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歪んだ世界の中で

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第二十一話 与えられた試練その五

「そしてその壺は落としても火の中に入れても」
「割れたりしないんですか」
「ですから持ち運び等の際は安心して下さい」
「持っているだけでいいんですね」
「それに例え手許になくとも」
 そうなってもだというのだ。
「貴方が望まれれば貴方の手許に来ます」
「まさかこの壺自体が」
「そうです。意識のある壺です」
 つまりだ。この希望が今持っている壺もまた姫や千春と同じだというのだ。俗に妖怪だの精霊だの呼ばれるだ。そうした存在だというのだ。
「水の中に落としても薬は溶けませんし」
「あくまで千春ちゃんに使えばですか」
「この娘の中に入っていくのです」
「そうなんですか。そうしたものなんですか」
「そうです。では」
「やります」
 これまで通り強い声でだ。希望は姫に答えた。
「何があっても絶対に休みませんから」
「では頑張って下さい」
 姫はここでは温かい目で希望を見て告げた。そしてだった。
 希望、そして千春の周りにいる彼等もだ。陽気にこう言ってきたのだった。
「じゃあ頑張れよ」
「兄ちゃん、毎日頑張ってくれよ」
「俺達も応援するからな」
「そうしてるからな」
「うん」
 今度は一言で頷いて答える希望だった。彼等に。
「そうするからね。僕もね」
「希望、千春の為に」
 そして千春もだった。その希望の顔を見て。
 そのうえでだ。弱っているが心から感謝している顔でこう言ったのだった。
「毎日来てくれるの」
「うん、そうだよ」
「有り難う・・・・・・」
 千春は弱りながらもだ。こう希望に言った。
「千春の為にそこまで」
「いいよ。そんなこと言わなくてもね」
 笑って返す希望だった。
「じゃあ今日から早速ね」
「ええ、千春のところに来てくれて」
「毎日かけるからね」
 姫から貰ったその薬をだというのだ。
「安心してね」
「うん、それじゃあ」
「ではです」
 二人に姫がまた言ってきた。
「遠井希望さんでしたね」
「はい」
「この娘のことをお願いします」
 優しい微笑みでだ。姫は希望に告げた。
「必ず」
「そうします」
 こう話してだ。実際にその日からだった。
 希望は千春、その木に薬をふりかけた。最初は千春が隣にいる目の前でだ。
 かける、すると千春は笑顔でこう言ったのだった。
「有り難う。何かね」
「気分よくなったかな」
「少しだけれどね」
 そうなったとだ。千春は微笑んで答えた。
「これを毎日すれば」
「うん、千春ちゃんは絶対に」
「よくなるよ。だからね」
「僕頑張るから」
 絶対にと。希望は決意と共に述べた。
「毎日ね。何があっても来るから」
「毎日ね」
「うん、毎日そうするからね」
 希望は微笑んで千春に答える。そうしてだった、
 実際に彼は次の日もその次の日も千春であるその木に薬をかけていった。それは雨でも雪でもどれだけ寒くても続けられた。だが千春はというと。
「そうですか。あの人は」
「うん、精霊っていうのかな」
「心は人間でもですね」
「そうした娘なんだ」
 希望は真人にそのことを話していた。彼になら話しても問題ないからだ。 
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