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餓鬼には何もいらない

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第一章

                餓鬼には何もいらない
 洋介が百田家の夫婦の家に仕事の休憩の合間に来た時にはもうだった。
 彼の親戚達が皆集まっていた、そこには彼の両親である文太と由里子もいた、父は息子が来ると彼に言った。
「今からはじまるところだ」
「一体何をするんだよ」
「二人共明日帰って来るけれどな」
 この家にというのだ。
「釈放されてな」
「その前にやるんだな」
「この家にあるもの全部売り飛ばすか俺達が持って帰る」
 そうするというのだ。
「そしてこの家には何もなくすんだ」
「なくすって全部か」
「テレビも冷蔵庫も洗濯機もな」
「何もかもか」
「クーラーも暖房器具もだ」
 こうしたものもというのだ。
「服も歯磨きも洗剤もだ」
「本当に家にあるもの全部売るんだな」
「それか持って帰る、ベッドも絨毯もだ」 
 そうしたものもというのだ。
「車も自転車もな」
「それじゃあ二人共生活出来ないだろ」
「餓鬼には情けは無用だと言っただろ」 
 文太は息子に強い声で話した。
「あんまりにも浅ましくて卑しい奴等だからな」
「ああしたことをしてきたからか」
「もう一切な」
 それこそというのだ。
「情けは無用でだ」
「一切か」
「だから家にあるものは全部そうしてな」
「どん底に落とすんだな」
「若しそこから這い上がったらな」
 それが出来たならというのだ。
「人間に戻っている」
「そういうことか」
「そうだ、奴らの携帯の解約手続きもした」
「本人達じゃなくても出来るか」
「禁治産者だからな」 
 そうなったからだというのだ。
「本家さんが後見人になったからな」
「それでか」
「縁は切ったが」 
 それでもというのだ。
「そうなったからな」
「だからか」
「本家さんもそうするって決めた」
「二人から何もかもを取り上げるか」
「そうする、じゃあいいな」
「今から全部売ってか」
「二人の家に何もなくさせるぞ」
 こう言ってだった、文太は他の親戚達と共にだった。
 家の全てのものを売って自分達が持って帰る様にした、すぐに業者の人が来てだった。
 テレビや冷蔵庫を持って行った、車も他のものもだった。
 売って家の中を完全にがらんどうにした、だがここで。 
 夫婦の寝室にカーテンがあった、文太はそれを見て言った。
「これも売るか」
「本当に全部取り上げるんだな」
「あいつ等はふわりを捨てて笑っていて育児放棄までしたんだ」
「そうした外道だからか」
「餓鬼だからな」
 それ故にというのだ。
「もう人間じゃなくなっているからな」
「徹底的に取り上げるんだな」
「布施餓鬼なんかするな」 
 文太は厳しい顔で言った。
「餓鬼になったまでを考えるとな」
「助けるに値しないか」
「それどころかだ」 
 助けるどころかというのだ。
「こうして徹底的にだ」
「報いを与えてやるんだな」
「そしてだ」 
 そのうえでというのだ。
「奴等を徹底的に苦しめてやるんだ」
「餓鬼は苦しめてやるんだな」
「浅ましくて卑しい外道なんだ」 
 そうした輩が餓鬼になるからだというのだ。 
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