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歪んだ世界の中で

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第二十話 災いの雷その十二

「ほら、姫路城の天守閣の」
「お姫様?」
「その人は何でも知ってるんだよね」
「千春達のお姫様だよ」
 所謂精霊や、若しくは妖怪と言っていい存在を治める者だというのだ。
「そうだよ」
「それだったらまさか」
「千春を助けられるっていうのね」
「うん、できるよね」
「わからない。けれどなのね」
「行ってみるよ」
 僅かでも可能性があるのならそれに賭けたい、そしてだった。 
 希望はそのうえで千春を助けたかった。それで言うのだった。
「姫路城にね」
「そうしてくれるの?」
「絶対にね。そうするから」
 希望は決意していた。何としてもだった。
 そのことを決めた。それから千春に言うのだった。
「待っててね。今すぐにでもね」
「姫路城に行くの?」
「そうするよ。今からでも」
「じゃあね」
 希望のその言葉を聞いてだった。千春は。
 力はないがそれでも今度は作ったものではない自然な笑みになってだ。こう希望に言ったのである。
「千春も行くよ」
「けれどその身体じゃ」
「大丈夫。まだ何とかなるから」
 動けるし力も使える。そうだというのだ。
「今すぐに姫路城に行こう」
「そうしてくれるんだ。千春ちゃんも」
「だって。希望が千春の為にしてくれるから」 
 それならばだというのだ。
「千春も行かないと。一緒に」
「そうするんだね。じゃあね」
 希望はその右手を差し出した。そのうえで千春に言った。
「一緒に行こう。絶対にこの手は離さないから」
「千春を守ってくれるの」
「うん、そうするからね」
 だからだ。一緒に行こうというのだ。
「姫路城にね」
「じゃあ」 
 こう話してだ。二人で姫路城に行くことにしたのだった。
 だがここでだ。家の執事やメイドがこう二人に言ってきたのだった。
「お城に行かれる前にですが」
「宜しいでしょうか」
「はい、何か」
「何かあるの?」
 千春はベッドから出ていた。白いパジャマのままだ。その彼女を希望が肩を抱いて支えている。 
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