イベリス
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第三十一話 男の子の食べものその三
咲の言葉を受けて買って食べた、そうして口々に言った。
「あっ、確かに」
「これは美味しいわ」
「言うだけあってね」
「これはね」
「かなりいいわね」
「上品でね」
「それでいて親しみやすくて」
「いい味よね」
咲も言った。
「そうよね」
「うん、これはね」
「ええ、それじゃあね」
「全部買いましょう」
「そうしましょう」
「ここはね」
「そうしよう、あのもっとね」
咲は彼に自分から言った。
「買っていい?」
「いや、もうね」
「売り切れたのね」
「この通りね」
見れば彼の机の上は奇麗になっていた、もうそれもなかった。それで彼は咲に対してこう言ったのだった。
「悪いけれど」
「あっ、確かに」
「だから後はね」
「お店でっていうのね」
「買ってね、ちなみにうちの本店神戸にあるから」
「そうなの」
「そう、だから神戸に行っても」
それでもというのだ。
「うちの味を楽しめるよ、大阪でもね」
「神戸に本店あるの」
「うちの親父京都の本店の分家で」
それでというのだ。
「神戸や大阪もね」
「そうだったの」
「うん、それでね」
「神戸に行ってもなのね」
「それで大阪に行ってもね」
そこでもというのだ。
「楽しめる味だよ」
「そうなのね」
「本店の味を守って」
彼は咲にさらに話した。
「さらにね」
「いい味にしようとしてるの」
「そうなんだ」
実際にというのだ。
「そう思ってうちの店もね」
「頑張ってるのね」
「そうなんだ」
咲に笑顔で話した。
「それを言ったら本家も大阪店もね」
「頑張ってるのね」
「それが半月堂なんだ」
「半月堂がお店の名前なのね」
「うん、それでね」
「半月堂になのね」
「来てね、ちなみに京都の方はね」
「本店ね」
咲も応えた。
「そうね」
「それでそこがね」
「江戸時代からなのね」
「続いているんだ、ただね」
彼はこうも言った。
「江戸時代からじゃあっちじゃ馬鹿にされるそうなんだ」
「京都だと?」
「まだまだ歴史が浅いってね」
「江戸時代でしょ」
咲は彼にまさかという顔で言った。
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