無邪気にね」
「そこがいいんだけれどね」
「残酷ね。茶美もそろそろ言葉覚えるけれど」
「だあだあ」
 はいはいをしだしている娘も見て話した。
「この娘もね」
「悪気なくね」
「そうしたこと言うわね」
「そうだね、けれどそうしたことは覚悟して」
「子育てしていかないとね」
「二人共ね」
 こう夫に話した。
「そうしていきましょう」
「その悪気ない言葉で傷付く人がいることも教えて」
「そのうえでね」 
 こう話してそうしてだった。
 法子は息子の言葉で落ち込んだ気持ちを戻してそうしてだった。
 子育てをして体型は維持していった、何時しか達哉は自分の母親を太っているとは言わなくなった。常に痩せていると言う様になった。そして彼女が太っていた時があったことも忘れてしまっていた。


息子に言われて   完


                2022・1・21 
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