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摩天楼のバースディ 

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第三章

 皆で乾杯して酒や馳走を楽しみだした、見れば確かにメニューは質素である。だがそれでもだった。
 誰もがビルの屋上今の自分達がいるその場所からマンハッタンの景色を見てそのうえで笑顔になり話をした。
「素晴らしいですね」
「ニューヨークでもこんな景色は滅多にありません」
「ここまで素晴らしい景色は」
「全くです」
「はい、ですから」
 チャーリーがここで言ってきた。
「この様にです」
「場所を選んでくれましたか」
「実はよくここに来てこの景色を楽しんでいます」
 チャーリーはニコライを抱いているリーザに答えた、赤子は母の腕の中ですやすやと気持ちよさそうに眠っている。
「そうしています」
「そうなのですか」
「はい、そして」
 チャーリーはさらに話した。
「この景色ならと思いまして」
「パーティーの場所にですか」
「提案させてもらいました」
「そうでしたl
「それでお子さんは」
 チャーリーはリーザに尋ねた。
「如何でしょうか」
「寝ています」
 見ればそうしていた、実際に。
 ニコライは寝ていた、しかし。
 ここで不意に目を覚ましてだった、そのうえで。
 夜のマンハッタンの輝きを観て楽しそうに笑った。
「ダアダア」
「喜んでくれています」
「そうなっていてくれています」
 夫婦で信者達に話した。
「ここからマンハッタンを観て」
「とても喜んでいます」
「それは何より、では来年もです」 
 チャーリーは二人の言葉を聞いて笑顔で言った。
「こちらで。です」
「息子の誕生パーティーをしてくれますか」
「そうしてくれますか」
「お二人の息子さんですから」
 だからだというのだ。
「ですから」
「そうですか、では」
「来年も」
「そしてそれからも」
 来年だけでなくというのだ。
「そうさせてもらいます」
「そうですか、では」
「宜しくお願いします」
「皆さんもそれでいいですね」
 チャーリーは他の信者達にも問うた、同じユダヤ人である彼等に。
「それで」
「粋な誕生日ですね」
「最高のパーティーですよ」
「それではですね」
「これからもです」
「やらせてもらいます」
 チャーリーも頷いた、そうしてだった。
 ニコライは成長してからもチャーリーの提供してくれたビルの屋上で自分の誕生日を祝ってもらった、そのうえで。
 成長し父の後を継いでラビになった、そうしていつもマンハッタンの街を観て笑顔になりながら仕事に励んだ、生涯そうして神に仕え信者達に尽くした。幼い頃から観ているその街にこれ以上はない親しみを感じながら。


摩天楼のバースディ   完


                 2021・3・15 
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