八条学園騒動記
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第六百三十八話 酒が進むその六
「夜にだ」
「働いて学校に行く」
「そうしている」
「そうなのね」
「これならお店も経営出来る、それに」
「それに?」
「夜は月だ」
ギルバートはこちらも話に出した。
「神聖な月の時間だ」
「ああ、イスラム教はね」
「月を尊んでいる」
「そうだったわね」
「太陽の日差しは厳しいが」
それでもというのだ。
「月の光はな」
「優しいから」
「癒してくれるということでな」
「月を尊んでいるのよね」
「イスラムでは日光が強い」
アラビアの砂漠ではだ、イスラム教が生まれた地域では。
「しかしな」
「月はね」
「非常に優しい」
「夜は涼しくて」
「優しい光だからな」
「尊んでいるのよね」
「そうだ、だからな」
このこともあってというのだ。
「礼拝の時間も夜にしてな」
「臨機応変っていうか」
「それは欠かさずだ」
「一日五回だったわね」
「ムスリムならだ」
それならというのだ。
「一日五回の礼拝は絶対だ」
「それも忘れたらいけないのね」
「だからそれはする」
夜に働いてもというのだ。
「絶対にな」
「それで夜に時間を変えてなのね」
「している」
「そうしてもいいの、イスラムだと」
「昔も今も議論になっているがな」
特にイスラムの法学者の間でだ、イスラムの教えは彼等がコーラン等を読みそうして考えて解釈していくものなのだ。
「しかしな」
「それでもなのね」
「そうしていっている、したくない人はな」
「しないのね」
「議論も続いているしな」
「そこはややこしいのね」
「しかし夜に働く人もいる」
ラマダン中にというのだ。
「そうしてだ」
「発展していっているのね」
「もう一度エウロパの軍門に降りたいか」
ギルバートはアンに問う様にして言った。
「あの国に」
「願い下げよ」
アンは食べるのを中断して即答した。
「そんなことは」
「そうだな」
「植民地になっていいかよね」
「そうだ」
「それで搾取されてね」
「奴隷とされる」
「連合は皆市民でしょ」
アンはこうも言った。
「それでね」
「奴隷じゃない」
「そうよ、支配もされないで」
「自由だ」
「自由、平等、そしてね」
「束縛もない」
「それが連合でしょ」
この国の在り方だというのだ。
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