ペットショップでも

「確かに」
「おもちゃを大事にしてるな」
「優しい感じで」
「まだ子供なのにな」　　　
　犬としてはというのだ。
「ほんの、けれどな」
「それでもですね」
「もうものを大事にしている」
「そのことも出来ていますね」
「そのことを見てもな」
　まさにというのだ。
「この娘はいい娘だ、この娘を家族に迎えられたらな」
「その家族はですか」
「幸せになれるぞ、ただな」
「ただ？」
「家族によるな」
　店長はここで難しい顔になって店員に話した。
「いい家族なら、この娘を家族をして迎える一家ならな」
「それならですか」
「その家は幸せになれる、けれどな」　
　店長は難しい顔のままさらに話した。
「若しもだ」
「若しも、ですか」
「いるだろ、命を粗末にする奴」
　暗い顔で話した。
「そんな一家だとな、こんな娘でもおもちゃとしか思ってないならな」
「それならですか」
「こんないい娘でも幸せに出来なくてな」　
　そうしてというのだ。
「自分達もだ」
「幸せになれないですか」
「他人を幸せに出来ない、犬でもそう出来ない奴が自分達を幸せに出来るか」
「そうなんですか」
「そうだよ、他の誰かを幸せに出来てな」
　それが出来てというのだ。
「自分も幸せに出来るんだよ」
「他の誰かをそう出来て」
「それだけのものがあってな、ましてこんないい娘をおもちゃみたいに扱うなら」
　それならというのだ。
「そうなるさ、幸せになんかなれるか」
「そうですか」
「ああ、何があってもな」　
　こう言ってだった、店長は遊んでいるふわりを温かい目で見つつ店員に話した。そしてその後でだった。
　店長は店員にこう話した。
「後でトリミングをしよう」
「お店の子達の」
「それも忘れたらいけないからな」
「そうですよね、いつも奇麗に」
「奇麗だから売れる、それにな」
「奇麗にしたらこの子達も喜びますし」
「尻尾を振って喉を鳴らしてな」
　犬も猫もそれぞれ喜ぶというのだ。
「そうなるからな」
「だからですね」
「ああ、そっちも忘れない様にしような」
「わかりました」
　店員は店長の言葉に笑顔で頷いた、そうしてだった。
　後で他の店員も入れてトリミングもした、ふわりもそうしたが彼女は尻尾を振っていた。その数日後に最初の運命偽の家族がやって来た。


ペットショップでも　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２１・１１・２７