おっちょこちょいのかよちゃん
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186 動き始める帝王
前書き
《前回》
アンヌ王妃や丸岡によって倒されかけたさりや長山達だったが、テレーズの宝剣の防御によって護符や長山の奪取は回避される。そして再起したさりは護符で本部守備班を招集させ、アンヌ王妃を撃破し、丸岡を捕え、その場に現れたフローレンスによって回収された。その報告を受けたすみ子やかよ子達は落ち着いて次へと進む!!
戦争を正義とする世界の本部。レーニンの元に赤軍の長・重信房子が異能の能力が出せる機械を持って来た。
「お待たせいたしました、レーニン様」
「ありがとう」
(こいつ・・・、この機械で何をする気だ?)
取り込まれた少年、杉山さとしは不可解に感じた。
「あの偽物の道具で私の身体を封じおって・・・。繋ぎとしてこの力を吸収するか・・・」
レーニンの身体に機械が吸い込まれる。
「これで『あの者』達と同じような能力が持てる。それにこの小僧も取り込んでいる為に一部の能力もさらに強くなるはずだ」
「それは良かったですね」
「だが、幾度も連中はしくじりおって・・・。全く不甲斐ない奴等だ」
「は、はい・・・」
(こいつ、『あの高校生』みてえになったって事か・・・!!)
「では、状況を確認しよう」
レーニンは別室に移動し、ある場所に地図のような物が映像の如く張り出されている部屋へと向かった。
「ところで、護符の奪取に派遣させた貴様の徒である丸岡修の様子がおかしいぞ。奴は本部へと向かっている。重信房子、貴様のその通信の道具をこの台に置くのだ」
「はい」
房子はトランシーバーを映像の下にある白い台に乗せた。丸岡修の様子が映し出された。
「こ、これは!?」
丸岡はとある女性によって担がれている。
「あれは敵の世界の長の一人らしいな」
「敵の世界の長ですって!?」
「ああ、奴の能力は非常に強力だ。それを打ち破れるのは殆どおらん。非常に不愉快な女だ。協力者として杖、護符、杯の所有者はじめ、多くの『向こうの世界の人間』を派遣させているだけでも厄介だが、己まで前線に出おって」
レーニンは動き出す。
「おい、まさか、行くというのか?」
もう一人の声、「杉山さとし」が聞く。
「ああ、それに赤軍の僕ども二人も捉えられていると聞くからな。動かねばなるまい・・・ん?」
レーニンの姿に異変が起こる。そして杉山さとしの姿になった。
「ここは俺が行くよ。そうしねえと面白くならねえからな」
「お前は・・・」
「貴様、また勝手に出おって!!」
「それに、俺にはあいつらに世話になった礼もしてえんだよ」
「礼だと?」
「ああ。それにまだお前は本格的に動けねえ」
「そうか、まあ、監視社会にソ連を創り上げた私だから遠隔で攻撃する事も可能だが、それでやろう」
レーニンは己の意志を丸岡修に繋げた。
フローレンスは丸岡を本部へと護送していく。
(しばらくこの男は起きませんから、足立正生と吉村和江と同じく個室監禁に・・・)
その時、丸岡は急に起きた。
『丸岡修、聞こえるか?レーニンだ。今は女に気付かれるといかんし、この声は貴様にしか聴こえん。喋ってはならぬぞ。今は敵の本部へとわざと連れて行かれるのだ。そして政治委員の足立正生と吉村和江を救出するのだ』
(了解・・・)
丸岡は無言で返事した。その際、丸岡は認識術を己に寝ているとフローレンスに認識させた。
「・・・まさか、起きてますか?」
フローレンスは仮に起きても狸寝入りで誤魔化すだろうと考えていた。
「起きていますのですね、そうでしょう?丸岡修さん。貴方の認識術は見破られていますよ」
フローレンスはそれでもあえて丸岡を本部へ連れて行った。フローレンスは瞬間移動の如く本部へと戻った。そして建物内のある個室へと入る。
「ここに入れておきましょう・・・」
フローレンスは丸岡をベッドに置いた後、部屋を去った。
(かかった・・・!!)
