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レーヴァティン

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第二百三十五話 熊を仕留めその十一

「必ずな」
「そうよね」
「吝嗇は好きでないしな」
 またこう言うのだった。
「褒美は選んでな」
「弾むわね」
「そうする、織田信長も吝嗇ではなかった」
「よくそうも言われてるけれどね」
「褒美のやり方がわかっていた」
 そうだったというのだ。
「土地を分け与えてばかりだとな」
「それだとね」
「やがて土地はなくなる」
「限りがあるからね」
「だからそうなる、そしてだ」
「やがて自分の土地もなくすわ」
「鎌倉幕府は元寇で功を挙げた御家人に土地を与えられなかった」
 この褒美がだ。
「執権北条家の敵を滅ぼせばな」
「源氏からでしたね」
 紅葉は嫌そうに述べた。
「あの幕府は」
「内輪で揉めてな」
「殺し合いが多かったです」
「源氏も殺し合った」
 源氏同士でだ。
「あの家は敵と争う前にな」
「まず身内で殺し合いました」
「そして誰もいなくなった」
「直系の血は完全に絶えました」
「そして北条家もな」
 その源氏に変わって執権として幕府の事件を握ったこの家もだ。
「政敵となりそうな家を滅ぼしてだ」
「和田家等ですね」
「そしてその領地を功を挙げた者達に分け与えていた」
「そうしていましたが」
「元寇は外敵だった」
「それを退けた戦でした」
「その為功の褒美となる領地を与えられなくてな」
 そうしてというのだ。
「御家人への不満となり」
「幕府崩壊の伏線にもなった」
「そうだった」
「土地はそうした問題がありますね」
「そして室町幕府もだ」
 英雄はこの幕府のことも話した。
「足利尊氏は気前がよく」
「功に報いてでしたね」
「家臣達に土地を次々と与えていた」
「それで幕府自体の領地は少なく」 
 直接治めるそれはだ。
「守護の領地は広いものでした」
「幕府の力は弱いままだった」
「そうでしたね」
「それがあの幕府が弱かった要因だ」
「最後は権威だけの存在でした」
「そうなった、土地を褒美に与えることはだ」
「限りがあるので」 
 紅葉は言った。
「だからですね」
「難しい、それ故にだ」
「信長さんは茶器等を褒美に与えましたね」
「その様にした、領土ではないが」
 それでもというのだ。
「領土と同じかそれ以上にな」
「価値あるものですね」
「それがだ」
 まさにというのだ。
「そうしたものだった」
「そしてそれをですね」
「俺も倣ってだ」
 そのうえでというのだ。
「そうしていく」
「左様ですね」
「そしてだ」
 英雄はさらに言った。
「そのことも考えてだ」
「茶器等を揃えておられますね」
「こうしたものを集めることを好む者もいるが」
 英雄はこうも言った。
「しかし俺はだ」
「違いますね」
「書はその書は一冊でいい」
 それだけでというのだ。
「茶器や武具は気に入ったものがだ」
「あればでござるな」
 智が応えた。
「それで、でござるな」
「いい」
「左様でござるな」
「それ以外はな」
「いらないでござるな」
「そうしたものを集める趣味はない」
 一切というのだ。 
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