八条学園騒動記
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第六百三十六話 泉燗その十一
「そう思えるけれど」
「否定出来ないのよね」
アンにしてもだった。
「これが」
「そうよね」
「過ちを犯した」
「イコール神罰よね」
「それで受難よ」
その展開になるというのだ。
「だからね」
「受難の歴史も多いのね」
「ディアスポラとかバビロン捕囚とかね」
「エジプト虜囚もあったわね」
「もう何かとね」
「神罰が下って」
「受難があって」
それでというのだ。
「文化祭でもね」
「やたら言われるのね」
「原罪と過ちと神罰と」
「受難ね」
「それで戒律ね」
「暗い文化祭みたいね」
女生徒も話を聞いてそう思った、それもしみじみと。
「それはまた」
「だから今言ってる通りよ」
「後夜祭とかもなくて」
「もうね」
それこそというのだ。
「陰々滅々で」
「お説教受けてる感じね」
「そんなのなのよ」
「賑やかでなくて禁欲的で」
「それで楽しい催しも華やかさもないね」
「お店は?」
「ないわよ」
アンは女生徒に素直に答えた。
「そんなの」
「ないの」
「勿論劇やライブもね」
「ないのね」
「運動会も行進とか楽しい種目なくてね」
「競技だけね」
「チアリーダーもいないから」
応援のそれもというのだ。
「一切ね」
「本当に楽しみを否定してるのね」
「ユダヤ教だから」
それでというのだ。
「そうなるのよ」
「ある意味凄いわね」
「お酒どころかジュースもね」
「ないの」
「一切ね、お茶やコーヒーですら」
そうしたものまでというのだ。
「ないわよ」
「厳しいわね、それでお説教みたいなお話ばかりって」
「それと比べたら」
まさにとだ、アンは話した。
「この文化祭は天国よ、ここまでして神罰受けない?」
「ここ日本よ」
女生徒はアンの少し心配そうな声に笑顔で応えた、ユダヤ教徒が殆どいない国であるというのである。
「だからね」
「心配無用なの」
「神罰とかはね」
「じゃあこのまま」
「楽しむわね」
「最後までね」
笑顔で酒を飲んだ、酒はまだ熱いが飲めると思うとそれで嬉しかった。それで飲んでいくのだった。
泉燗 完
2021・9・16
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