カンガルーの救助
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第二章
「そうさ」
「人間にはいるけれどな、恩知らず」
「あのカンガルーはそうじゃなかったってことだ」
「いいカンガルーだな、しかしあんたの助けでいいことが出来た」
クローザーはテイラーに微笑んで話した。
「俺もお礼を言うぜ」
「それは俺もだ、あんたのお陰でいいことが出来た」
「そう言ってくれるか」
「ああ、命が助かっていいことが出来てよかったな」
こう言うのだった、二人はこの後連絡先を教え合って住んでいる場所は違うが友人同士となったのだった。
テイラーは旅行から家に帰るとだった。
暫く経ってから休日に家族で海に出てボートで楽しんでいた、すると。
幼い娘のパトリック、自分と同じ髪と目の色で顔立ちは一緒にボートに乗っているブロンドで青い目の妻のミザリーに似ている彼女がだ。
自分達の乗っているボートの近くを見て彼に言って来た。
「パパ、あそこに」
「?カンガルーだな」
見れば海でカンガルーが泳いでいた。
「ディンゴから逃げて海に飛び込んだか?」
「カンガルーって泳げるからよね」
「しかも泳ぎ上手だからな」
娘にもこのことを話した。
「だからそうすることもあるんだ、ただ」
「何かおかしいわね」
妻もそのカンガルーを見て言った。
「何か」
「溺れてる感じだな」
「そうね」
「助けてあげよう」
娘がこう言ってきた。
「そうしてあげよう」
「そうだな、困っている命はな」
テイラーはキャンベラでクローザーと話したことを思い出しつつ言った。
「その時はな」
「うん、助けてあげないとね」
「人はな、鮫と毒蛇以外はな」
今度はクローザーの言った言葉を思い出して自分も言った。
「助けないとな」
「どっちも襲って来るからよね」
「近寄ったら駄目だ」
「そうよね」
「けれどそれ以外の命はな」
そうした危険な生きもののそれ以外はというのだ、そもそも近寄ると自分の命が危険に晒されるからである。
「助けないとな」
「じゃあね」
「助けるぞ」
この決断を下してだった。
テイラーはボートを漕いで溺れているカンガルーのところに行った、そうしてそのカンガルーの頭を両手でしっかりと掴んで海面の上で安定させて呼吸出来る様にして。
妻にボートを漕いでもらってそのうえで岸にまで行ってもらった。岸辺に着くとそこからカンガルーをあげた。
するとカンガルーはそこから丘に自力で上がった、テイラーはそのカンガルーに笑顔で声をかけた。
「これからは気をつけろよ」
「クウ」
カンガルーは彼の言葉にわかったという感じに鳴いてその場を後にした、そして。
その後でだ、テイラーは家族に話した。
「溺れているなら人間でなくてもな」
「助けないといけないわね」
「そうしないと駄目よね」
「ああ、それで助けられてな」
それでというのだ。
「よかったな、これからもそうしような」
「絶対にね」
「人間でもカンガルーでもね」
「他の生きものもな、じゃあまた漕ぐか」
ボートをとだ、こう言ってだった。
テイラーは家族と共にボート遊びを再会した、そして家に帰ってクローザーにメールでこのことを伝えると彼はまたいいことをしたなと返信してきた、テイラーはその返信を見て再び嬉しい気持ちになって笑った。
カンガルーの救助 完
2021・10・27
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