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歪んだ世界の中で

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第二十話 災いの雷その八

「本当に自分以外の人もものも大嫌いって人達だから」
「そうした人達っているのね」
「残念だけれどね。ただね」
「ただ?」
「もう別れたから」
 まさにだ。決別したというのだ。
「二度と会うこともないよ」
「会わないのね」
「うん、それもないよ」
 希望は笑顔で言えた。このことを。
「あのお家には近寄ることもないから」
「それもないのね」
「あの人達は親戚中からも嫌われてるし」
 性格からくる問題であることは言うまでもない。
「だからね。もうね」
「会わないのね」
「そう。絶対にね」
 決別の中には嫌悪もあった。
「嬉しいよ」
「よかったね。親っていってもね」
「そういっても?」
「色々な人がいるのね」
「そう思うよ。いい親もいればね」
「悪い親もいるのね」
「僕の今の親はおばちゃん達だよ」
 そしてその二人はだというのだ。
「いい親だよ」
「そうだよね。とてもね」
「それでだけれど」
 希望は千春にさらに言う。
「また僕の家に来てくれるよね」
「うん、ぞの時になればね」
「待ってるからね」 
 希望は笑顔でまた千春に言った。
「その時もね」
「うん。けれどまずは」
「動物園、それに」
「植物園に行こう」
 植物園と言ったところでだ。千春は満面の笑みになった。
「あそこに行こうね」
「一緒にね」
「そうしようね」
 こうした話をしながらだった。二人で冬の水族館も楽しんだのだ。希望はこの時二人の幸せは永遠に続くと思っていた。だがその三日後の夜だった。
 この日も千春と楽しく過ごした彼は夜自分の部屋で勉強中にだ。その音を聴いたのだった。
 空で荒れ狂いそのうえで落ちる。その音を聴いてだ。
 一階に降りてテレビを観ているおばちゃん達にだ。こう言ったのだった。
「おばちゃん達大丈夫?」
「ああ、雷か」
「雷のことやな」
「うん、何か今も凄い鳴ってるけれどね」
 外から何度も何度も落ちる音が聴こえる。その音を聴きながらおばちゃんとぽぽちゃんに言うのだ。
「怖くないんだ」
「そんなの全然怖くないで」
「だって地震と違って家の中におったら当たることないんやで」
 阪神大震災だ。かつてこの街を襲った地震の話も出た。
「あの地震に比べればな」
「全然怖くないで」
「そやで。雷は全然怖くないで」
「何でもないわ」
「ああ、そうなんだ」 
 おばちゃん達の呑気とさえ思える言葉を聞いてだ。希望はほっとした。
 そしておばちゃん達が観ているテレビを観てだ。こう言ったのだった。
「ええと。その番組は」
「ああ、これな」
「今観てるんやで」
「二人共クイズ番組好きなんだ」
「ああ、好きやで」
「頭の体操になるさかいな」
 そうした理由で観ているとだ。二人は希望に答えてきた。 
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