美少女超人キン肉マンルージュ
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第2試合
【第2試合】 VSノワールプペ(2)
キン肉マンルージュは身の危険を感じて、身構えている。
「プペプペプペプペプペッ! じゃあ、ヒント1! おおきさは、このくらいー」
ノワールプペがそう言うと、デヴィルディスペアは、もこもこと膨れていく。そしてデヴィルディスペアは、グレート・ザ・屍豪鬼やアシュラマン以上の大きさにまで、膨れ上がった。
「プペプペプペプペプペッ! まだわからない? じゃあ、ヒント2! わらいかたは、こんなかんじー……バゴアバゴア!」
ノワールプペの笑い声を聞いて、キン肉マンルージュは凍りついた。
「……うそ……そ、そんな……」
解説者やアナウンサー、そして観客にも、その笑い方が誰のものなのか、見当がつかなかった。
しかし、筋金入りの超人オタクであるキン肉マンルージュには、それが誰のものなのか、瞬時にわかった。
「……こ、今度こそ……無理……だよ……相手が……悪すぎ……無理すぎるよ……」
キン肉マンルージュは自らを抱きしめるように、胸の前で腕をクロスさせ、二の腕を掴んだ。そして、がたがたと震えながら、一歩、二歩と、下がっていく。
「プペプペプペプペプペッ! もうわかっちゃったかな? でも、いちおうヒント3! キンニクマンのトラウマチョージンだよ!」
キン肉マンルージュは涙目になって、耳を塞いだ。
「いやあ! 聞きたくない! いやだよお! ありえないよ! そんなの……絶対に無理……」
“どんッ”
下がり続けていたキン肉マンルージュの背中に、コーナーポストが当たった。
「ひぃっ!」
キン肉マンルージュは、ひどく弱りきった、怯えきった、小さな悲鳴を上げた。
いつの間にか、気がつかないうちに、キン肉マンルージュはリングの最果てにまで、たどり着いてしまった。
「ひううぅぅぅ、怖い……すんごく怖い……怖いよお……」
キン肉マンルージュはコーナーポストを背にしながら、ぺたんと座り込んでしまう。そして耳を塞ぎながら、いやいやと顔を振る。
「ああっと、キン肉マンルージュ選手! まるで心を折られたかのように、腰を折って座り込んでしまったあ!」
アナウンサーが実況する横で、解説者であるアデラ●スゴールドの中野さんは、腕を組みながら悩んでいる。
「バゴアバゴア、ですか……キン肉マン選手のトラウマになるような超人……うーん、わかりませんねえ……私が知る限りでは、キン肉マン選手が戦った超人の中で、そのように笑う超人はいませんでしたが……」
考え込む中野さんの言葉を聞いて、ノワールプペは愉快とばかりに笑い上げた。
「プペプペプペプペプペッ! まだダレもわかっていないみたいだけどー、でもさー、そこでガタついてるションベンガキチョージンはさー、わかっちゃったみたいだよー」
「わ、わかりたくなんてない! わからなければよかった! 知らなければよかった! そしたらこんな、怖い思いをしなくて済んだのに……いやあ! あの超人だけは! 絶対にいやあ! 絶対に無理! 無理ったら無理! 無理なんだもん!」
キン肉マンルージュは座りながら、耳を塞ぎながら、足をばたばたとさせて、暴れだした。まるで駄々っ子が嫌がっているかのように、じたばたと暴れている。
そんなキン肉マンルージュの尋常ではない怯えようを見て、観客達が、ざわつきだした。
“ルージュちゃん、マジびびり入ってるぜ? かなりヤベェのが相手ってことだろ?”
“キン肉マンがトラウマになってるってことは、キン肉マンが戦ったことがある超人ってことだろう? でも、知らないなあ、そんな笑い方の超人なんて”
“バゴアバゴア? そんな超人、いたっけか?”
