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イベリス

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第三十四話 中間テストの結果その三

「それでもね、あと劣等感も」
「あるわよね、やっぱり」
「誰でも何かね」
「人と比べて自分はどうか」
「そう思うことがね」
「何かしらね」
「私だと」
 咲はここで自分を振り返った、そうして言った。
「体育はね」
「ああ、小山さん漫研だしね」
「元々運動するタイプじゃないでしょ」
「だからよね」
「もう全般駄目なの」
 身体を動かすそれがというのだ。
「陸上も球技も水泳もね」
「それ言ったら私胸ないし」
「私肌汚いし」
「私勉強駄目よ」
「私太ってるし」96
「やっぱり誰でもあるの?そういえば」
 咲はふと気付いて言った。
「カエサルもね」
「あの人禿だったのよね」
「それ有名よね」
「英雄だったけれどね」
「えらく髪の毛のこと気にしていて」
「言われると嫌な顔したそうね」
「それでよね」
 咲はさらに言った。
「仇名が禿の女たらし」
「凄い仇名よね」
「もう髪の毛のことが劣等感で」
「英雄でもあるのね」
「そういうのが」
「何か誰でもなのね」
 咲はあらためて思った。
「劣等感ってあるのね」
「ない人はいない」
「人間ならね」
「そういうことね」
「要するに」
「となると」
 人間誰しも劣等感がある、それなら速水にもとだ。咲は考えた。そうしたことを思いながらアルバイトにも出たが。
 咲を見てだ、速水は彼女に微笑んで言った。
「私に聞きたいことがありそうですね」
「わかりますか?」
「はい、そうしたお顔なので」
 それでというのだ。
「わかります、私のお店に来るお客様と同じお顔ですから」
「占ってもらいにですか」
「そのお顔ですから」
「そうですか、お聞きしていいですか」
「どうぞ」
 笑顔になってだ、速水は咲に答えた。
「何でも」
「実は今日学校でクラスの皆と劣等感についてお話しました」
「そうでしたか」
「人には誰でもあるって。カエサルにも」
「ローマの英雄ですね」
「あの人も」
「彼は髪の毛が薄かったです」
 速水も彼のこのことについて話した。
「そしてそのことがです」
「英雄にもあったので」
「それで、ですか」
「店長さんもかと思いまして」
「劣等感は私にもあります」
 速水は咲にこう答えた。
「師を超えたと思ったことがありません」
「お師匠さんにですか」
「はい、一度も」
「占いのですか」
「そして他のことにも」
「他の?」
「はい、このことはお話出来ませんが」
 それでもとだ、速水は咲にさらに話した。 
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