ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~
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第32話
前書き
悟天登場
悟飯祖父ちゃんも登場
悟天が生まれてからはまるで悟林が抜けた穴を埋めるかのように賑やかになった。
孫家の末っ子として生まれた悟天はトランクスと言う幼なじみにも恵まれて伸び伸びと育ち、今ではもう4歳だ。
「お父さーん、お弁当だよ」
「お、サンキュー。悟天」
畑仕事で一区切りが付いていたのか近くの小川で手を洗っていた悟空が悟天の持ってきてくれた弁当箱を開く。
「うひゃー!美味そうだなー、頂きまーす!」
サイヤ人の悲しい特性なのか、凄い勢いで食べていき、大量の弁当の中身が瞬く間に無くなった。
「ぷはーっ!食った食った。ご馳走様ー。よーし!」
満足そうに腹を擦りながら立ち上がると、気合を入れて超サイヤ人に変身する悟空。
「お父さん修行するの?」
「ああ、何時またセルみてえな奴が現れるか分かんねえからな。時間が空いてるうちに修行しとかねえと。あん時は悟林がいたけど悟林はもういねえし、悟飯は学者さんになるために勉強しねえといけねえしな!」
本当は悟飯にも修行してもらってその強さを伸ばしてもらいたい気持ちもあるが、本人は元々学者を目指していたのだから無理強いは出来ない。
チチとの約束もあることだし。
「オラにも目標があるからな。超サイヤ人2を極めて、もっと先へ行く!」
この4年間の修行で悟空は双子が到達した変身である超サイヤ人2に自在に変身出来るようになっていた。
しかしそれはベジータも同じで、今や悟空とベジータはセルゲーム時の双子を超える戦闘力に到達している。
セルゲーム以降、時々悟天とトランクスの付き合いもあり、仕事柄カプセルコーポレーションに向かうことが多いためにベジータと対戦することもあるため、やはり畑仕事がある分段々とベジータとの実力差が縮まっていることを実感している。
悟空との実力差を更に縮めるためにベジータは更なる過酷な修行を、悟空も負けないためにピッコロに色々と無茶な要求をして畑仕事を修行となるように超重量装備でしていたりする。
「ねえ、お父さん」
「ん?何だ悟天?」
頭の中で敵…フリーザやセルのイメージをしながら修行していた悟空に悟天が声をかける。
悟空はイメージトレーニングを止めて悟天に振り返ると、悟天が何か聞きたそうにしており、悟天は少しの躊躇の後に口を開いた。
「あのね、僕の姉ちゃんってどんな人なの?」
「…おめえの姉ちゃん…か…母さんや兄ちゃんから聞いてねえのか?」
「聞いたんだけど…お母さんも兄ちゃんも辛そうだったから…」
悟天は2人の表情を見て聞けなくなってしまい、悟空に弁当を届けるついでに悟林のことを聞けたらと思ったのだろう。
2人は悟林のことを聞かれれば色々と教えてやっていたが、時折辛そうなのは知っている。
悟飯もチチも悟天が会うこともなくあの世の住人になってしまった悟林のことをたくさん知って欲しいと思うのと同時に、悟天にとって悟飯と同じくらい身近な存在になるはずだった悟林に会わせてやったことがないと言う苦しさがあったのだろう。
「そっか…悟林か…そうだなあ、強くて明るくて優しい奴だったな。母さんと同じで努力家でよ。怒らせると怖えんだ。でも…もし悟林が生きてたら、おめえはあいつのこと好きになってたと思うぞ」
明るくて優しく、母親に似てきついところはあるがきっと悟天なら悟林に懐いてくれただろう。
「そっか…ねえ、姉ちゃんってあの世にいるんでしょ?」
「ああ、そうだ。父さんより強かったあいつに超されたままあの世に逝かれちまった。」
きっと悟林のことだからあの世でも修行をしていることだろう。
セルゲームの時よりは確実に強くなっているだろうが、どこまで強くなっているのか想像つかない。
倍か、それともそれ以上か…少なくとも生者である悟空に知る権限はない。