「どなた様もお知りにならないのは、無理もないことなのですぅ。正確に言うと、“バゴアバゴア”と笑ったのは、キン肉万太郎様と戦ったときであって、キン肉スグル様と戦ったときは、そのような笑い方はしていませんのですぅ」
ミーノの発言を聞いて、観客達は、更にざわついた。
“え? キン肉万太郎も戦ってるの? それってアシュラマンじゃないの?”
“キン肉マン親子の両方と戦ったことがあるのって、アシュラマンだけだよなあ? 他にそんな超人、いないぞ?”
「更に付け加えますと、キン肉万太郎様は、その超人と実際に戦ったわけではなく、その超人の復活を阻止したのですぅ。実際に戦ったのはキン肉スグル様だけであって、キン肉万太郎様は実際には戦っていないのですぅ」
復活の阻止。この言葉を聞いて、観客の中にも、気づいた人が、ちらほらと現れだした。
「プペプペプペプペプペッ! みんな、わかったかなー? セイカイは、このおカタでしたー」
ノワールプペを包み込んでいたデヴィルディスペアが膨れ上がり、ぱぁぁんと弾け飛んだ。
「バゴアバゴアバゴア! 余が地上界に顕現するのは、何年ぶりのことかのう」
デヴィルディスペアの中から現れたのは、恐怖の将と恐れられた、悪魔超人の首領、悪魔将軍であった。
キン肉マンことキン肉スグルが現役だった頃、黄金のマスクをめぐり、悪魔六騎士と壮絶な争奪戦を繰りひろげた。そのときの悪魔六騎士の首領が、悪魔将軍である。
キン肉スグルは悪魔将軍と激闘を繰りひろげ、最終的にはバッファローマンの助けを借り、ぎりぎりの勝利をもぎ取った。
だが、なんとか勝利したキン肉スグルであったが、悪魔将軍はキン肉スグルに、一生消えない傷を、身体と心に、深く刻みつけていた。
あれから十年以上の歳月が過ぎた。だが、キン肉スグルはいまだに、悪魔将軍を恐れている。悪魔将軍の名を聞いただけで、発狂してしまうほどのトラウマを抱えている。そして、深々と悪魔将軍につけられた傷が、今も生々しく残っている。
「確かに正真正銘、恐怖の将、悪魔将軍なのですぅ。でも……キン肉スグル大王様が戦われた悪魔将軍とは、所々、違うようですぅ」
ノワールプペが変身した悪魔将軍は、キン肉スグルが戦った悪魔将軍とは、似て非なる姿をしている。
全身を覆っている鎧は全く同じものである。そして、色は銀色で統一されている。
しかし、鎧の光沢に違いがあった。目の前にいる悪魔将軍は、うっすらと黒色に輝いている。鉄仮面から覗いている金色の髪も、怪しく黒い艶を放ち、鈍く輝いている。
そして胸には、ノワールプペの顔が浮かび上がっている。
「バゴアバゴアバゴア! 何の因果か、またキン肉マンの名を持つ者が相手。どうやらおまえ達と余は、血塗られた縁があるようだのう」
悪魔将軍はキン肉マンルージュの方に向き直り、のそりと歩み寄る。
「バ、バゴッ」
悪魔将軍は、不意にふらりと揺れ、キャンバスに片膝をついてしまう。
「ぐうむ、足りぬ……余が顕現するには、人形では役不足……器として力不足すぎるわ」
「もうしわけございませんー、ゼネラルさまー」
悪魔将軍の胸から、ノワールプペの声が聞こえる。飾りかと思われていたノワールプペの顔が、悪魔将軍に向かって、申し訳なさそうに話している。
「人形よ……余は地上界のデヴィルエナジーを蓄える。それまでの間、この子娘は、貴様が相手をしておれ」
「ハイル・ゼネラル! ジィク・ゼネラル!」
悪魔将軍は、かくんと脱力し、前屈み気味の体勢で、両腕をだらりと垂れ落とす。そして、仮面の目から光が失せた。
「プペプペプペプペプペッ! ゼネラルさまの、ごメイレイー! おまえはボクがころしてもいいんだってー! わーい! やったー! ころしちゃう! ころしちゃお!」
突然、悪魔将軍はピョンと跳ね上がり、キャッキャとはしゃぎだした。そして胸のノワールプペの顔が、無邪気に笑い上げている
「これは一体……ゼネラルとは、いったい何者なのでしょう……ですぅ」
ミーノの声が耳に届いたノワールプペは、身体をのけ反らせて、ミーノの方を向いた。
