偉そうな老人
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第一章
偉そうな老人
葛飾十三雄は俳優である、俳優として様々な役を見事に演じてみせる名優であるが彼を嫌いな者は多い。それは何故かというと。
「またこいつ偉そうに言ってるな」
「今の日本は自分達が作ったとかな」
「この年代の奴いつもこう言うよな」
「七十過ぎの奴はな」
「こういう奴を老害って言うんだよ」
「バラエティでいつも偉そうに言いやがって」
「ドラマとか映画にだけ出てろ」
こう言う者が視聴者に多かった、ドラマ等を出た彼はいつも説教それも上から目線でそれを行う様な老人であった。白髪をいつもセットをしていて丸眼鏡の奥の目は小さく一七六はある背で背筋はしっかりしていて腹は出ていない。着ている服はいつも清潔なものだ。
彼はバラエティ番組だけでなくだ、画面の外でも同じだった。
「もっとしっかりしろ」
「若いのに何やってるんだ」
「そんなのだから駄目なんだ」
「それでやっていけると思ってるのか」
「礼儀位守れ」
周りに何かと説教をしていた、だからだった。
スタッフ達も彼を嫌う者が多かった、それでだ。
彼等もだ、こう陰口を叩いた。
「引退して欲しいよな」
「ああ、芸能界からな」
「もういい歳なんだし」
「そうしてくれないかな」
「ああしてずっと言われたら困る」
「あれこれ五月蠅いしな」
「どうにかならないか」
視聴者達と同じことを思っていた、それでだ。
彼を嫌う者は多かった、しかし。
葛飾はある日都内で活動しているとあるボランティア団体に出てそのうえでそこで活動している速水碧小柄で童顔で黒髪をショートヘアにした若い女性に言った。
「犬はいるか」
「犬ですか」
「ああ、保護された犬な」
「犬は今一匹保護していますが」
それでもとだ、碧は彼に難しい顔で答えた。
「あの、まだ」
「まだ?どうしたんだ」
「ペットショップの繁殖場所から保護したばかりで」
毛はずっと切っておらずゴミや出したもので汚れて一見すると犬ではなく毛だらけの何かしかも黒い妙な塊が幾つも付いているその犬を出して話した。匂いもかなり異様だ。
「これから」
「そうか、じゃあ奇麗にしてくれるか」
葛飾はその犬を見て何でもない顔で答えた。
「そうしたらな」
「引き取ってくれますか」
「そうしていいか」
「家族に迎えてくれるなら」
それならとだ、碧は速水にすぐに答えた。
「お願いします」
「そうさせてもらうな、あと犬はその子だけか」
「はい」
碧はすぐに答えた。
「今は」
「後は猫だけか」
「五匹います」
「うちは女房が猫アレルギーだ、だから飼えないが」
それでもというのだ。
「知り合いに好きな人が多い」
「そうなんですか」
「だからな」
それでというのだ。
「紹介しておくな」
「猫もそうしてですか」
「飼い主を見付ける」
そうするというのだ。
「安心してくれ」
「わかりました、お願いします」
「そしてな」
男はさらに言った。
「また犬が来たら教えてくれ」
「わかりました、ご連絡先は」
「こっちだ」
それも渡してだった。
葛飾は犬が奇麗になったと連絡を受けるとすぐに犬を引き取りに来た、犬は雌の茶色と黒のミニチュアダッグスフントだった。
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