レーヴァティン

「敵はな」
「その前に、ですね」
「平泉の時と同じく逃げますね」
「そうしますね」
「逃げるのも戦でだ」
　それでとだ、英雄は報をする者達に話した。
「そしてだ」
「敵もそうしますね」
「下がれるだけ下がり」
「最後まで戦う」
「そのつもりですね」
「降れば俺はそれ以上は求めない」
　領土や命はというのだ。
「別にな、あの者達は罪は犯していない」
「だからですね」
「腹を切らせる等はしませんね」
「そうしたことは」
「一切な」
　まさにというのだ。
「そうする、しかしな」
「降らないのなら」
「あくまで、ですね」
「戦う」
「そうされますね」
「そういうことだ、ではまだ続ける」
　戦をというのだ。
「いいな」
「はい、それでは」
「その様にしていきましょう」
「これからも」
　報をする者達も応えた。
「戦が終わるまでは」
「兵を進め」
「国人達に使者を送りましょう」
「そうしていく」
　こう言って実際にだった。
　英雄はその様にしていった、そして敵はというと。
「盛岡から出てです」
「津軽に向かっているとのことです」
「そしてあの地においてです」
「決戦を挑むつもりの様です」
「津軽か、あの地は俺も知っている」
　英雄は津軽と聞いてこう言った。
「それなりにな」
「そうなのですか」
「津軽のことはご存知ですか」
「そうなのですか」
「この世界では行ったこともあるしな」
　仲間達を探し求める旅の中においてだ、彼はその中で津軽にも行ってあの地のことを知っているのである。
「起きた時はないが」
「そうなのですか」
「起きた時ではありませんか」
「その時は」
「しかしこの世界ではある」　
　こう幕臣達に話した。
「それで知っている、寒いな」
「この奥羽の中でも特に」
「陸奥と並んで」
「非常に寒いです」
「そして雪も多いです」
　幕臣達も答えた。
「それも非常に」
「そうした地ですね」
「ですから冬に進むには」
「非常に苦労します」
「そうだな、だがもう春だ」
　雪が降る冬が終わってというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「もう雪はありませんね」
「だからですね」
「進みやすいですね」
「そして程よく暖かいからな」
　気温の話もした。