生きていれば悟林の成長を見て追い掛けて追い抜くという事が出来る。
だが死んでしまえばそれは出来ない。
「あの世ってどうやって行くの?」
「歳食ってオラやおめえが爺ちゃんになってようやく行けるんだ。何十年も先だなあ」
「お父さんの瞬間移動でも行けないの?」
悟天からすれば悟空の瞬間移動ならあの世に行けるのではないかと想ったのだが。
「行けねえことはねえけど、駄目なんだ。あの世は死んだ奴じゃねえと行けねえ。オラが行けるのは閻魔のおっちゃんのとこと界王星までだ。ピッコロにも駄目出し喰らってるしな」
元神であるピッコロでさえあの世に干渉は許されない。
星の神よりも高位の神でなければあの世への干渉は基本的に許されない。
「ピッコロさんか…お母さんにお弁当返してくるね」
「おう、母さんにありがとなって伝えといてくれ」
修行を再開した悟空に悟天は空になった弁当箱を持って帰宅した。
そして数日後にピッコロの気を感じた悟天はこっそりと家を抜け出してピッコロの元に向かった。
「こんにちはピッコロさん、どうしたの?」
「悟天か、丁度良い。悟飯は家にいるのか?」
「うん、家で勉強してるよ」
悟飯の部屋の窓を指差しながら言う悟天にピッコロは持っていた本を悟天に差し出す。
「そうか、ならばこの本を悟飯に返してやってくれ。デンデが借りていた物だ。」
「分かった」
少し大きめの…図鑑だろうか?
ピッコロからそれを預かると、悟天は口を開いた。
「ねえピッコロさん」
「何だ?」
「あの…その…」
「どうした?言ってみろ」
高圧的な口調であっても決して悟天は怖がることはない。
ピッコロは兄と写真でしか知らない姉の師匠で、自分達のことを大切に思っていることを知っているからだ。
「すぐにあの世に行くって…本当に出来ないの?」
それを聞いたピッコロは表情は変わらないが驚く。
あの世は悟飯と悟天の姉である悟林がいる場所だ。
「何故あの世に行きたいんだ?」
「あのね…僕…姉ちゃんに会いたいの…お父さん達から姉ちゃんの話を聞いて…僕も会ってお話してみたいし、姉ちゃんと一緒に遊びたい…」
両親や兄から姉の話を聞く度に膨らんでいく感情。
強くて優しい姉。
出来ることなら会ってみたいと、接してみたいと思ったのだろう。
「悟天………残念だが、生きている人間があの世に行くことは出来ない。あの世というのはこの世に生きてる者が年齢を重ねてその命を終えた時にならないと行けない所だ…だが、ごく稀にお前達の姉…悟林のように幼くしてそこへ行く者もいる…」
それを聞いた悟天の顔がみるみる歪むが、悟天は涙をグッと堪えて服の袖で顔を拭った。
「……じゃあ…姉ちゃんに会えないの……?」
「……いや……いつかは悟林に会える。お前が年齢を重ねてあの世に行った時にな。」
実は死んだ人間は1日だけ現世に行くことが出来るという掟があるが、それを言うつもりはない。
悟林が現世に1日だけとは言え帰るつもりになるかは分からないし、幼い悟天を変に期待させることは出来ない。
「悟林は幼くても善行を何度も積んできた武道家だ。特別に体を与えられ、今でも修行していることだろう。お前があの世に行った時でも悟林はあの世にいるはずだ」
「本当?」
「ああ、あいつは父親の血が濃いのか強い相手との闘いを望んでいる。数多くの達人がいるあの世から去るのはお前の父親が修行をサボるのと同じくらい考えられん」
ピッコロが弟子である悟林の性格を思い出しながら不敵に笑った。
「そっか!じゃあ何時かは姉ちゃんに会えるんだ!でも僕がお爺ちゃんになったら姉ちゃん分からないんじゃないかな?」
「どうだろうな、あいつは何だかんだで勘が良い。自分の父親に似ているお前を見れば弟だと気付くかもしれん。だが、もし会えたとしても羽目を外しすぎるなよ。あいつはお前の父の強さだけではなくお前の母の気の強さも受け継いでいる。怒らせると恐ろしいことになるぞ」
「う、うん…」
それを聞いて身震いした悟天にピッコロは笑うと悟天と共に空を見上げた。
