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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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9-⑼

 私は、市役所の商工課を訪ねた。建築資金の融資を尋ねようと思っていた。対応してくれたのは、若い男の人で、言葉使いは丁寧なんだけど、どうも、経験が少なそうで、どうも、頼りなかった。

「で ナカミチさんは、商工会には加盟してないんですか?」

「はい 私は、どうも、相性が合わなくて・・」

「相性の問題なんですか 商工会に入っている方が、融資はすんなりいくんですけどね 保証の問題とか 事業主は、お父さんなんですよね あなたは、その娘さんなんですか? で、申し込むのは、あなたなんですか じゃぁ 新規開業という形となりますかねぇー 実績が全く無いんですよね そうすると、担保の審査とかありまして、遅れますよ お父さんじゃぁ駄目なんですか?」

「そうなんですけど、いろいろと事情があるんです」

「とにかく、資料をお渡ししますんで、読んでご検討ください。融資自体は、いろいろありますから・・。そのうえで、ご相談にのります」と、言って、何枚かの冊子を渡された。

 私は、何か相手にされなかったような・・とにかく、面白くなかった。不親切なとこだなって思っていた。相手も不運だったのかな。出口に向かった時、男の人に呼び止められた。

「すみません。中道さんですか」

「そうですけど・・」

「あのぉー 僕は、観光課の広瀬と申します。以前は、商工振興課に居ましてね。今の話、ちょっと小耳にはさんだもので・・ 実は、僕は、中道さんが以前お住まいになった所に、住んでいるんです。以前、三倉と名乗って大学生が訪ねてきて、中道さんの行先を探しているんだとか・・。でも、お店を復活されたんですよね」

「そうです 昨年の秋から でも、その三倉蒼って、お宅にまで行っていたんですかー その人と 今 私 婚約しています」

「そうなんだ 会えたんだ 良かった あの時の学生がねー 彼はあの時、真剣だったんだよ あー、お店の方 妻と行こうとは話しているんだが、子供も小さくてね なかなか機会がなくって・・ 僕は、お父さんとも面識があるんだよ あの店を閉める時も、力になれなくて・・ 悔いが残っていたんだ 申し訳ない」

「そんなこと気になさらないでください 父は元気にやっていますから お店の方も、小さなお子さんも来てくださっていますよ どうぞ、ご遠慮なさらないで、気楽に寄ってください」

「ありがとう ところで、今 融資の話で来てたとか」

「ええ お店を大きくしたいんで、その資金に・・でも、何か複雑みたいって言われて・・」

「そうか、お店の評判良いの聞くよ 大きくするんだ わかった、僕は、今は観光課だけど、以前は商工の方に居たから、いろいろ有利なのを調べておくよ 又、連絡する」

 私は、頭を下げて、よろしくと言って名刺を差し出した。

「美鈴さんか 店長さん 君があの時の娘さんなんだ まだ、中学をやっと卒業するときだったと思うが・・頑張ったんだ あの時から、しっかりした娘さんだと聞いていたが・・ 必ず、連絡するよ 実はね、妻と若い頃、よく、ナカミチに行った想い出のお店なんだよ」と、笑顔で送ってくれた。

 私 やっと 心が晴れていた。お父さんも、素晴らしかったんだ あの時のお店 いろんな人に愛されていたんだ・・私も、頑張らなきゃ― 
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