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Fate/WizarDragonknight

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”radiant force”

「ラプラス!」

 ブライのその声に、その手に灰色の電波体が現れる。
 彼が使役する謎の生命体、ラプラス。それは、即座にその姿を変質させ、剣となる。
 ラプラスソードとなったそれを構えると同時に、美炎は駆け出す。

「だああああああああああっ!」

 振るわれる、加州清光。何度もラプラスソードと激突し、やがて引き離される。

「この前はいきなりでやられちゃったけど……今回は、そうはいかないよ!」

 そのまま、美炎とブライは打ち合う。
 何度も金属音を響かせながら、戦いは続いていく。

「まだまだああああっ!」

 横薙ぎの斬撃を、ブライは背中を大きく反らして回避。
 さらに、それでブライが目を奪われている間に、響が一気にブライへ攻め入る。

「はああああっ!」
「ッ!」

 響とブライは、同時に拳を放つ。
 響のガングニールと、ブライの紫。それぞれが激突し、衝撃が黄昏の世界に轟いていく。

「我流 空槌脚!」

 足のジョッキが伸び、そのまま響のかかと落とし。
 大岩さえも破壊するその威力は、流石のブライもまともに受けることは出来ないのだろう。ラプラスソードで流し、地面に落下させた。

「こっちも行くよ!」

 美炎の全身を、赤い炎が包んでいく。
 美炎が加州清光を振るうと同時に、炎もまた揺れ動く。

「神居!」

 美炎の主力技。これまでも多くの敵を薙ぎ払ってきたその紅蓮の刃は、悲しいかなブライには効果がない。彼は美炎の太刀筋を正確に見切り、もっとも有効なところで受け止めていく。

「甘い!」

 それどころか、ブライは反撃に転じる。
 美炎が知らない、ムーの剣術。それは、あっという間に美炎を追い詰めていく。

「美炎ちゃん!」

 だが、追い詰められていく美炎に代わって、響がブライへ挑んでいく。
 徒手空拳。ほぼ互角にも思われた戦いも一瞬で不利に転じる。
 ラプラスのリーチの長さにより、接近しかできない響は一気に地に伏せられる。

「響ちゃん! このっ!」

 逆に、ブライと同等の攻撃範囲をもつ美炎(刀使)
 だが、そうなればブライは打って変わってラプラスではなく、素手で対応する。一気に美炎の懐に入り込み、格闘技で攻めてくる。

「うぐっ!」

 剣での戦いを許さないブライ。
 さらに、連続蹴りからのブライナックルで、美炎と響を一気に薙ぎ払う。

「これ程度か……聖杯戦争の参加者共……」

 ブライはそう言って、トドメを刺そうと刃を向ける。

「マスターだのサーヴァントだの、他者の力を借りるから弱くなる……」
「え? あなたも、参加者なんじゃないの?」
「オレはキサマたちとは違う……命を賭けた戦いに、他の誰かを頼るようなことはしない」

 ブライはそう言って、右手を見せつける。
 紫の炎が溢れる手の甲。そのなかに、薄っすらとムーの紋章が見えた。

「あれって……令呪? でも……」
「オレは一人だ。誰も助けないし、誰も信じない。だからこそ、オレは強い」
「……うん。確かに、あなたは強いよ。……でも」

 それに対し、響は立ちあがりながら、胸の赤いパーツを取り外す。
 赤い結晶のような部品。それを掲げると同時に、響はもう一度スイッチを押す。
 すると。

『ダインスレイフ』

 電子音が、そのパーツより流れた。

「でも……わたしだって、負けない! 負けられない! 未来が言ってくれた、もっと多くの人と手を繋ぐために! わたしはッ! まだッ! 倒れるわけには、いかないんだッ!」

 そして響は、それを上空へ放る。
 上空で変形していくそれ。刺々しさが増していくそれは、やがて迷いなく、響の心臓部へ突き刺さる。

「うおおおおおおおおおッ!」

 白と黄のガングニールが、漆黒に染まっていく。
 白と黄色の、明るいコントラストが印象的だった武装は、黒一色に、さらにその体には、淡く黄色の光が包んでいく。形を作っていくのは、赤黒い物質。
 それは、強大な攻撃、瞬発能力を持つシンフォギア。イグナイトモジュールの黒い装備が、ブライの頭上へ躍りかかった。
 そして響の歌が、始まった。

___始まる歌 始まる鼓動___

 静かに目を開けた響。
 それに対し、ブライもまたラプラスソードを構える。

「え? 何? 何でいきなり歌ってるの?」

___響き鳴り渡れ 希望の音___

「来い……ランサー!」
「この状況、ついていけないのわたしだけ!?」

 より速度を上げた響の動き。
 だが、それでもまだブライの方が速い。

___生きる事を諦めないと___

 響の拳と、ブライの拳が激突する。
 空気を震わす振動に、高架が揺れた。

___示せ___

 響は拳を振り抜き、

___熱き夢の 幕開けを___

 解き放つ。

___爆せよ___

 そのまま伸ばした腕で、

___この 奇跡に___

 ハッケイ。

___嘘はない___

 そのまま放たれた勢いに、ブライは大きく突き飛ばされる。
 足で踏ん張ったブライ。
 美炎は、そんな響に並んだ。

「響ちゃん! わたしも!」

 美炎もまた、加州清光を携えて攻め入る。
 一つだけではなく、様々な剣術を織り交ぜた独自の剣。
 ブライもまた、ラプラスソードで美炎へ応戦した。
 幾度となく鳴り渡る刃の音。
 その音もまた音楽として、響は唄い続けた。

