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死んでいない

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第二章

「苦労の介があった」
「全くだね」
「報酬の額を聞いて驚いたよ」
「流石国王陛下」
「気前がいい方だ」
「色々と金遣いの荒い方だが」
 このことはフランスの誰もが知っていた、宮殿の建築に豪奢な暮らしそして戦争と彼のすることは何かと金のかかることばかりだ。
「しかしね」
「今回ばかりは感謝したいね」
「これだけの報酬を支払ってくれたから」
「嬉しいよ」
「わしはもうこれで充分だ」
 ダヴェルニエは笑ってこうも言った。
「これだけの儲けを手に入れたからな」
「これだけで一生分だね」
「一生分の稼ぎになったね」
「あのダイヤだけで」
「これまでも儲けてきたけれど」
「今回はそうね」
「そうだ、だから」
 ダヴェルニエは家族に笑って話した。
「もう後は仕事はお前達に任せてな」
「それでなんだ」
「隠居するんだ」
「そうするんだ」
「そうしよう、時々旅でもしながら」
 そのうえでというのだ。
「気楽に暮らそう、もう歳だし丁度いいな」
「それじゃあね」
「後は僕達に任せて」
「お祖父ちゃんは着楽に暮らして」
「この稼ぎで贅沢に暮らして」
「あと仕事にもかなりお金を回そう」
「ああ、いい仕事が出来て何よりだ」
 ダヴェルニエは満足していた、そうして。
 悠々自適な隠居生活に入り時々旅を楽しんだ、そのうえで家の使用人を連れてロシアを旅していた時に。
 体調を崩し床に伏せったが使用人に笑って話した。
「八十四、よく生きたな」
「そう言われますか」
「儲けたし旅も楽しめた」
 満足している顔での言葉だった。
「だったらもうここでな」
「あの、フランスに戻って」
「ははは、しかしもう身体が動かん」 
 そうなってしまったことも笑って話した。
「だからな」
「宜しいですか」
「ここで死んでもな。いい人生だった」
「そうですか」
「長生きしてよく働いて儲けられて旅も出来た」
「だからですか」
「商売の方も息子や孫達がよくやっているし」
 後継者もいてというのだ。
「もうな」
「思い残すことはなくて」
「神の御前に行ける、ではな」
 使用人に最後にこう言ってだった。 
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