冥王来訪
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異界に臨む
帰郷 その3
休憩室に場所を移し、秘密計画に関する話が始まった
大臣と呼ばれている男が口を開いた
「中共での話は聞かせてもらった。だいぶ暴れたそうじゃないか」
出されたコーヒーを飲みながら、マサキは、頷いた
「実は今回の作戦には、ソ連が秘密作戦を行うという話を聞いてね。
ハイヴに突入した君に聞きたい。早速だが、胸襟を開陳したまえ」
カップを置くと、マサキは、語り始めた
「貴様らの資料を見せてもらったが、戦闘経験から言うと、あの化け物共に到底人間と同様の思考能力が備わっているとは思えない」
「意思疎通が出来るとかいう、学者は気が狂ってるとしか思えん。奴らはまるで誘蛾灯に寄る真夏の虫のように群れてきて襲ってくる」
遠くにあったガラス製の灰皿を引き寄せる
「もし意思があるなら逃げるか、別な行動を示すはずだ」
包み紙を開け、タバコを取り出し、火を付ける
「それに、なぜソ連は核攻撃をしない。ミンスクぐらいなら仮に核で焼いてもソ連経済に影響はあると思えないが」
男はマサキの発言に唖然とした様子であった
目を閉じて、深くタバコを吸うと、静かに語った
「西側が見ている目の前で、そのような暴挙には出られんのだろう。ウクライナすら何時まで持つか分からん状態だ」
目の前にある灰皿にタバコを置いて、続ける
「ましてや、大規模な援助を米国に頼っているソ連がそんなことをしてみろ。今度の作戦はおそらくご破算になりかねん」
(たしか、ソ連は元の世界でも穀物を500万トン弱を輸入していたな……。戦時下となれば、恐らくその割合はかなりの物になっているはず)
「そこでだが、その弱り切ったソ連の中で形勢逆転の秘策があってな……」
英語で書かれた資料と共に、翻訳された文書が渡される
報告書には太字で、こう記されていた
"UN:Alternative3 commences"
_国連、オルタネイティブ3計画始動_
新しいたばこの箱を開けながら、男は語った
「これは米国務省経由で我が国に齎された資料だが、大本はおそらくハバロフスク遷都の際に持ち出されたものらしい」
『ESP発現体』
マサキは、文中にある、怪しげな言葉に興味を引いた
「その資料にある通り、ソ連では思考を透視できる人間を作る計画が推進中だ
なんでも超能力者を人工的に育てて、BETAとの意思疎通をとり、彼らの意図をくみ取ろうという計画だそうだ」
大臣は彼の方を向いた
「大変な苦労を掛けるが、君にはこの作戦を通じてソ連の秘密計画を粉砕してほしい」
黙って聞いていたマサキは、答え始めた
「今の発言は、どういう意図があってだ……」
深刻な表情をした大臣は、彼へ返答をする
「仮にソ連に思考を透視出来る兵士の量産が実現してみろ。それだけで我が国や、西側社会にとって危険だ。この混乱に乗じて、禍根を断ってほしい」
ゆっくりと新しいタバコに火を付ける
「つまり、ソ連領内で、破壊工作をしろと言う事か」
タバコを吹かしながら、男は答える
「ああ、そうだ」
彼は、大臣を睨んだ
「ほう。別に構わないが、それ相応の見返りは必要だな。
大体、危険が大きすぎる。それにこんな《仕事》は、あんたらの役目だろう
もし捕まってみろ。間違いなく死ぬぞ。
そしてゼオライマーも奴らの手に渡る。
俺はそんな馬鹿な作戦には、ただでは乗らん」
彼は机にあるたばこをとって、吸い始める
「少なくとも時間があるはずだ。よく考えてからにしてほしい。
俺はそれまでは動かんぞ」
後ろ手で手を組み、椅子に寄り掛かる
「見通しが甘すぎる。まあ、ハイヴを吹き飛ばすぐらいなら考えてやっても良い」
机にある資料をB4の茶封筒に、かき集める
「時間が無いからよく理解できんが、この資料は全部頂いていくぞ」
彼は、たばこをもみ消し、立ち上がる
「用件は済んだのか。じゃあ、次の場所に行かせてもらうぞ」
そしてドアを開けると、マサキは、去っていった
後書き
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