丸岡は認識術を行使する。出入口の扉をすり抜けられると認識させて扉を抜けた。
「やはり、わざとここへ連れて行かれます事を図っていましたか」
すぐ前にフローレンスが待ち伏せしていたのだった。
「ああ、そうだよ。確かに俺の術はてめえに通用しねえ。だが・・・」
丸岡はそれでもにやりと笑う。
「その術を俺自身にかける事は無効にならねえよな?」
丸岡は己に認識術を掛ける。すぐ目の前に囚われている二人がいて、彼らに会いに行けるという認識を自分に掛けた。
「な・・・!!」
丸岡はいつの間にか吉村と足立の部屋へと駆け込んだ。
「足立、吉村、無事だったか」
「ええ」
「逃げるぞ」
丸岡は認識術で先に見える廊下がすぐにレーニンや房子達のいる所に繋がるという認識を立てた。
「待ちなさい!」
フローレンスが追う。
『丸岡修一人の力だけではないぞ』
別の声が聞こえた。
「な、誰ですか!?その声は!?どこにいますのですか!?それとも別の場所から遠隔して話していますのですか!?」
『鋭いな。いかにもその通りだ。平和を司る世界の主の一人よ。私の力を奴等にも一部与えているのだ』
「となりますと、貴方は戦争を正義とします世界の長ですわね。名は確かレーニンといいます・・・」
『そうだ、そちらが預かっているという足立正生と吉村和江は返却させていただく』
丸岡、足立、そして吉村が姿を消す。フローレンスが阻止を試みるも何らかの眩しい光が放たれ、フローレンスに目潰しを喰らわせた。
(しまった、あの者が動かれますなんて、しかし・・・)
フローレンスは一つの事が引っ掛かった。開けられない目を閉じたまま敵の世界の帝王に聞く。
「貴方は偽物の護符、杖、杯で動けなくなっています筈です。それにあの機械も偽物の道具の作用で不具合も生じますようになっています筈です。なぜ、動けますのですか!?」
『それは・・・、俺が協力したからだよ』
レーニンの声が少年の声に変わった。
「その声は・・・!!」
フローレンスは驚愕した。そんな事があっていいのか。招集した者の内に一人裏切り者が出てきた事が。暫くしてフローレンスはやっと目が開けられるようになった時には赤軍の人間は姿を消していた。
戦争を正義とする世界の本部。レーニンと房子の元に丸岡と政治委員の足立、吉村が瞬間移動のごとく現れた。レーニンはトランシーバーを台から外し、房子に返した。
「修、よく戻ってこれたわね。正生、和江、無事でよかったわ」
「ええ、ご迷惑をおかけしました」
「しかし、すみません。護符を奪えず・・・」
「今はいいのよ」
房子は宥めた。
「これで赤軍の欠員が戻って来たか。これで貴様らの勢力も再び万全になるな。またあの機械を持って劣勢になっている我が世界の者共に支給するのだ」
「了解しました」
房子達は退室した。
「俺のあの一言であの女も相当ショック受けてんだろうな」
「それだけで十分だったのか?」
「ああ、それに俺にもお前達と一緒になって大将だって事を解らせてやりてえんだ」
杉山さとしは思い出す。あの日、おっちょこちょいの女子の隣に住む高校生との決闘で敗れた時を。
(俺は、臆病者なんかじゃねえ!大将になってやるんだ!それで・・・)
杉山さとしが心の奥底で何を考えているのか、これだけはレーニンでも知らなかった。
後書き
次回は・・・
「人食い鬼、ナポレオン」
藤木の救出に動き続けるかよ子達の元にまた次の刺客が立ちはだかる。かよ子達と激しい攻防になるが、相手はかなりの強敵で革命を起こした英雄から領土拡大の為に野心に溺れた者だった。その男はナポレオンといった・・・!!
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