歪んだ世界の中で
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最終話 再会その二
「この世で最も素晴らしい宝だと思います」
「そしてその宝物がなんだね」
「遠井君の名前なんです」
「そうだよね。いい名前だよね」
「はい。では」
「希望があるから」
希望は前をだ。笑顔で見ながら真人に述べた。
「今日も行くよ」
「そうしましょう。あっ」
ここでだ。真人は見た。あの二人がグラウンドにいたのだ。
居川と田仲だ。見れば校庭で陸上部、居川の部活とサッカー部、田仲の部活が練習をしていた。丁度ランニング中だった。それでグラウンドを走っているのだ。
だが二人が走るのは遅くだ。肩で息をしていた。
その彼等の後ろからだ。先輩達がそれぞれ怒鳴っていた。
「おい、御前何やってんだ!」
「ずっと部活さぼってたよな!」
「その間遊んでたな!」
「何だよその様!」
面白いことに二人は部活は違えど全く同じことを言われていた。
「どうしようもない奴等だな!」
「さっさと部活辞めろ!」
「御前みたいな奴等はいらないんだよ!」
「しかも碌なことしないしな!」
彼等は罵られながら走っている。しかもだ。
二人の、そして希望達の同級生である一年生、今度二年生になる面々もだ。彼等を馬鹿にした目や冷たい目で見てこんなことを言っていた。
「ったくよ、あいつはな」
「だよな。どうしようもねえな」
「顧問にばかりへつらってな」
「自分より下だと見たらすぐに馬鹿にしてくるしな」
「で、練習には出てこないでな」
「たまに出て来たらあれだよ」
「嘘も吐くしな」
彼等も部活は違うのに居川と田仲に同じことを言っていた。
「意地も悪ければ根性も腐ってる」
「さっさと辞めればいいのにな」
「全くだよ」
こうしたことを言われていた。その有様を見て真人はこう言った。
「下らないですね」
「そうだね」
希望も真人のその言葉に小さく頷いて答えた。
「本当にね」
「下らない人達ですよ」
その居川と田仲を見てだ。真人はまた言った。
「所詮はそういう人達なのですね」
「僕はああした人達に裏切られたと思って落ち込んでたんだね」
「あの人達は本当に何でもありません」
塵芥以下だというのだ。まさに。
「遠井君にとっても世の中にとっても」
「そうだね。わかってきたことだけれどね」
「だからですね」
「うん。もうどうでもいいよ」
希望もだ。居川と田仲を完全にそう見ていた。
「ああした人達にはもう関わらないよ」
「関わることもないですね」
「下らない人達っているんだね」
「はい、います」
その通りだというのだ。真人は希望に話していく。
「あの人達がまさにそうです」
「僕は下らない人になりたくないし」
「関わりたくもないですね」
「人間として徳を積みたいよ」
「僕もです。では」
「うん、行こう」
「そうしましょう」
こうした話をして素っ気無くだ。二人は居川も田仲も見なくなった。彼等はそれぞれさぼり過ぎて無理矢理部活に連れて来られて走らされていたがもう希望にとっても真人にとってもどうでもいいことになっていた。
校舎に入ると次は。あの二人がいた。
二人は希望を見ると睨んできた。だがだった。
希望も真人もそのことに気付かない。本当に気付かなかった。
その希望にだ。野田が言ってきた。
「何よ。無視するっていうの?」
「それどういうことよ」
永田もだ。目を怒らせて彼の背に言う。こう言われてだった。
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