イベリス
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第二十六話 部活ではその七
「一体」
「一体も何も何のお話してるのよ」
「いや、まあそれはね」
「それは?」
「私の中のことだから内緒ね」
「気になるわね」
「いや、別に作家さんの中にあるタイプじゃないから」
それでというのだ。
「まあそうしたね」
「スマートで奇麗な人なの」
「それでいてミステリアスな」
速水を思い浮かべながら話した。
「そうした人ね。大人で」
「大人なの」
「私達よりずっとね」
「というとサラリーマン?じゃないわね」
同級生はすぐにこう返した。
「やっぱり」
「ええ、公務員でもないしね」
「肉体労働の人でもないわね」
「違うわ」
「じゃあ」
咲の話をさらに聞いて言った。
「あれかしら」
「あれ?」
「自営業でコンサルタントでもしている」
「そうね」
コンサルタントと言われてだ、咲も頷いた。
「強いて言うならね」
「そうした人なの」
「スマートで奇麗で」
そしというのだ。
「ミステリアスでね」
「大人の人ね」
「そうした人がね」
「小山さんのタイプなのね」
「咲でいいわよ」
「じゃあ咲ちゃんね」
咲の言葉を受けて呼び方を変えた。
「咲ちゃんのタイプは」
「そうした人で」
それでというのだ。
「作家さんで言うと誰かしら」
「そうね、日本の作家さんでね」
「スマートな美形ね」
「ミステリアスな」
「そんな人だけれど」
「中原中也も美形だったけれど」
同級生はこの詩人をここで思い出した。
「帽子が似合っていて」
「確か遊び人だったのよね」
「石川啄木もだったけれど結構無頼なのよ」
中原中也はというのだ。
「もてて十代、それも今だと私達位の年齢で女の人と同棲してて」
「凄いわね」
これには咲も驚いた。
「それはまた」
「それで酒癖も悪くてね」
「そうだったの」
「スマートでミステリアスかっていうと」
「違ったのね」
「ええ、ちょっとね」
こう咲に話した。
「あの人は」
「そうなのね」
「外見で言うと芥川がね」
「あの人も美形よね」
「さっきお話した通りにね」
「それでミステリアスだったのね」
「人間性はあまり知らないけれどね」
芥川のそれはというのだ。
「少なくとも自殺する前はかなりおかしいけれど」
「発狂していたのね」
「そうだったと思うけれど」
「それでもなのね」
「あの顔立ちで静かだと」
それならというのだ。
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