この空の向こうにいる悟林の姿を思い浮かべて。
そして話題となっている悟林は弟が生まれていることなど知る由もなく、天国を歩き回っていた。
「えーっと、この居住区のはずなんだけど…」
生前、武道家だったり戦士であった者達が暮らす天国の居住区。
ここでは生前の癖と言うべきか、天国での穏やか過ぎる生活に馴染めなかった者達が集まっているのだ。
閻魔大王に尋ねて、ある人物が暮らしている場所を訪れたのだが、全く見当たらない。
目の前に老人がおり、目当ての人物を知っているかもしれないと尋ねた。
「あの、すみません。ここに孫悟飯さんって言うお爺さんを知りませんか?」
「む?孫悟飯は儂じゃが…その道着は…」
振り返った人物がいきなり目当ての人物だったことに悟林は喜ぶ。
悟飯は悟林が着ている道着が孫の悟空が着ていた亀仙流の道着であることに気付く。
「この道着はお父さんとお揃いなんだ。初めまして、曾お祖父さん。私は孫悟空の娘、孫悟林です」
一礼しながら言うと悟飯は硬直した。
悟空の娘、つまり目の前の少女は自分の曾孫なのだ。
「悟空の娘…つまり儂の曾孫か…!」
「そうだよ、因みにお母さんは牛魔王お祖父ちゃんの子供なんだ」
「牛魔王の娘!?」
悟飯は悟空が兄弟弟子の牛魔王の娘と結婚し、子供を授かったことに驚きながらも喜んだ。
「後、私に双子の弟がいるんだけど、名前は曾お祖父ちゃんの名前なんだ。」
「悟空が息子に儂の名前を…こんなに嬉しいことはないの……。遅くなったがおめでとうと悟空と牛魔王の娘に伝えておいてくれんか?」
「いやー、伝えたいのは山々だけど私も死んでるから無理だよ曾お祖父ちゃん」
「は?」
悟飯は改めて悟林の頭を見た。
頭の上には死人の証である輪があり、目の前の曾孫が死人であることを示していた。
「な、何故こんなに早く死んでしまったんじゃ!?まさか病か!?」
「うーん、話せば長くなるんだけどねぇ」
取り敢えず悟林は悟飯に今までのことを話した。
悟空がサイヤ人と言う宇宙人であり、満月を見れば大猿になる種族であること。
そしてフリーザ、人造人間…特にセルとの闘い。
悟林が悟空を超えたことも話し、そして自分のことのように喜んでくれたことを伝えると悲しそうに笑った。
あの幼かった孫が子供の成長を心から喜べる父親になれたことを喜び、そして娘をこんなに早く失ってしまった悟空に悲しみを抱いた。
「悔しいのう…本当だったらお前さんもまだまだ家族と楽しく過ごせたはずなのに…その大切な時間を…儂の孫と曾孫から奪った悪党が許せんわい…」
「……」
「じゃが、良くやった!良くぞ地球を守ってくれた…お前達は儂の誇りじゃよ」
曾孫の頭を撫でる悟飯。
それにしても髪型も顔立ちも悟空に全く似ていない。
母親に似たのだろうか?
「どうしたの曾お祖父ちゃん?」
「いや、お前さんは全然悟空に似とらんなと…母親に似たのかのう?」
「私はお父さんのお母さん…つまり、お祖母ちゃんに似てるんだよ。お父さんのお兄さん…伯父さんが言ってた」
「悟空の母親に…うーむ、残念じゃ…生きておればピチピチギャルになれたじゃろうに」
悟空の母親に似た顔立ちはとても整っており、生きて成長していれば美人になっただろうと悟飯は改めて惜しいと思った。
悟林は流石、亀仙人の一番弟子だと苦笑する。
「そう言えば悟空に兄がいたのか?」
「そうだけど、ただの悪党だったからお父さん達がやっつけたよ。お父さんに全然似てないし…多分、お父さんも忘れてるんじゃないの?まあ、伯父さんなんてどうでもいいけど」
「う、うむ…」
嫌そうに顔を顰める悟林に悟飯はこの話題を止めて別の話題をすることにした。
悟林が悟空と過ごした思い出のことを。
後書き
この作品の悟空とベジータのブウ編での力関係はほぼ互角です。
悟飯祖父ちゃんの五行山はアニオリなので、原作では会っていないことになっています。
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