レーヴァティン
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第二百二十七話 会津若松城その一
第二百二十七話 会津若松城
英雄は仲間達と共に三十万の大軍を会津若松城にまで向かわせた、そしてその城を大軍で囲んだが。
雪で覆われたその城を見てだ、彼は言った。
「城を囲んだ、後はな」
「何時でも攻められるぜよ」
当季が彼の横で笑って話した。
「それこそ」
「そうだな、しかし」
「それでもじゃな」
「城の領主に伝える」
当季に強い声で言った。
「民がまだ中にいるのならな」
「それならじゃな」
「早く城の中に出せとな、そして逃げた民はな」
その彼等はというのだ。
「決してな」
「幕府としてもじゃな」
「手を出さない」
一切というのだ。
「そのことを約束するとな」
「世界を救うならのう」
当季はここでは腕を組んで言った。
「それこそぜよ」
「民を害してはな」
「出来る筈がないぜよ」
「いつも話している通りにな」
「そしてぜよ」
「俺は戦えぬ者に武器を向ける趣味はない」
これまた一切と言うのだった。
「戦うならな」
「軍勢同士ぜよ」
「民に刃を向けるのは戦ではない」
断じて、こう言うのだった。
「決してな」
「だからじゃのう」
「それはしない」
「そのことを約束してじゃな」
「民を出させる、そして約束はな」
これはというと。
「絶対にだ」
「守らないと駄目ぜよ」
「人と人の約束もそうだが」
「幕府、政権ともなるとのう」
「そうしたものを破るとな」
そうしたことを行えばというのだ。
「信を失いな」
「誰からも相手にされなくなるぜよ」
「民の心も離れる」
その政権が約束を破るのを見ればというのだ。
「約束を平気で破る者達は民を確かに守るか」
「言うまでもないぜよ」
「自分達の都合を口実にな」
「何かあれば平気で破る」
「そうするに決まっている」
「そしてそれは誰でもわかるぜよ」
「嘘吐きは誰からも信用されない」
英雄はこの摂理を言葉に出した。
「そうなるものだ」
「その通りぜよ」
「だからな」
それ故にというのだ。
「特に政権にいるとな」
「約束を守らないとのう」
「絶対に駄目だ、だからな」
「このこともじゃのう」
「俺は守る」
城から出た民達に手出ししないという約束をすればというのだ。
「そうする」
「そうじゃな、ではな」
「領主に伝える」
この辺りの即ち会津若松城の城主にというのだ、こう言ってだった。
英雄は城の中に使者を送ってそうしてそのことを伝えさせた、すると敵の領主は暫し考えた様だが。
英雄達の前に自ら来た、領主は若い白い肌の男で剃っている髷もまだ青い感じだ。その彼が主な家臣達を連れてだった。
英雄達の前に来てだ、こう言った。
「若し約束して頂けるなら」
「それならか」
「城の中の民はです」
全てというのだ。
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