大学に行けという理由
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第二章
「そうだったのかよ」
「それで軍隊で肩を壊したんだ」
「それは知らなかったな」
「野球をすることも難しくなって」
「三度も召集されてか」
「何でも巨人に切られてな」
退団させられてというのだ。
「また戦地に行ったんだ」
「その戦地に行く港で会ったんだな」
「ああ、それで沢村さんを乗った船が見送った後隊長に言われた」
曽祖父は遠い目になって話した。
「あの人が大学を出ていたら三度も召集されなかっただろうってな」
「一回で済んだんだな」
「そうな、そしてあの人は」
「戦死してるよな」
「乗っていた船が沈められてな」
「じゃあその見送った船が」
「そうだったんだ、それでわしは戦争が終わってから思ったんだ」
茶を飲みつつ語った。
「沢村さんが大学を出ていたら」
「三度も召集されないでか」
「肩を壊さないで巨人から切られないでな」
「戦死しなかったか」
「そうなったかも知れないと思ってだ」
「俺達に大学に行けって言ってか」
「行かせてる、子供も孫も曾孫もな」
全員だというのだ。
「そうしているんだ」
「そうだったんだな」
「ああ、だからな」
「俺にも言ってか」
「行かせた、若し戦争になったら死にたくないだろ」
「それはな」
実際にとだ、赤枩も真顔で答えた。
「俺もな」
「わしの子供や孫や曾孫は戦争で死んで欲しくない」
「だからか」
「そう言っている、何時戦争になるかわからないだろ」
「その可能性はいつもゼロじゃねえな」
赤枩もこう考えていてこの答えを述べた。
「本当に」
「だからだ、お前も子供が出来たらな」
「大学にはか」
「行かせろ、軍隊でもやっぱり学歴見られるんだ」
「それでか」
「沢村さんみたいな話はもう勘弁だしな」
茶を飲みつつ曾孫に言った、そうしてだった。
彼はまた寿司を食べた、今度はイクラだった。赤枩もそのイクラを食べたが美味かった。だが美味いだけでなく深く苦い者も感じた。大学に合格してその寿司を食べたのだった。
大学に行けという理由 完
2021・10・21
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