おっちょこちょいのかよちゃん
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172 統一と死の思想の組織
前書き
《前回》
とある町を治める女王・趙姫と交戦するかよ子達は妖怪・饕餮の姿に変化して戦う彼女に苦戦する。のり子の人形の能力で彼女の異能の能力を出す機械を探り当てる事で攻略し、彼女の機械が不具合を起こしたタイミングも狙う。だが、肝心なところで最後のチャンスを逃してしまうが、関根の刀が機械を無効化させた所でかよ子の剣に変化した杖、大野の草の石と雷の石で趙姫を撃破するのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その14
椎名歌巌 (しいな うたお)
神奈川県警所属の警察官。初登場113話。武装の能力を持つ。赤軍などのテロリスト壊滅に闘志を燃やす。イマヌエルから託された水を出現させて攻防し、時には水を干上がらせる能力を持つ水の玉を使用する。名前の元ネタやモデルは落語家の桂歌丸。好きな食べ物はかき揚げ、チャーハン。
こちら剣奪還班。徳林奏子の持つ羽衣で戦争主義の世界の本部へと移動している最中であった。三河口は以前よりもかなり激しい胸騒ぎおよび不審な音や恐怖を感じるようなにおいを感じていた。見聞の能力は見たり聞いたりのみではなく心の中の予感やにおいでも敵が近いかどうかを察知する事ができているのである。
「全く、ものすごう恐ろしい気持ちが収まらんじゃけんなあ」
三河口と同様かそれ以上の強力な見聞の能力の持ち主である鯉沢も非常に気にしていた。
「見聞の能力を持ってる人、皆そうなの?」
三河口の従姉・祝津ゆりは確認した。彼女は武装の能力を持っているが、見聞の能力は持っていない。
「はい」
濃藤や北勢田、マリエルや光江も同意見だった。
「くう~、吐き気がするくらいやな」
「マジで吐くなよ」
鯉沢に対して湘木が冗談交じりに言った。
「ああ、でも、ここにいるとめっちゃ気分悪うなるな」
「それだけ敵の本拠地に近づいてるって事だろうな」
「じゃがのう、うちらを狙ってくる奴等がすぐそばにおるんや」
「ああ、俺もそんな気がしたよ」
三河口は鯉沢の意見に共感した。
「つまり、今、どこかにその敵がいるって事ね」
ゆりは判断した。
「奏子ちゃん、皆を降ろして」
「え?あ、はい」
奏子は羽衣を降下させた。皆が降りる。
「いたよ」
政美がマフラーに備わる能力の一つである探知能力を利用して確認した。
「どこじゃ?」
「あの森の方だよ」
その時、政美が指した方角から銃声が聞こえた。三河口達を襲うと分かっていたのか見聞と武装の能力を発動させ、更に奏子の羽衣が巨大化して防いだ為に皆無傷だったが。
「こっちもぶっ放すか!」
鯉沢が銃を出して発砲した。火薬が一発飛んだがそれだけで木々が粉砕され、焼き尽くした。敵が複数人現れた。
「貴方達、何者なの?」
「俺達かあ?この世の統一を目指す黒手組だ!」
集団の中の一名が答えた。
「クロテグミ?」
「我々が目指すのはこの世の統一、それに逆らう者は死、それがモットー。貴様らのうちに丁度我が仲間を殺害した者がいるな?ガヴリロとネジョの敵、そこの娘二人、お前らは必ずここで死んでもらう!」
光江はガヴリロの名を聞いて思い出した。神戸で護符を捜しに訪れ、街を荒らした者の名であったからである。その際は返り討ちにし、ガヴリロは死亡したが。
「ねじょ?誰やったっけ?」
「ヒロシマとかいう所へ派遣させて貴様に殺された奴だ!」
「ああ、あのクソ野郎じゃったか」
鯉沢は12月に自身に起きた事を回想した。
冬の広島。鯉沢は下校中に駅前のバスロータリーで煙草をふかしていた(本来未成年の為喫煙は禁止であるが)。その時、異様な感じを覚えた。
(この気・・・!!あの時と同じや!!)
鯉沢は近所の家が全焼し、そこの居住者が親族諸共消された事件を思い出した。「あの時」とはその時である。ただ、まるっきり同じという訳ではなく、また別の気配も覚えた。
「お主か。鯉沢輝愛とかいう者は」
「へ?」
一人の男性がその場にいた。それも戦国時代の侍のような格好だった。
「なんじゃ、おんどれ?時代劇ごっこか?それとも、いつかの時代に生きた亡霊けえ?」
「ああ、嘗てはこの地で生きており、異世界から来た。元就と申す。お主のこの銃を授けるようにと上の者や厳島の神から頼まれた」
元就と名乗った男は鯉沢に一丁の銃を手渡した。
「なんや、この銃?」
「お主の父上や母上は原爆とかいう恐ろしい物を喰らった者と聞く。それの者の平和を願う為の怨みが籠った銃だ。この上のネジのような物を動かせば光線を出す状態および火薬を出したりする状態に切り替える事ができる。今、敵は近くにおる。戦えるか?」
「ああ、やったろうけんな」
鯉沢は銃を持って出陣した。その時、銃声が聞こえた。
「あっちやな!」
鯉沢は走る。そしてその「敵」と遭遇した。
「フヘへへ・・・」
「おい、おんどれ!!」
「なんだ、女?もしかして護符の持ち主か?」
「なんやそれ?んなもんあらんけん、消えろ!」
鯉沢は元就から貰った銃を発砲した。光線が放たれる。
「おおっと!」
敵の男は攻撃を避けた。
「ネジョ様にそんなもんが通用するか!」
男は返り討ちとして鯉沢に銃を向ける。
「ちい!」
鯉沢も銃で応戦する。相打ちとなり、お互いへのダメージはなかった。しかし、道路や建物にネジョの銃撃の跡ができた。
「鯉沢輝愛、もう一つの能力を使え!」
元就が現れた。
「え?おう!」
鯉沢は銃の上のダイアルを反対に回した。
「ただし、相手を狙え。周囲を狙ったらこの街は29年前の時と同じ惨状となる」
「わかった」
29年前の惨状とはこの地に原爆が投下された時の事を指していると鯉沢はすぐに理解した。相手はネジョのみ。他の周囲を犠牲にしない事が条件に鯉沢は発砲した。
(こいつもまた銃で迎撃する気やな!)