「プペプペプペプペプペッ! アクマショーグンは、チジョウカイにケンゲンしたスガター! ゼネラルさまがヒトのカタチにヘンカしたスガター! わかってるとはおもうけどー、ボクがヘンシンしたアクマショーグンは、オウゴンのマスク、ゴールドマンとはカンケーないよー! キンニクスグルがたたかったアクマショーグンは、ゴールドマンと、アクマ6キシがウツワー! ボクがヘンシンしたアクマショーグンは、ボクがウツワー!」
悪魔将軍は身体をのけ反らせたまま、上半身をかくかくと揺らして、笑い続けている。
「プペプペプペプペプペッ! ゼネラルさまはジゴクのシハイシャー! このヨにも、あのヨにも、どこにでもいるよー! ゼネラルさまは、ひとりだけど、ゼネラルさまは、たくさんいるよー! どこにいないけど、どこにでもいるんだよー! ゼネラルさまはゼンブみてるよー! トホウもないムカシから、イマのイマまで、ゼンブみてるよー! ときにはミライもみちゃうよー! ゼネラルさまは、おまえたちもみてるよー! メシくってるもの、フロにはいってるのも、トイレしてるのも、イチャイチャしてるのも、ゼンブみてるー! みてほしいものも、みてほしくないものも、いいものも、いやなものも、きれいなものも、きたないものも、ゼンブ、ゼーンブ、みてるよー! ゼネラルは、このヨと、あのヨの、ゼンブをみてるんだよー!」
キャッキャと笑い続ける悪魔将軍は、何かを思い出したように、拳で手の平をポンと叩いた。
「あ、そうだ! ボクのことは、アクマショーグンプペってよんでね! いま、ゼネラルさまはね、チジョウカイでカツドウするためにヒツヨウな、デヴィルエナジーをためてるんだよー! だから、おまえは、ボクがアイテしてあげるー! ってゆーか、ボクがころしてあげるー!」
無邪気にはしゃぐ悪魔将軍プペに、キン肉マンルージュは言葉を発することなく、静かに歩み寄る。そして悪魔将軍プペの目の前にまでくると、目だけを動かして悪魔将軍プペを見上げ、睨みつめる。
「悪魔将軍プペ……わたしは殺されたりはしない……あなたはこのわたしが、絶対に倒しマッスル!」
笑い続けていた悪魔将軍プペは、ぴたりと動きを止め、キン肉マンルージュを見下ろす。そして、目の光が失われた仮面が、キン肉マンルージュを睨み返した。
「あれぇ? さっきまでオクビョウなショウドウブツみたいに、ガタブルふるえていたのに、きゅうにツヨキになったねー。なんか、ヘンなスイッチはいっちゃったー? ナマイキスイッチがはいっちゃったー?」
「入ったよ、スイッチ……平和を守る、正義のスイッチ!」
キン肉マンルージュは、ばっと顔を上げ、凛とした顔を悪魔将軍に向ける。
「臆病……確かに、ずっと臆病風に吹かれてたよ……今だって、本当は怖い……凄く怖いんだよ……でも! でもね! わたしは守護天使! 悪は見逃せないッスル! どんなに強大で絶望的な相手でも、キン肉マンルージュは、いつだって全力勝負だ!」
キン肉マンルージュの全身が、薄っすらとピンク色に輝く。そして、キン肉マンルージュが内に秘めている、闘志の炎をあらわすように、ピンク色の光はゆらゆらと揺らめく。
「プペプペプペプペプペッ! わぁ、こわいー! おまえ、もえてるねー! セイシュンってやつ? シシュンキってやつ? ジツはツキのモノってやつ? ボクがスゴすぎて、おまえ、アタマがイカれちゃったみたいだねー」
悪魔将軍プペはのけ反った体勢のまま、かさかさと、後ろ向きに走り逃げた。そして自陣のコーナーポストに、かさこそと登り、その登頂部で逆さまになる。悪魔将軍プペは腕組みをしながら、額で倒立をする。
「プペプペプペプペプペッ! さぁて、さっさとゴングをならしなよー! ボク、はやくおまえをヤりたくて、たまらないよー! がまんできないよー! それに、もたもたしてていいのかな? はやくしないと、ゼネラルさま、デヴィルエナジーがたまって、カンゼンなるフッカツを、とげちゃうよー」
悪魔将軍プペの言葉を聞いて、マリは実況席に向かって、静かに言った。
「試合開始のゴング、お願いします」
悪魔将軍の登場に、呆気にとられていた実況席。マリの言葉にハッとし、急いでゴングを鳴らした。
“かーーーーーーーーーーーん!”
