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ヘタリア大帝国

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TURN49 騎士と海賊その一

                        TURN49  騎士と海賊
 ネルソンは日本の御所に入った。東郷や日本達と共に。
 それまでに日本や太平洋の市街や農村も見学した。そしてこう言っていた。
「多くの国の人間が肌や目の色に関係なく」
「ああ、勿論階級もない」
「インドさんのところにはカーストがありますが」
 東郷と日本がそのネルソンに応える。
「どの国も独立して対等の関係で参加している組織だからな」
「国民の方も同じです」
「貴族もいないのですね」
「ない」
 東郷が断言で答える。
「さっきも言ったが階級自体がだ」
「ないからですか」
「勿論市民の等級もない」
 エイリスの植民地にあったそれもだというのだ。
「全員同じだ」
「平等ですか」
「誰もが教育を受けられて権利が保障されている」
 東郷はこのことも話した。
「要するにどの国も主権国家になった」
「そしてそこにいる国民の権利も」
「保障される様になった。植民地ではないからな」
「最早植民地ではない」
「提督はどう思っていたんだ?植民地については」
 東郷は自分の話から思索に入ったネルソンにこう問うた。
「エイリスの国是でもある植民地については」
「反対ではないです」
 ネルソンは東郷の問いに正直に答えた。真面目な顔で。
「しかしです。植民地において行なわれていたことについては」
「反対だったか」
「植民地での貴族の腐敗は本国以上のものでした」
 女王の目が届かないからだ。必然的にそうなっていたのだ。
「そして植民地の民に階級を設けることも」
「反対だったんだな」
「女王陛下、先代のエルザ様もそうでしたが」
 二代に渡っての話になる。
「植民地のそうした状況については大規模な改革を考えておられましたが」
「難しかったか」
「先の大戦でのエイリスが受けた傷」
 それは決して軽いものではなかった。世界帝国としてのエイリスの地位は先の戦争でのダメージから揺らぎだしていたのだ。
「エルザ様はそれを癒すことに必死であられましたし」
「それで今の女王様になってもか」
「ようやく大規模な改革に取り掛かろうとした時に」
「今の戦争がはじまったんだな」
「それで今に至ります」
 ネルソンは無念そうに述べる。
「私も東方に来てです」
「そのことを知ってか」
「はい、あらためて」
 ネルソンは元々東方に縁がある。それで植民地の貴族達の腐敗は知ってはいた。だがそれでもだったのだ。
「腐敗はより進んでいました」
「それが今だったんだな」
「そうです。あのままではエイリスの植民地は全て腐敗し壊死していたでしょう」
 そこまでだったというのだ。エイリスの植民地の腐敗は。
「おそらくこの戦争が終われば」
「まあアラビアまではどちらにしてもな」
「独立していましたね」
「そうなっていただろうな」
「では今の状況は必然」
 ネルソンは言った。
「そうなります。ただ」
「それでもか」
「はい、日本の侵攻でその独立がただエイリスから独立するよりも遥かに順調に進んだと思います」 
 そうなったというのだ。
「ただ独立戦争になったりソビエトの介入を招くよりは」
「ソビエト、あの国か」
「ソビエトは全世界を共有主義にしようとしています」
 このことはエイリスでもよく認識されていた。エイリスにとっても共有主義は恐るべき敵であるのだ。同盟国であっても。 
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