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イベリス

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第三十三話 葛飾のアイスクリームその四

「凄みがあってね」
「怖さもなのね」
「三原さんもね、プロ野球の監督じゃなかったら」
 愛は咲に真顔で話した。
「総理大臣やれる様な人だったのよ」
「総理大臣って」
「だからそこまでね」
「器が大きかったの」
「清濁も表裏も全部知ってる」
「三原さんもそうだったの」
「だから怒ると洒落にならない位怖くて」
 それは水原も鶴岡もだったという、本気で怒った鶴岡に大学生だった杉浦忠が詰め寄られて一歩も退かず答えた逸話では杉浦の肝に誰もが驚いた程だ。尚これは鶴岡が杉浦だけでなく長嶋茂雄の獲得も狙っていて邪悪の権化巨人に奪われ彼が杉浦に南海に入るかどうかを詰め寄った話であるという。
「ヤクザの大親分さんでもね」
「今お話に出た」
「そんな人でも逆らえなかったそうよ」
「そんな人達だったの」
「フィクサーって当時言われたけれど」
 昭和のその頃はというのだ。
「けれどね」
「三原さん達もなの」
「そうした人達に匹敵する位ね」
「凄い人達だったの」
「そうだったのよ」
「成程ね」
「今じゃそんな人いないけれどね」
 愛は今はと答えた。
「時代が違うから」
「そうね、私もね」
「お話聞いて信じられなかったでしょ」
「ええ」
 咲もその通りだと答えた。
「やっぱりね」
「昔はそうだったのよ、それで三原さんが一番凄かった時が」
「西鉄の時なの」
「野武士野球って言ってね」
「強かったの」
「あの稲尾さんがいたりして」
「鉄腕っていう?」
 稲尾と聞いてだ、咲はすぐにこう言った。
「神様仏様」
「稲尾様ってね」
「あとバース様っていうわね」
「そこまで言われた人なのよ」
「凄いピッチャーだったのよね」
「この人もいてね」
 当時の西鉄はというのだ。
「凄く強かったのよ」
「後の西武の時よりも?」
「難しいわね」
 どっちが強いかはというのだ。
「正直言って」
「そこまでだったの」
「黄金時代の西武は凄かったわ」
 その強さたるやというのだ。
「長い間無敵だったからね」
「無敵ね」
「八十二年から九十四年でリーグ優勝十一回日本一八回よ」
「凄いわね」
「これだけ強かったから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「西鉄の時とどっちが強かったか」
「強かった時期は西武の時の方が長かったけれど」
 それでもというのだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「戦力を見たら」
「わからないのね」
「そうなの、ただ今の阪神は」
 愛は何とシリーズ十連覇を達成したこのチームの話もした、ちなみに球界はおろか日本全体を蝕んできたおぞましい邪悪巨人は二十七年連続最下位を達成している。 
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