| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

イベリス

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十四話 中間テストの結果その八

「大事なことは」
「劣等感にですか」
「そうです、克服しようとすることはプラスになりますが」
「圧し潰されるとですか」
「よくありません、駄目と思えば」
 速水はその駄目なことも話した。
「自分はその劣等感を乗り越えられない」
「そう思えばですか」
「その時は忘れることです」
「劣等感を」
「そうです、それが大事です」
「そうなんですね」
「劣等感は克服出来ればいいのですが」
 それでもというのだ。
「圧し潰されてはならないので」
「克服出来ないと思えば」
「その時は忘れてです」
「そうしてですか」
「もう劣等感を意識せず努力することです」
「忘れてですね」
「そうです、もうです」
 それこそというのだ。
「意識しないで」
「努力することですね」
「さもないと人格が歪んだりしますし駄目だと思って自殺もです」
「したりしますか」
「そうした怖いものでもあるので」
 それでというのだ。
「忘れることもです」
「大事なんですね」
「時として」
「そうですか」
「憎しみもです」
 この感情もというのだ。
「あまりにも強いですと」
「圧し潰してきます」
「それに心を支配されますと」
 憎しみ、それにというのだ。
「復讐鬼になります」
「創作の世界に出て来る様な」
「歴史で言うと伍子胥ですね」
 中国春秋時代のこの人物の名を出した。
「彼は父と兄を殺され仇を討たんとしていました」
「その人小説で読んだことがあります」
 咲はここから彼の名前を知っていた。
「それで仇の楚王が死んで」
「それで終わりかと思えばでしたね」
「楚に攻め込んだ時に」
 まさにその時にだったのだ。
「楚王の墓を暴きましたね」
「そして死体を鞭打ちましたね」
「そうでしたね」
 このことから死体に鞭打つという言葉が生まれた、伍子胥の憎悪は相手が死のうが消えなかったのである。
「あんまりですね」
「そうしてまだ復讐を考えていましたね」
「今度は新しい楚王を殺そうとしましたね」
「それは他の国が楚の援軍に出て出来ませんでしたが」
「ああして徹底的に復讐をして」
「彼はどうなったか」
 その伍子胥はとだ、速水は咲に話した。
「一体」
「自分の主に自殺させられてますね」
「そうでしたね」
「疑われて」
「そして死体は袋に入れられてです」
 このことは史記にある。
「お墓のないままです」
「捨てられていますね」
「そうなっています」
「悲惨な結末でした、復讐鬼はです」
 人間そうなると、というのだ。
「もうです」
「その末路は悲惨ですか」
「憎しみは憎しみを呼び」 
 そしてというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