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歪んだ世界の中で

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第二十話 災いの雷その五

「幸せみたいだよ」
「幸せって」
「だって。暖かくてお水も多くて」
 それでだというのだ。
「火も雷もなくてね。幸せだって言ってるよ」
「アマゾンって雨も凄く多いらしいけれど」
 熱帯雨林気候だ。それも当然のことだ。
「木にとっては確かに」
「アマゾンって木が多いわよね」
「うん、密林でもあるから」
 地球の酸素の何分の一かを供給もしている。そこまで木が多い場所だ。
「かなりだよ」
「その皆のところに雨が一杯降るのね」
「そういう場所だよ」
「いい場所だよね」
 千春はここでもにこりとなった。
「千春、一度アマゾンに行ってみようかな」
「えっ、アマゾンになんだ」
「アマゾン嫌いなの?」
「だって。アマゾンってピラニアいるし」
 その水槽の中の如何にも凶暴そうな彼等を見ての言葉だった。
「それに他の動物もね」
「怖いの?」
「大蛇に毒蛇が一杯いて」
 これはその通りだ。アナコンダという巨大な蛇はアマゾンの象徴にもなっている。そしてサンゴヘビという赤や黒の奇麗な外見の蛇もいる。ただしこの蛇は猛毒を持っている。
「猛獣も多いんだよ」
「どんなのがいるの?」
「ジャガーとか鰐とか」
 そうした生き物がいるというのだ。
「木の上や川の中から来てね」
「だから怖いっていうのね」
「虫だって凄く多いらしいし」
「虫嫌いなの?」
「嫌いじゃないけれど蚊とかだよ」
 熱帯の蚊、それならというのだ。
「熱病とか怖いから」
「アマゾンって希望には怖いところなの」
「緑の地獄って言われてる位だから」
 これは本当に言われていることだ。
「あまりね」
「行きたくないんだ」
「遠慮したいね。動物園ならいいけれど」
「じゃあ植物園は?」
「そこもいいね」
 希望は微笑んで千春にそうしたことはいいとした。
「じゃあ今度はね」
「動物園と植物園に行くのね」
「アマゾンは怖いけれどね」
 本物のアマゾンについてはだ。困った笑顔で答える希望だった。
「あそこはまた特別だから」
「あんな大きな鯰がいて」
 千春はまたその巨大な鯰を見た。見れば見る程巨大だ。
「他にもだと」
「何でこんなに大きいのかな」
 鯰を見ながらだ。希望も千春に答える。
「そう思うよ」
「とにかくね。今度はね」
「動物園と植物園だよね」
「違うよ。次は何処に回るの?」
「あっ、この水族館のことなんだ」
「そう。何処に行くの?」
「ううんと。そうだね」
 少し考えてからだ。希望は千春に答えた。
「瀬戸内海もアマゾンも見たしね」
「他のコーナーだよね」
「じゃあ今度は川のところに行こうかな」
「川のお魚のところ?」
「お魚だけじゃなくて生き物もいるよ」
 アマゾンではなく日本の川のそういった生き物達だというのだ。
「そういうの見に行く?」
「うん、じゃあね」
 千春も笑顔で快諾した。こうしてだった。 
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