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イベリス

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第三十一話 男の子の食べものその五

「それでね」
「負けていられないのね」
「うん、負けたらね」
 その時はというと。
「もうね」
「言うまでもないわね」
「だから和菓子も努力して」
「洋菓子もなのね」
「作っていてね」
 そうしてというのだ。
「努力しているんだ」
「そうなのね」
「さもないと」
 本当にというのだ。
「言うまでもないから」
「そこはもうね」
「資本主義社会だとね」
 そうした経済システムの中ではというのだ。
「もういつも努力していないと」
「駄目ってことね」
「そうだよ、だからこうして学校でも」
「先生に内緒で」
「こうしたこともしているんだ」
「大変ね、お菓子屋さんも」
「大変じゃない人達なんていないと思うよ」
 咲に真顔で述べた。
「やっぱりね」
「そうなの」
「社会主義だったら別だけれど」
「ソ連とかよね」
「うん、ただああした国だと」
 社会主義国家ならというのだ。
「言うまでもないよね」
「競争がないと」
「もう皆いいもの造らないから」
「お菓子でも」
「だから美味しいものも」
 これもというのだ。
「生まれないよ」
「そうなるわね」
「いいものは出来ないしね」
「だからソ連は駄目になったのよね」
「だから僕達にとっても」
「資本主義の方がいいのね」
「社会主義よりもね。もっと言えば」
 事実彼はさらに言った。
「北朝鮮は社会主義ともね」
「言えないっていうのね」
「あそこまた別の国だよ」
 社会主義でもないというのだ、ただしこの国は社会主義国家であると自称はしている。民主主義とも共和国とも国名にある。
「世襲制で階級あるから」
「どっちも社会主義じゃないのよね」 
 咲も言った、それもどうかという顔で。
「そういったものは」
「だからスターリンでもね」
 ソ連の独裁者だった彼もというのだ。
「自分の子供を後継者にしなかったよ」
「そうよね」
「それで官僚が特権階級でも」
 所謂ノーメンクラトゥーラである。
「共産党員のね」
「それでもよね」
「階級は否定していたから」  
 このことは紛れもない事実であった。
「平等さを求めることもね」
「していたわね」
「その動きも確かにあったから」
 そのソ連にもというのだ。
「間違いなくね、けれどね」
「北朝鮮はもうはっきりと」
「定めているから、階級を」 
 社会主義で否定されているそれをだ。 
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