鯉沢はもう一発発砲した。一発目はネジョの銃にある程度防がれた。しかし、もう一発目はネジョを吹き飛ばす。
「な!?お、お、おおおーーー!!」
ネジョは皮膚が吹き飛ばされたような感じになり、グロテスクな見た目となった。
(これが原爆と同じような脅威、か・・・)
ネジョは息絶えると共に光となって消滅した。
「よくやったな、鯉沢輝愛」
「ああ、これで倒せたん?」
「いかにも。その銃があればお主は敵を倒す事ができる。ただし、この世の人間に向けて殺生を行った場合は儂が取り上げ、貴様は罪を犯す事になる。よく考えて使う事だ」
「ああ・・・」
元就はその場から消えた。
(ネジョかおねしょか知らんが、前にも似た事あったがあん時はここまで倒しきれんかった・・・。これでうちにもぶっ倒せるんじゃな・・・)
鯉沢は修学旅行で広島に訪れた静岡県の高校生達を思い出しながら帰った。
ゆりが指揮を取る。
「奴らは邪魔立てする気よ。戦いは避けられないわ。輝愛ちゃんにマリエルちゃん、北勢田君、先陣を取って。濃藤君、政美ちゃん、光江ちゃん、奏子ちゃん、後ろ側から皆の支援よ。湘木君、健ちゃんと私で周りを手当たり次第攻撃するわよ。健ちゃん、私と一緒に来て!」
「はい!」
全員は指示に従った。北勢田、鯉沢、マリエルが先方を取る。
「うらあ!」
鯉沢は発砲した。銃の光線で周囲を溶解する。北勢田が持っている矛で電気の力を使って機械じかけの大鬼を出した。大鬼が手から電撃を出して黒手組のメンバーを攻撃した。しかし、効果はない。
「やはり機械の能力で守ってるか」
『三人共』
政美の声が北勢田、鯉沢、マリエルの脳内に響く。
『機械をまず壊せ』
「あいよ」
「俺にできるぜ!」
北勢田は電脳の矛を振る。矛に電気が集められた。
「これで奴らの機械は使い物になれないぜ」
「おし!」
鯉沢は原子光線を発射する。黒手組のメンバー二名が光線を浴びて消滅した。
「テメエら!」
また別の黒手組メンバーが反撃に出る。しかし、どこからから砲撃が飛んできた。政美が遠距離発砲したのである。
「うおっ!」
黒手組の一人が吹き飛ばされる。
「おい、大丈夫か!?」
仲間が駆け寄る。しかし、その隙にトランプのカードの形をした兵が襲撃して来た。
「な、なんだ!?」
黒手組の仲間が銃で応戦する。しかし、倒しても倒してもまた新しいトランプ兵が出現する。
「私が出したトランプ兵は無限よ!」
マリエルが持っている本から「不思議の国のアリス」に登場するトランプ兵を召喚したのだった。トランプ兵は黒手組の仲間を蜂の巣にして葬った。
「む、別の所から敵が来とる!」
鯉沢は別方向からの敵を確認する。しかし、炎であっさりとやられた。政美が遠距離から火炎放射したのだった。そしてまた別方向から敵が近づく。しかし、湘木が斧から木の根を出して敵を絡みつけた。
「があっ・・・!」
湘木の斧の攻撃で敵は木の根に命を搾り取られて消滅した。一方、三河口が別の黒手組メンバーに対して威圧の能力を発揮する。メンバーが気絶したところでゆりが毒の拳を突き付けて溶解させた。
「健ちゃん、ありがとう」
「いえ、やったのはゆりちゃんですよ」
後方担当の濃藤、奏子、政美、光江にも後ろからまた別の黒手組のメンバーが現れた。勢いのある銃撃で責めて来る。しかし、奏子の羽衣で返され、光江の御守で彼女の威圧の能力を強化して殺めた。剣奪還班に黒手組メンバーが倒されていく。残り一人となった。
「貴様ら・・・」
「もう貴方一人だけよ」
先陣担当の三人、遊撃担当の三人、そして後方担当の四人が最後の一人に近づいて来た。
「このアピス様の力は銃撃だけじゃないんだぜ。まとめてくたばれ!!」
「何!?」
アピスが変化した。
「こ、これは・・・!?」
アピスは牛の姿になった。
後書き
次回は・・・
「黒手組の長の力」
黒手組の長・アピスは牛の姿に変化するが、禍々しい気を発していた。剣奪還班の皆がその力に屈せず倒す事ができるのか。そして戦争主義の世界の本部では偽物の杖、護符、杯の影響で動けなくなっていたレーニンに体を提供する者が赤軍によって連れてこられるのだが・・・!?
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