____その手は何を掴むためにある?___

 それに、響の体術も加わる。
 だが、ラプラスソードを振るうブライは、二人を圧倒する。
 一太刀で美炎と響の二人をまとめて薙ぎ払った。

___たぶん待つだけじゃ叶わない___

 さらに、ブライが投影したラプラスソード。それは回転しながら電波体ラプラスとなり、響へその刃を突き立てていく。

___その手は何を守る為にある?___
「危ない!」

 響の盾となった美炎は、ラプラスを上空へ弾き返す。
 すると、ラプラスは美炎を先に排除すべき敵と見定めた。

___伝う 熱は 明日を 輝かす種火に___
「響さん! こっちは私が!」

 美炎へ、響は相槌を打つ。
 ラプラスの刃と加州清光が響き合う一方で、響はブライとの格闘戦にもつれ込んだ。

___さあ新時代へ銃爪(ひきがね)を引こう___
「はあっ!」

 美炎の閃き。それは、ラプラスの反物質の体をも大きくのけ反らせた。
 さらに、続けざまの斬撃とともに、回転蹴り。それは、どんどんラプラスへの攻撃を重ねていく。

___伝説の未来へと___
「カウントダウンッ!」

 一方の、拳へ鋭い歌声を乗せた響。
 それは、ブライの蹴りを弾き。そのまま体を殴り飛ばす。

___羽撃(はばた)きは一人じゃない___
「ッ……」

 舌打ちをしたブライは、バク転で響から離れていく。
 着地と同時に、ブライは紫の拳を発射した。

「響ちゃん!」

 だが、ラプラスとの戦闘を切り上げた美炎が、響の頭上から割り込む。

「神居!」

 炎の刃が、一気にブライナックルを切り落とす。
 響は手短に「ありがとッ!」と礼を言い、歌を続ける。

___過去を 超えた 先に___
「邪魔だ!」

 怒りの表情を見せたブライが、掌底で美炎を叩く。さらに、地面をなぞった拳の波が、一気に美炎を襲った。
 加州清光を弾かれ、打つ手のない美炎は、そのままブライの連撃の前に膝を折った。

___創るべき歴史が 咲き燃えてる___

 そのまま倒れる美炎。

「集中力切れた……ごめん、響ちゃん!」
「へいきへっちゃら! だったら後は、わたしに任せて!」

 響は自らの拳を突き合わせる。
 そして。

___絆 心 一つに束ね___

 イグナイトの爆発的なエネルギーが、ブライへ攻め立てる。
 ブライは紫の拳を放つ。飛行能力を有するそれは、跳び上がった響を狙って放たれた。

___響き鳴り渡れ希望の音___

 だが、響は人知を超えた運動能力でその全てを蹴り飛ばす。
 爆発していくブライナックル。それは、響の姿を爆炎により覆い隠すほどだった。

___「信ず事を諦めない」と___
「チッ」

 ブライは一足先に、結果を理解した。
 足を前もって回転させ、接近した響へかかと上げで反撃。響の拳と相打ちとなる。

___唄え 可能性に ゼロはない___
「チッ……ラプラス!」

 ブライの命令に、ラプラスが再び宙を舞う。
 だが、それがブライの手に届くことはない。
 孤高の刃は、持ち主に届くよりも先に蹴り弾かれる。
 弾き飛ばされていくラプラスソードに、ブライは舌打ちした。
 さらに、響は駆ける。
 同時に、ブライの拳も更なる紫の光が集中していく。

