冥王来訪
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異界に臨む
深潭 その3
カシュガルでの戦闘は通算12時間ほどで終わった
≪ハイヴ≫と呼ばれる構造物は、地下数百メートルに渡って崩落し、巨大なクレーターへ変化していた
核攻撃隊が、新疆に入った時にはすでに遠方より視認できるほどの茸雲が上がっており、中止
通常爆撃と、近隣の基地から飛ばした航空機の近接航空支援による残党狩りへと、作戦は変更となった
ゼオライマーは爆破直後に、上空から降下しながら、周囲を攻撃し、地上50メートルの距離で空中浮揚してた
強烈な吹きおろし風が嵐のように周囲を舞い、近隣の車両や兵に降りかかる
機体から外部に向かって声が出された
「俺の仕事は終わった。あとは好きにさせてもらうぞ」
急いで4人乗りのジープがやってくる
指揮員の制服を着た人間ともう一人が立ち上がって両手を上にあげた
その場で浮遊し続けると、ジープから拡声器を取り出し、指揮員は話し始めた
「今日はいったん基地まで引き上げましょう、明日改めて指令が来るまで待ちましょう」
索敵用のサーチライトが、当たって眩しい
「良いだろう。一旦基地に引き上げる」
轟音と共に、ゼオライマーは飛び立っていった
翌日、早朝五時に起こされたマサキ達は、北京へ行くよう指示された
最初に(安全を最優先で)、陸路でウルムチまで行き、そこから複数の経由地を経て、ヘリで北京入りするという話を聞かされた時は、呆れた
ゼオライマーで直接乗り込む話をしたが、中々納得して貰えず、2時間ほど待たされた後、南苑基地なら乗付て良いとの指示があった
昼近くまで時間が掛かった事に些か不満ではあったが、承知してすぐに出発した
高度1000メートルを20キロほど低速力で北へ飛んだ後、ワープ
ワープした後、北京郊外から南苑基地に向かった
基地に近づいた瞬間、迎撃用のミサイルと数機の戦術機が上がって来た
ミサイルを回避しながら、通信で呼びかけると反応があった
敵意が無い事が判ると、戦術機部隊は下がっていく
15分ほど上空で待機させられた後、着陸許可が出た
空港に着陸するなり、司令官が陳謝してきたが、遠巻きに重火器が配置してあるのが視認できるほどの緊張状態
仮に、美久が居なかったならば、流血の事態になる寸前であった
彼らの弁によると、「予想時刻より大幅に早く」、「ソ連側の攻撃と考え」、防空体制が引かれた、というのだ
日本大使館の職員が来るまでということで、南苑に足止めされていた
迎えが来たのは、深夜2時頃
仮眠している所を叩き起されると、別室へ案内される
室内には、屈強な男達が待っており、彼らは挨拶の後、名刺を差し出して来た
おそらく職員ではなく、治安機関の関係者だろう
ほぼ全員が、拳銃を携帯しているのが、脇腹の膨らみから見て取れた
まず若いビジネスマン風の男が、ソフト帽を脱いで挨拶をすると、声をかけてきた
男は品定めをするようにマサキ達を見ている
マサキは、こう返した
「そうだ。早く休ませてくれ。周りが鬱陶しくて叶わない」
手に持った名刺を、中に着たワイシャツの胸ポケットへ乱雑に放り込む
「先ずは、この服じゃないのを用意してくれ。何時までも、着ては居られないだろう」
彼は、自身の着ている服を指差した
一度着替えてから、ずっと人民解放軍の軍服姿だ
「帰国するまでには準備します」
男は胸から手帳を出して、記録していた
その様子を見ながらマサキは、訪ねる
「で、どれ位かかるんだ」
男は顔を見上げて、続けた
「早くても船ですから1週間は待ってもらうしかありませんね」
(「この際だ、日本に行ってみるのも良いか。俺が知る日本ではないのだろうから取り込む余地があるかもしれん」)
話しかけられながら考えていたが、他に良策は無い様に思えた
米ソの超大国の考えは分からないし、何より生活習慣が違うのは疲れる
今回のように上手い具合に逃げられれば良いが、そうとは限らない
両国とも、堅牢な軍隊と強靭な防諜機関のあり、距離も遠い
脱出するまで、どの様な姦計に貶められるか、解らない
いくら無限のエネルギーといっても整備や保守もしなくてはならない
そう考えていると、男が話しかけてきた
「詳しい話は、帰国船の中でしましょう」
男が言うと、マサキは、肯いて返した
(「たしかに、何処に間者が居るのか、判らんからな」)
「良いだろう。詳しい話はあとで決めるとして、先ずは先約は守ってくれるだろうな」
彼がそう言うと、男は微笑んでいた
後書き
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