ひときわ大きなゴングの音が、会場中に響き渡る。
「48の殺人技のひとつ、突進型、マッスルヒップスーパーボム!」
コーナーポスト上で倒立している悪魔将軍プペの顔面めがけて、キン肉マンルージュは可愛らしいお尻を打ちつける。
“どむぅ”
激しいヒップアタックを顔面に喰らった悪魔将軍プペは、体勢を崩し、キャンパス上に投げ出される。
「もういっちょうだよ! 今度は落下型、マッスルヒップスーパーボム!」
キャンパス上に倒れこんでいる悪魔将軍プペに向かって、キン肉マンルージュはお尻を打ち下ろす。
“がぎぃぃん”
キン肉マンルージュのお尻爆弾は、悪魔将軍プペのみぞおちに着弾した。
「プペェッ!」
悪魔将軍プペの身体が、くの字に曲がる。そして、真上を向いている悪魔将軍プペの両腕、両脚が、キャンパス上にだらしなく落ちていく。
「プペプペェ、やられちゃったあー」
悪魔将軍プペは、全身をぴくぴくと痙攣させている。
「わざとらしすぎるよ、アクペちゃん」
「アクペちゃん? おまえ、ヘンなリャクしかたすんなよなー」
悪魔将軍プペは、両脚で反動をつけ、ぴょこんと起き上がった。
「アクペちゃん、ダメージなんて全然ないでしょ」
「あ、わかるー? さすがはチョージンオタクー。アクマショーグンについて、かなりディープに、しってるみたいだねー」
キン肉マンルージュは、悪魔将軍プペの身体を指差す。
「さっきのマッスルヒップスーパーボムで、顔とお腹を攻撃してみてわかったよ。アクペちゃんの鎧の中は、空っぽ。がらんどうでしょ。それでもって、アクペちゃんの本体は、頭」
「プペプペプペプペプペッ! セイカーイ! コウゲキしたときのオトで、ナカがあるのかないのか、ききわけたんだねー。カラダをコウゲキしたときは、ハンキョウしたオトー。カオをコウゲキしたときは、ナカがつまったオトー。おまえ、なかなかやるねー」
そう言うと、悪魔将軍プペは、頭の仮面を持ち上げた。そして、キン肉マンルージュに鎧の中を見せつけるように、悪魔将軍プペは仮面を持ち上げたまま、おじぎをする。
「どう? なーんにもないでしょー。おまえのいうとおり、ボクのホンタイはアタマだよー」
悪魔将軍プペは仮面を真上に放り投げ、そしてガシャンと、鎧と合体させた。
「さーて、こんどはボクのターンだよー」
悪魔将軍プペは拳を握り、両腕をキン肉マンルージュに向けて伸ばす。
「コウド0、スネークアームズ!」
悪魔将軍プペの両腕が、一瞬で大蛇に変化した。
「コウド10、ダイヤモンドファング!」
大蛇の口の中がギラギラと光りだす。そして大蛇は大口を開いた。大蛇の鋭く長い牙は、ダイヤモンドに変化した。
後書き
※メインサイト(サイト名:美少女超人キン肉マンルージュ)、他サイト(Arcadia他)でも連載中です。
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