___飛べよ この 奇跡に___
「ブライナックル!」
「光あれええええええええええええええええええッ!」

 黒と紫。
 近しい、だけれども対局。
 二つの拳は、それぞれのエネルギーを互いへ放射。

「あああああああああああああああああああッ!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 そして。

「うわわッ!?」
「グッ……!?」

 暴発。

 響のガングニールはイグナイトごと解除され、その生身を地面に転がすこととなった。

「響ちゃん! 大丈夫?」
「へ、へいきへっちゃら……」

 一方、ブライもまた変身を解除し、ソロの姿で膝を折ることとなった。

「バカな……有り得ん……!」

 ソロは響を恨めしい目で睨んだ。

「キサマたちに……ムーの力が……!」
「違うよ……」

 美炎の肩を借りながら、響は言った。

「私は……ムーを、恨んではいないよ。そりゃ、あの時は他に選択肢もなかったし、私がムーの仇みたいにはなっちゃったけど……でも……」

 響は、静かにソロへ手を伸ばした。

「わたしは、ソロ。あなたとも手を繋ぎたい」
「キサマがどう思おうと関係ない……言ったはずだ。今のお前を倒さなければ、オレはムーの誇りを取り戻せないと」

 ソロはそう言いながら、響へ背を向ける。
 足を引きずりながらも、そのままその場を去ろうとしていた。

「覚えていろ。ランサー。キサマは必ず、オレが倒す。その時まで、その命は取っておけ」
「待って!」

 思わず、美炎は呼びかける。
 足を止め、背を向けたままのソロへ、美炎は続けた。

「どうして……どうして、コヒメを狙うの?」
「……」

 だが、美炎への返答は、無言の返答だった。
 彼は静かに振り向きながら。

「あの荒魂は……鍵だ」
「鍵?」

 ソロは静かに美炎を、そして響を睨んだ。

「……古来のムーの敵……神が産み落とした、毒蛇のな」
「毒蛇?」

 ソロは頷いた。

「キサマたちも、名前くらい聞いたことあるだろう。この国にも伝わる邪悪……ヤマタノオロチ」
「え!? それって……」

 ついさっき、コヒメが見ていた本の蛇。
 絵本に描かれていたイラスト。子供向けにデフォルトされていながらも、不気味さを感じさせたものが、脳裏に蘇る。
 ソロは続けた。

「かつて、ムーの敵としてこの世界を破壊した大荒魂。奴が、この見滝原で蘇ろうとしている」
「え?」

 ソロの言葉に、美炎は耳を疑った。

「この世界を破壊した大荒魂? でも、荒魂が現れたのって、そんなに昔だったっけ?」

 美炎も、荒魂について、それほど詳しく知っているわけではない。
 だが、荒魂と、それが生まれた原因である御刀の歴史は、五百年も経っていないというのは間違いないはずであった。
 ソロは鼻を鳴らす。

「御刀……キサマたちが使う、その剣を生み出すためには、同時に荒魂も生み出すらしいな」
「うん……」

 美炎は、加州清光を掲げる。

「珠鋼って金属から御刀を精製すると、どうしても荒魂が生まれてしまうってのは、わたしでも分かるけど……」
「原初の荒魂……御刀が作られるよりもはるか前の荒魂だ。この見滝原は、元々封印の地脈が強い土地だ。あの怪物は、出雲で退治された後、ムー信仰が深い民族がここに封印した。見滝原の八か所で、奴の封印を司る要石が設置されていた。だが、キサマと戦ったあの場所を含め、すでに六ケ所の封印が剥がされている」
「封印?」
「セイバーのマスター。キサマと最初に戦った、あの隠世だ」

 その時、美炎は思い出した。
 セイバーのサーヴァント、煉獄杏寿郎。彼と出会った、神社の形をした場所を。

「あの場所にあった、要石。そして、地下深くにある要石もまた、フェイカーに壊されたらしい。これで、残る封印は六つだ」
「フェイカー?」

 その一単語に、響が強く反応した。

「フェイカーってまさか……あの、蒼い仮面を付けた人?」
「キサマも知っていたか、ランサー」

 ソロは、口を歪めさせながら、

「奴は、ヤマタノオロチの復活を企んでいる。ムーの敵を手招くなら、奴はオレの敵だ!」
「フェイカーのサーヴァントってことは、トレギアだよね?」

 響が身を乗り出す。
 ソロは頷いた。

「だが、長い年月の経過で、ただ封印を破っただけでは、おそらく奴は、少なくとも完全体としては復活しないだろう。だが、大荒魂である以上、大量のノロがあれば動く」

 いくら頭がいい方ではない美炎でも、そこまで言われれば合点がいく。

「もしかして、その、フェイカーって人……それに、あなたがコヒメを狙う理由って……」
「オレは、あの荒魂の排除および、討伐。そして、フェイカーの目的は……」
「コヒメのノロを使って……大荒魂、ヤマタノオロチの復活……!」

 美炎の顔が、自然とコヒメを残してきた方向へ向く。
 一方、響は少し美炎を心配そうな顔で見たあと、ソロへ話しかけた。

「ねえ。わたしたち……えっと、この前のムーで一緒に戦った皆も、トレギアとは結構苦しめられているんだ。今、戦い合う理由もないでしょ? だったらわたしたち、一緒に手を取り合って」
「何度も言わせるな」

 響の言葉を遮って、ソロは言い放った。

「オレは、ムー以外の絆全てを否定する。他の者とは、決して馴れ合わない。キサマも……」

 ソロは、手にしたラプラスソードを響へ向ける。
 その刃は、美炎が見慣れた御刀とは全く違う趣向のデザイン。
 日本刀は、斬る他にも神具や祭具としての役割などもあるが、それは敵を徹底的に切り裂く役割しかない。

「今回は、たまたまフェイカーの方が優先というだけだ。奴を倒したら……次はランサー。キサマだ!」 
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