アパッチ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「こうして今は」
「稼ぐんやな」
「食材のお店は焼けてるさかい」
「そっちもないか」
「ただあそこもお家はあるから」
それでというのだ。
「ものはあと少しで手に入るさかい」
「そこでやな」
「買える様にしてこ、丼やお箸もないけど」
「そっちも何とかしてやな」
「売れる様にしよな、それでうどん屋さん再開したら」
その時はというのだ。
「もうな」
「鉄くずはやな」
「取る必要はないわ」
「そやな、それまでは」
「毎晩大阪城に行って」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「鉄くず手に入れて売るか」
「そうしてこ」
「そうするしかないか」
「今はしゃあないわ」
こう夫に言ってだった。
二人で毎晩大阪城の方に行ってそこに転がっている鉄くず達を取って警官達に気をつけながら持ち去ってだった。
そして朝に店で売って儲けるということを繰り返し。
それまで取引をしていた食材の店小麦や昆布等の店が営業を再開しそういったものが手に入る様になってだった。
金が貯まるとそうしたものを買ってその辺りの木の板を削って作った箸や適当な丼を使ってそうしてだった。
うどんを売る様になった、外で粗末な屋台どころか席もない店だったが。
明日川も咲子もうどんを売っていった、そのうえで言うのだった。
「やっぱりな」
「こうしてやね」
「おうどん作って売るのがな」
このことがというのだ。
「わし等の天職やな」
「そやね」
咲子もその通りだと頷いた。
「やっぱりこれが」
「笑いに行かんと」
盗みに行くの隠語だ、鉄くずを盗みに行く時にこう言ったのだ。
「済むならな」
「それでええね」
「もうああしたことはな」
「せんでええわ、ほな」
「今はこうしてや」
「おうどん売って」
闇市の中で言うのだった。
「そしてやね」
「また店持とうな」
「そやね、お金貯めて」
「そうしていこな」
こう言ってだった。
二人でうどんを作って売っていった、やがて子供達は小学校に行く様になり店もまた建てた。そうしてだった。
二人は新たに建てたその店でも仕事を続けた、それは代々続き。
令和になって店の主、明日川の孫で髪の毛がしっかり白くなっているが彼にそっくりの顔の哲太が和風の店で客に言った。
ページ上へ戻る