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八条学園騒動記

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第六百四十一話 餓鬼道その十一

「それぞれの罪に応じて送られる」
「その六十四の地獄にか」
「一番罪が重いと無間地獄に堕ちる」 
 この地獄にというのだ。
「そうなる」
「極悪人が堕ちるか」
「平清盛が行ったというが」
 日本の平安末期の武士であり平家の棟梁だった人物だ、一説には白河帝のご落胤だったと言われている。
「俺はそうは思わない」
「平家物語のあの人か」
「あの人は極悪人じゃなかった」
 平家物語ではそうなっているがというのだ。
「一族と家臣に優しかった」
「そうだったのか」
「必要以上の血は求めず」 
「残酷でもなかったか」
「敵であっても子供を殺すことはなかった」
「そうした人だったか」
「だから源氏は残った」
 頼朝も義経も命は助けられたのだ。
「そしてそれが仇となったが」
「無闇に血は求めなかったか」
「そしてしっかりと政治をしてな」
 そうしてというのだ。
「日本のことも考えていた」
「そうだったか」
「だから無間地獄どころかな」
「地獄自体にもか」
「功績もあるしな」
 このことが考慮されてというのだ。
「俺はあの人は地獄にいるとは思わない」
「悪人ではなくてか」
「何でも地獄から鬼が迎えに来たそうだが」
 平家物語にはそうした場面もあるのだ。
「牛の頭と馬の頭の二匹の鬼が燃え盛る車を牽いて来てな」
「無間地獄にか」
「清盛さんを連れて行ったそうだが」
 その場面は平家の者の夢に出て来ている。
「それでもな」
「実はか」
「悪人でないし功績もあるからな」
「地獄にはいないか、あの人は」
「勿論餓鬼にもなっていない」
 今話しているそれにもというのだ。
「そこまでな」
「卑しくもないか」
「気品があり穏やかな人だったらしい」
 その実はというのだ。
「そして本当に家臣や身分の低い者にもな」
「優しかったか」
「そうだったらしい」
「そんな人は地獄に堕ちないし」
「餓鬼にもなる筈がない」
 絶対にというのだ。
「あの人が地獄に堕ちるなら」
「他の人が堕ちているか」
「頼朝さんの方がだ」
 清盛の敵である彼の方がというのだ。
「そうなる筈だ」
「そういえば日本人の間で人気がないな、あの人は」
 フランツも頼朝についてこう言った。
「それもかなり」
「敵を皆殺しにしてな、邪魔だと思ってもな」
「殺すか」
「それが身内でもな」  
 その中に木曽義仲や義経もいるのだ。
「源氏は身内で殺し合う家だったが」
「頼朝さんもか」
「敵と争うよりもな」
 その前にというのだ。
「まず身内で争う」
「そうした家だったか」
「それで頼朝さんは特にだ」
「身内を殺したか」
「平家や奥州藤原氏と戦う前にな」
 当然彼等も根絶やしにせんとしていている、ただその末裔は何とか生き残っている。 
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