僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結
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13-⑶
翌日も朝は、通常メニューだったが、こころなしかお客様は多かった。堤さんが9時半頃、来て、コーヒーを飲んでそのまま、駐車場の整理をすると言ってくれていた。10時を過ぎると、続々とお客様が増えてきた。今日は、バイトの子も朝から来てくれているので、私、舞依ちゃんと明璃ちゃんとで4人で注文を聞いたりで、光瑠には、調理場の方に入ってもらっていた。
お弁当の方は、3日間は止めていたので、何とか、切り盛り出来ているが、すぐに、戦争状態になってきていた。12時頃には、待合所の方に案内するのも、満員状態になってしまって、整理券を配って、表で待ってもらうという状態になってしまった。私は、その応対に追われてしまって、入口で頭を下げっぱなしだったのだ。そのうち、駐車場にも入りきれない車も出てきて、私は、堤さんと蒼にあきらめる人に配ってと割引券と記念品を渡しておいた。
今日も、3時の休憩時間をまわって、4時近くになっていた。武君が簡単なホットドッグをみんなに用意してくれていたので、私は、調理場で立って頬張りながら、晋さんに
「私 読みが甘かったね こんなに来て下さるなんて ごめんなさい」と、謝ると
「なに言ってるんですか 反応が良くて、バンバンザイですよ 忙しいのは、当たり前です」と、晋さんもホットドッグに手を出しながら言ってくれた。
「ミートローフもね、夜の分、少し足りないかなって思っているんです。追加で少し、仕込んでおきますわー。僕も、読み甘かったみたいです 意外と、お子さんと女の人がみんな流れてしまつて、卵のキッシュは、もうひとつだったみたい」
「そう、じゃぁ 注文を聞くときに そっちをお勧めしようか?」
「いいえ それは、無理しないで、お客様に選んでもらってください 好みの傾向も掴めますし、卵のキッシュのほうが手間かかるんです べつに、材料は無駄になりませんから 余っても」
「そう 晋さん 本当に頼りになるわ 助かる」と、お礼を言っておいた。その時、お父さんが、休憩から戻ってきて
「美鈴 鯛は、あと、15食で終わりな 夜は肉が多いので大丈夫だと思うが、昼は年配のご婦人が多かったので、思ったより、出てしまった」
「わかったわ みんなに言っておく お父さん 大丈夫? 疲れてない?」
「バカヤロウ 年寄扱いするな 厨房に立ったら、武に負けていられるかー」と、元気よく返ってきた。
再オープンの5時になって直ぐに、外車の立派な車が停まった。出てこられたのは、森下さんだった。以前勤めていたホテルのクラブで、とてもご贔屓にしてくださっていた。奥様らしき人と一緒だった。
「しずかさん 立派なお店だね 進藤君から、聞き出してな やってきたよ こっちは、ウチの恐妻君だ」
「森下様 ありがとうございます 花輪までいただきまして・・」
「なんの あんたが頑張っていると聞いてな 心配していたんだよ あのクラブから、なんにも、ワシに言わないで消えてしまったものだから 最初はな、あの進藤のバカヤロウ、何にもしゃべってくれないもんだから・・ そーしたら、お店を大きくするわ 結婚するわってな」
「ご心配おかけしてすみません ホテルに迷惑掛けるのも悪いなって 私なんて、突然居なくなる方がいいのかと・・」
「なんで しずかさんが居なくなって、あそこに行くのも、楽しみが消えたよ あぁ こちらが、ワシが大好きだって言って居た、しずかさんだ いい娘なんだよ」と、奥様に紹介してくれていた。
「初めまして 森下の家内です あの当時は主人が、帰ってくると、いつも、しずかさんに会ってきたと言いましてね 美人で、気が利いて、頭も良くてって 息子が居たら、絶対に嫁にもらうんだが・・って あそこでは、席に座ってはダメなんだけど、ワシにだけは、向かいに座ってくれて、話をちゃんと聞いてくれるんだと自慢してましたわ お会いしてみたら、やっぱりお綺麗で、お上品ですわね」
その時、清音がバイクで来てくれたのが、見えた。明璃ちゃんに書いてもらったのか、ヘルメットに派手に何かの絵が描いてあった。あの子・・。
「いいえ とんでもございません でも、森下様 わざわざ来てくださって、本当にありがとうございます どうぞ、ご案内いたします」
森下さんは鯛のポワレ、ミートローフ、卵のキッシュ、ハンバーグ、そしてクリームコロッケをオーダーしてくれたのだ。私は、そんなに・・と、思っていたのだが
「しずかさん すまんが、これを持って帰えれるか? 酒を飲みながら、食べたいんじゃ この太刀魚のカルパッチョなんか、たまらんのー」
「承知いたしました お包みいたします でも、飲み過ぎは、お身体に・・ダメですよー ほどほどにお願いしますね」
森下さんは、鯛のポワレ以外は、一口召し上がっただけだった。
「いゃぁ どれも、おいしかったよ 旨い! 家でゆっくり、味わうよ 店も順調そうだね お客さんがどんどん来るね ワシも宣伝しておくよ この味なら、太鼓判押せるしな」
「ありがとう ございます 本当にわざわざ来てくださって、それに、久々にお会いできて、嬉しかったです」
「美鈴さん 主人が褒めていたのわかりました 素敵ね これからも、がんばってね」と、奥様も言ってくださっていた。私は、車が出て見えなくなるまで、見送っていた。
その後からは、続々とお客様が来店されて・・。一息ついたのは、9時をまわっていた。最後のお客様が帰られたのは、10時半になっていた。
「みんな、ごめんね 遅くまで、でも、皆さん喜んでくださったわ 有難う 明日も、お願い」と、私は、頭を深々と下げていた。
「美鈴ネェさん アッシ等のことは気にせんでくやんでくだせぇー いっぱい入ったんで、やりがいありんすよ」と、明璃ちゃんが言って、みんなを笑わせてくれた。
光瑠が明璃ちゃんをひっぱっていって
「明璃 なんよ その言い方 もっと もう少し、 女の子らしい言い方あるでしょ」と、小言、言っていたが、私は、有難かった。
「美鈴 ごめんね 今夜 この子 無理言って・・」
「光瑠さん ウチが明璃をむりやり誘ったの ごめんなさい」と、清音が言ったが
「清音 ウチが言い出したんだよ お姉ちゃん」と、明璃ちゃんが・・
「どっちからでも いいの! 泊まらせてもらうんだから、おとなしくしてなさいよ 本当に、あんた達は・・」と、光瑠は、少し、イライラしていたみたい。多分、明璃ちゃんの思いついたら、そのまま表現するということに嫉妬みたいなものを感じているのかも知れない。
その日、ふたりは、お風呂で騒いでいた後、あがってきたら、ふたりとも揃いのタオル地のホームウェアを着て出てきた。そして、フードを被って見せた。
「ニャン ニャン」と・・・猫の耳が付いていた。
「わかったわよ 早く、寝て頂戴 明日も、あるんだから・・」と、私は、あきれていた。こんなに、仲良くなるもんだろうかと、だけど、2階に行っても、ふたりで騒いでいる様子だった。
後書き
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